大きなあなたと
あなたの名前は?
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れい君を見送ったあと、掃除と洗濯を終わらせ、ソファで一息つくことにした。
ここのところは、れい君と一緒に居ることが多かったから、こうやって一人でぼんやりするのは久しぶりだった。
ソファに座ってぼんやりしながら、これまでのことを考える。
れい君の私に対する態度だったり、夢の中であった萩原さんたちのことだったりが思い出される。
れい君と一緒に過ごした時間は短いけれど、れい君のいろんな表情見てきた気がする。
可愛いうちの子。
でも、可愛いだけじゃなくて……。
そこまで考えて、頭の中に浮かびそうになった言葉を打ち消した。
余計なことは考えないに限る。
少し気分転換しようと思って、私は自室からDVDを引っ張り出してきた。
れい君がいる前ではちょっと気が引けて観れなかったけど、今は出かけてるから観るチャンスである。
走ってくるって言ってたから2時間くらいは帰ってこないだろうし、まぁ、帰ってきたらすぐにしまえばいい。
観たいのはいろいろあるけど、取り合えずカッコイイ降谷さんを堪能するために、DVDをセットし、再生ボタンを押した。
「はぁ……カッコイイ……好き」
要所要所でため息がこぼれるのは仕方ないよね?
そんなことを自分に言い聞かせながら、時間を忘れて映像の中の降谷さんを堪能した。
れい君が帰ってくる前にしっかりと観終わることが出来たため、私は大満足だった。
ほうっと余韻に浸りながら、DVDを片付ける。
時計を確認すると、れい君が帰ってくるまでにはもう少し時間がありそうだった。
でももう一本観るには時間が足りないな…なんてことを思いながら、本棚の前で足を止める。
萩原さんたちの夢も見ちゃったことだし……警察学校編を読んじゃう?
れい君が来たらすぐにしまえばいいし、いいよね!
そんなことを考えながら、漫画をリビングへ運び、ソファに寝転がって読み始める。
こんな格好をみられたら、れい君から小言を頂いてしまいそうだな…そんなことを考えながら、ペラっとページを捲る。
若い降谷さんたちを見て、思わずニマニマしてしまう。
みんな可愛くて好き。
そんなことを考えていると、ふっと夢の中で出会った萩原さんたちのことを思い出す。
れい君が子どもの姿だった時は、萩原さんしかいなかったけど…どうしてれい君が大人になってからはみんな出てきたんだろう。
そういえば…れい君っていくつだったっけ…。
子どもの姿だった時から3年経ったとれい君から聞いた気がする。
れい君によると見た目は子どもでも中身は大人だったらしい。
そうなると前の時は25歳だったと思うから、今のれい君は28歳。
がばっとソファから起き上がる。
それが、もし、れい君が降谷さんだったとしたら…夢の中の萩原さんたちが本人だったとしたら…。
最初は萩原さんだけだったのも…そこまで考えて、ぶんぶんと頭を振る。
いやいや、まだ本物と決まったわけでは…夢の中では、本物だって思うことにしたと言ったけれど。
………なんか、次、みんなに会うの辛くなるじゃん。
ああ、次会ったら、みんなをぎゅーっと抱きしめてあげたい。
……いや、私のハグなんかいらないか。
ぽすっとクッションに頭を突っ込みながら、考える。
途中で息苦しくなってクッションを抱え込むように持ち直した。
「………もし、れい君が降谷さんで…28歳で……萩原さんたちはもう殉職しちゃってるとしたら……」
考え始めたらきりがない。
れい君はきっと本人かどうか言ってくれないだろうから、確かめようがない。
そこまで考えて、私は、それ以上考えるのをやめた。
私が考えた所でどうしようもない。
ならば、私にできることをするしかない。
取り合えず、私が出来ることは、れい君が元の世界に戻れるまで思いっきり甘やかしてあげること。
それから、次に萩原さんたちにあったらぎゅーっと抱きしめてあげること。
私のハグはいらないかもしれないが、私がそうしたいからすることにした。
夢の中なんだから私の好きにしたっていいじゃないか……嫌がられてもやるからな。
心の中でそう決めた。
ソファからすくっと立ち上がった私は、昼食の準備を始めることにした。
昼食の下準備を済ませるころには、れい君が帰ってきても可笑しくない時間になっていた。
ふっとテーブルに置きっぱなしにしていた漫画に気付き、れい君が帰ってくる前に片付けておこうと手を伸ばした。
しかし、それと同時に、スマホが鳴った。
何事かと見てみれば、友達からの電話だった。
「もしもし?」
『あ、もしもーし!今、電話大丈夫?』
「あ、うん、いいよー」
『前に貸した漫画ってもう読み終わった?』
一瞬、何のことかわからなかったが、幸いにもすぐに思い出すことが出来た。
私は慌てて自室へ向かった。
本棚を見ながら、友達から借りた漫画を探す。
すっかり返すのを忘れてしまっていた。
「あ、そういえばまだ返してなかったっけ…ごめん、すっかり忘れてた」
『ううん、全然良いんだけどさ、続編が出たから読むかなーって思って!』
「そうなんだ、へー、それじゃあ、読んでみようかな」
『いいよ!私は読み終わったし』
続編が出たとは知らなかったな…そんなことを思いながら、漫画の萌えポイントを話し出した友達の言葉に相槌を打つ。
これは、しばらく止まらないやつだな…。
友達の話を聞いていたら、借りた漫画を見つけた。
ペラペラと流し読みしながら、友達の萌えポイントを復習した。
「わかった、それじゃあ、貸してもらったやつ返しに行ったときに借りてもいい?」
『んじゃ、準備しとくわ』
「ありがとー」
電話が終わってから、見つけた漫画を手に取り、しばし考える。
再び本棚にしまったら忘れてしまいそうな気がしたため、これだけ別の場所に置いておくことにした。
紙袋に入れて玄関先においておけば、忘れることはないだろう。
ちょうどいい紙袋があったかな…そんなことを考えながら、半開きになっていた自室のドアを開けた。
「………!?」
扉を全開にして目に入った光景に私は、思わずその場で固まってしまった。
リビングのソファにはいつの間にか帰ってきていたれい君が座っていた。
きっと私が電話をしている間に帰ってきたのだろう、全然気づかなかった。
しかし、それは別に大したことじゃない。
そう、れい君が帰ってきていることは問題ない。
問題なのは……れい君が、みている物体だ。
れい君が何か買ってきたのであれば、別にいいのだけれど、絶対にそれはあり得ないだろう。
たらりと背中に嫌な汗が流れる。
心臓もバクバクとして、呼吸すらもし辛い気がする。
れい君がみているのは…私がしまいそびれた………警察学校編……!いやー!!
ど、どうしよう…!?
こんな形でれい君に見せるつもりは全くなかったんだけど!?
というか、なんでさっさとしまわなかったの私!?
いや、もともと自分の部屋で読んでいればこんなことにはならなかったのでは!?
頭の中は嵐のように後悔と焦りが渦巻いている。
しかし、もう現在進行形でみてしまっているのだからどうしようもない。
腹を括るしかあるめぇ…!
ごくりと生唾を飲み込み、意を決した。
そもそもまだれい君=降谷さんって決まったわけじゃないからね…!
ああ……もしそうだったとしても、れい君がセンチメンタルな気分になりませんように…!
「お……おかえりなさい、れい君」
「あ…ただいま、権兵衛さん。
誰かと電話中だったみたいですね」
「あ、うん、友達と……」
声をかけられて私の方を見たれい君は……なんてことない顔をしていた。
ポーカーフェイスで私が気付かないだけという可能性もあるが、特に無理をしているわけでもなさそうだ。
よく見るとれい君が持っているのは下巻…もう、すでに半分読み終わった、だと…?
ずーんと気持ちが重くなった気がしたが、それを振り払うかのようにあえて明るく振舞うことにした。
「……それ、面白い?」
「これですか?」
私、動揺し過ぎ!
漫画について直に聞いてどうする!?
だー!!触れちゃダメだろ!?
「うん……えっと…その…」
「ええ、面白いですよ」
「そう……」
「権兵衛さん?」
「あ、ううん、なんでもない!
面白いんならいいの!
どうぞどうぞ、お楽しみください!」
私を不思議そうな顔でみているれい君。
……しっかりしろ、私!
動揺が隠しきれてないぞ!?
何か言ってくるのではないだろうか、とそわそわしていたがれい君は特に何か言うわけでもなくそのまま続きを読み始めた。
私は本来の目的である紙袋を早々に見つけ、持っていた漫画を入れると、玄関に置きに行く。
紙袋を置いてから、両頬をパシパシと叩き、気合を入れた。
れい君が平然としているのに私がビクビクしていたらダメだ。
怪しまれていろいろ追及されるかもしれない。
今のはなかったことに……できないけど、いつも通り振舞おう。
うん、なんてことない平凡な日常を送るのです。
そう思ったものの、漫画を読むれい君の側には行くことが出来ず、キッチンに立てこもることにした。