kwmr
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「たくやぁ〜」
ドスン、という鈍い音と共に名前を呼ぶ声が聞こえて、僕は深いため息と共に玄関に向かう。
「青さん」
「も、むり、ベロベロ〜」
「見たらわかります」
顔にはあまり出ない彼女の頬に、わずかな朱が差しているのをみて思わず小さく微笑んだ後、もう一度彼女にも聞こえるようにはあと深いため息を吐き、彼女の脇に腕を入れぐいと立たせる。
「兎に角、玄関で眠られるのは勘弁です。取り敢えず最悪でもソファまでは移動してくださいね」
「はあい!」
いい返事とは裏腹、すっかり脱力しきった…けれども十二分に軽いその体をリビングまで引きずる。
「も、キッツ〜!部長、すんごい飲ますの!」
ゲラゲラと笑いながら青さんは今日の飲み会のことを教えてくれる。
今日は酷く酒に飲まれているようだから…きっと明日には全部覚えていないパターンだ。
「歓迎会でしたっけ」
「そ〜!春から来る新人のね、懇親会!みたいの!」
いぇーい、とよくわからないタイミングで僕にピースサインを向けてソファに雪崩れ込む。
「カッコいい子はいましたか?」
「バッカ、いるに決まってるでしょうがぁ」
最大手よ!最大手!と嬉しそうに身振りを加えて笑う…全国的に有名な広告代理店に勤める彼女は、大きな飲み会のたび泥酔して僕の家に帰ってくる。
「どんな子でした?」
「たくやの〜…んんん、下位の下位の下位互換」
いつもより饒舌で喜怒哀楽が激しくて、時折手に負えない。けれど、僕はこの時の彼女は嫌いではなかった。
「下位互換?」
「だってー、」
「拓哉より、かっこいい人なんていないもん」
とろりと溶けたような瞳で僕を捉えて笑う。普段意固地で素直にならない彼女が、唯一素直になる瞬間。
(最初は心配だったけど、)
どうも、こうなるのは僕の前だけらしく。
翌朝飲み会の写真を見せて貰うといつもそこにはしゃんとした彼女が居て、聞くと僕の家に着いた瞬間からの記憶が無いらしい。
クイズノックの飲み会でも驚くほどしっかりしていたのに、僕の家の玄関に着くなり倒れたことがあった。
…なんなら最近は僕の家に無意識に帰ってきている時もあるらしく、翌朝ベッドであられもない姿でいる自分に驚いて飛び起きてた時もあったっけ。
嬉しそうに微笑む彼女の頭を撫でてやると、満足げにその手を掴み自分の頬に添える
「あったか〜…」
「シャワー、浴びてから寝ますか?」
「んー、今日は無理かもぉ…」
今日はいつも以上にやられているらしく、微笑んだりしかめ面をしたりと忙しそうだ。
「青さん」
「なあに?」
「…そうだなあ、愛しています」
「ふふ、なにそれぇ」
「あ、世界で一番。ね?」
「んふふ、わたしも、いっしょだ…」
いつもより蕩ける笑顔を僕に向ける彼女に、優しく唇を落とす。
「明日このことを忘れても、何度でも伝えますから。
僕は、あなたを、愛しています。」
小さい子に言い聞かせるようにゆっくりと言葉を紡ぎもう一度唇を落とすと、
「もー、酔ってるときばっかり〜」なんてむくれつつも満足げに微笑んだ後、彼女は柔らかく眠りについた。
(ああ、この瞬間の彼女も愛しいのは)
「普段、僕の方が素直になれていないから…かもしれませんね?」
あっという間に優しい寝息を立てた彼女に毛布を掛けて、その寝顔を見つめた。
午前3時に愛情を
(あ、たまいっ…た…あれ、拓哉…?なんでウチに…)
(青さん、ここ僕の家ですよ〜)
(え、え?!アッ、ええ?!)