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「どうしたの福良さん、ため息なんて珍しい。」
「いや、」
伊沢〜、と遠くから須貝さんの声が聞こえて、僕の話を聞こうとしていた伊沢は、ま、よく分かんねえけど無理せず。と僕の肩を1度叩いてから、呼ばれる方へ向かった。
(伊沢のせい、っちゃせいなんだけどね)
ふう、とため息をついて編集の続きをしようとした時、また右肩を叩かれて振り返る。
「あ、引っかかーった。」
微かなタバコの匂いを付けた彼女が、僕の目の前で笑う。
「…古典的」
「その古典的に引っかかったのはどこのどいつだ?」
「もー。…タバコ休憩も終わりですか?」
「いんや、コーディング終わりの一服したところ」
「あ、じゃあもう今日は終わりですね。」
「そーなのよ、意外と早くおわって大満足!」
どか、と音がしそうなほど大胆に僕の隣に腰掛けた青さんに、苦笑い。
彼女の人差し指が刺さった右頬を少し摩って、本日3度目のため息。
これは、先ほどの2回とは違って…彼女から意識を逸らすための、努力のため息。
「福良くん、甘いモン、すき?」
「…はい?」
そんな僕の努力も虚しく、彼女は僕の返事も聞かずに思い出したようにキッチンに向かう。「山本くんプリン取って〜」という大きな声で、彼女が僕に託そうとしているものはこちらに帰って来る前からわかってしまったけれど。
「じゃーん、プリン。」
「あ、りがとうございます。」
伊沢が突然連れてきた、フロントエンジニアの御園青さん。
僕の一つ年上で、凛とした顔つきの…タバコの香りがよく似合う人だった。
僕はずっと小柄で愛らしい、女性らしい人が好みの筈だったのに。
…この「だったのに」から全てを察してもらいたいぐらい、いまや僕は彼女に首っ丈だ。
「プリン、嫌いだった?」
「あ、いや、スプーン取ってきます。」
切れ長の目と女性の割に高い身長で、最初はクールな…取っ付き辛い人かと思っていたけれど、話せば話すほど気さくで優しい人だというのがわかって。
(最初は、伊沢とそういう関係なのかと思ってたけど)
2人で飲みに行った時に「んなことないよ!」と笑い飛ばしているのを見て、ちょっとホッとしたりもして。嗚呼重症。
「スプーン?あるじゃん、これ」
ちょっと回想していた僕の目の前に差し出されたのは彼女が咥えていたスプーン。
「使いさし、いや?」
ていうかプリン一個だけだし分けっこ。なんて見た目より幼い口調で告げられて思わず頬が緩む。
「青さんが平気なら、大丈夫です。」
「平気どころか、嬉しいぐらい。」
いつの間にか蓋を開けたプリンを一口掬って、あーん。と目の前に差し出される。ああもう、この人は!
「…弄んでます?」
「弄ばれたい?」
どこまでも一枚上手な彼女に、4度目のため息。
「プリン溢れちゃうよ〜」
「…、はいはい…!」
差し出されたスプーンに乗ったプリンを、奪うように食べると、青さんは満足そうに笑った。
「…福良くん、耳まで真っ赤だ。」
僕の耳元で満足そうにそう言って、彼女は踊るように席を立った。
往なされて追い風
(私のでかい仕事もひと段落したしさあ。今晩、ご飯いかない?)
(…最後は、僕にかっこつけさせてくださいね)
(さあて、なんのことやら?)
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