大きなあなたと
あなたの名前は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
話をしていると、どうやられい君はちゃんと元の世界に戻れていたらしい。
そして、3年が経っているとか。
世界が違うと時間軸も違うんだろうか。
私からすると3日しか経ってなかったから、なんか本当のこの短期間に戻ってきちゃうってどういうことなんだって思ったけど。
まぁ、れい君に怪我がなかっただけでも十分だ。
……いや、また元の世界に戻れる方法を見つけないと…!
結局、前回も私は何にもしていないから、今回も何も思いつきそうにない。
萩原さん…!どうしたらいいの!
何かあった時はよろしくって頼まれましたけど、スパンが短くないですか?
れい君に会えるのは嬉しいけど…!
私は、夢の中で会った萩原さんに文句の一つでも言ってやりたい気持ちになっていた。
れい君は何やら考え込んでしまったようで、うんともすんとも言わなくなった。
顎に手を当てて考え込むれい君、可愛いよ。
そんな可愛いれい君を眺めていると、ふっと『名探偵コナン』に出てくる安室さんの姿と被った。
少しだけ心がざわつく。
何故、今、そう思ってしまったんだろう。
理由を考えようとして、はたっと別の事に気付く。
先程は、いろいろとわからな過ぎてスルーしてしまったが、れい君、私が結婚して子どもがいると思ってたんだよね?
それで、「僕の事より自分の子を」を的なことを言ったんだよね?
最後の日には手紙で告白もされてるし、まぁ、3年経ってたら別に好きな子が居ても不思議じゃないんだけど、あんな反応されたらねぇ?
……お姉さんは、ヤキモチやいてくれたって思っちゃうよ?
完全に顔がにやけていたらしい。
れい君が不審なものを見るような目で見てきた。
……うん、やっぱりれい君はれい君だな。
本当に私の事好きなんだろうか、ああ、でもれい君にとっては3年前の話だから…私はれい君にとってはもう過去の女?
自分で言ってみてちょっと複雑な気持ちになった。
「あの、れい君?」
「何ですか、権兵衛さん」
「今回はどうしてまたこっちに来ちゃったの?
また事件に巻き込まれたとか?」
「いえ………事件には巻き込まれてないんです。
ただ、不思議なことが起きたのは事実ですが…」
れい君は考えるような仕草をしたが、すぐに首を横に振った。
「またスマホに帰る時間とか出てたりしないの?」
私の言葉にれい君はポケットを探り、スマホを取り出した。
一通り確認しているようだったが、特に変わったことはなかったようで首を横に振った。
手がかりゼロ。
取り敢えず、考えたところで答えは出ないだろう。
「れい君」
「何ですか?」
「取り敢えず、着替えませんか?」
「…………そうですね」
動きにくそうな格好のれい君に着替えを提案する。
幸いなことにも、れい君の服はちゃんとある。
3日前まで使っていたものは、そのままにしてある。
まだどうするか考えてもいなかったため、手を付けていない状態である。
私はれい君の前ですっと両手を広げる。
れい君は目をぱちくりさせた。
「抱っこして連れてってもよろしいでしょうか…!」
「僕の服、ここに持ってきてください」
「ハイ」
事前に確認したら、にこやかな笑顔で断られた。
服を持っていったら、私はリビングで待つように言われてしまった。
仕方がないので、れい君の着替えが終わるまでリビングで待つことにした。
しばらくするとれい君がリビングにやってきた。
先程まで来ていた服と、私が置いたままにしたフライパンを持っていた。
「あ、フライパン」
「何に使うつもりだったのか何となくわかりますけど…そういう時は、わざわざ向かっていかないでくださいね。
一人で何とかしようと思わないように」
「はーい」
「……本当にわかってます?」
返事が軽かったらしく、疑われてしまった。
次からは気をつけるんで、そんな顔しないでください…!
私はれい君からフライパンを受け取ると、キッチンへ持っていった。
ついでに先程、隣の奥さんから貰ったお菓子と飲み物を持ってリビングへ行く。
ローテーブルにお菓子と飲み物を出しながら、れい君の方を見る。
…何となくだが、前の時と少し様子が違う気がする。
明確な違いが分からないため、気のせいかもしれないが…この違和感は何だろう。
「権兵衛さん?」
「あ、ごめんね……特に何ってわけじゃないんだけど…」
「………?」
「うーん、私も良くわからないから、また分かったら言うね」
「わかりました」
自分でもうまく伝えられなさそうだったため、この話題はおしまいにする。
れい君は不思議そうにしていたが、追及してくることはなかった。
そして不意に真剣な顔をしたれい君。
「権兵衛さん、お願いがあります」
「お願い?」
れい君の言葉に私は首を傾げる。
れい君のお願いとはいかに。
「帰れるまでの間、ここに置いてください」
「え、そんなこと言われるまでもなくここに居てもらうつもりだったよ?」
「……………そんな気はしてましたけど、一応」
「律儀だね、れい君」
何の心配をしたのか知らないけど、私がれい君を追い出す訳がないじゃない。
れい君はもう完全にうちの子なんだから。
本人には言えないが、もううちの子よ!
言ったらジト目で見られそうなので絶対に言えないけど!
私は、苦笑しているれい君を見ながら、笑みを浮かべる。
この言葉を言っていいものなのかわからないけど、どうしても言いたくなった。
「れい君」
「はい」
「ここはれい君の第二の家です」
「は?」
「だから………おかえりなさい」
れい君にとっては異世界に来てしまうなんて災難以外の何物でもないかもしれない。
でも、私の所は第二の家くらいに思ってくれてもいいんだよ、という意味を込めて。
れい君の世界ではどうなのかわからないけど、ここではゆっくりしてほしいな、なんて思っている。
少しだけ目を見開いたれい君は、困ったように笑った。
「ただいま、権兵衛さん」
再びれい君との生活が始まる。