大きなあなたと
あなたの名前は?
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れい君からスイーツを受け取った私は、すぐさま冷蔵庫にそれらを入れた。
いつの間にか降り出していた雨に濡れたれい君は、本当に水も滴るいい男であった。
思わず本人にも言ってしまったが、仕方ない。
れい君がお風呂に入っている間に、夕食の支度も済ませてしまおう。
ちょっと早いけど、れい君が出てきたらご飯にして、その後、れい君が買ってきてくれたスイーツを頂くことにしよう。
それにしてもれい君は、何故私の好きなものが分かったのだろうか。
特にあれが食べたいとは言っていないのにも関わらず。
何だ?
もしかして、私、知らない間に口走ってたか?
こわっ。
しかし、結果として私は好きなものを食べられるのだから気分はとても良い。
大体準備ができたところで、タイミングよくれい君がリビングに顔を出した。
「お風呂ありがとうございました」
「ちょうどご飯も出来ました!」
「もうですか?」
「ちょっと早いけど、許容範囲でしょう!」
えっへんと腕を腰に当て、自慢げに言えばれい君は微笑まし気な視線を向けてきた。
子ども扱いされてる気がしなくもないが、子どもみたいなことしてる自覚はあるので甘んじてその視線を受け入れる。
「まぁまぁ、それよりも早く食べましょー」
「そうですね」
二人で「いただきます」と手を合わせて、食事を開始する。
私の頭の中はのちほどのデザートのことで頭がいっぱいだが、れい君が話しかけてきたため、それに応える。
「お風呂の準備ができてたのには驚きましたよ」
「え?ああ、雨が降ってるのは知らなかったんだけど、トレーニングするって言ってたから。
汗かいた後はやっぱりさっぱりしたいかなって思って」
「助かりました、まさか急に雨が降ってくるとは思わなかったので」
「でも、れい君は濡れててもイケメンだね」
「惚れました?」
「は………」
目を細め、こてんと首を傾げながられい君が聞いてきた。
そのあまりにもセクシーな様子に、私は思わず箸を落としてしまった。
あ……あざとい…!
そして再び浮上してしまったプレイボーイ説に思わず眉間に皺が寄る。
照れ屋で甘えん坊なれい君は決してプレイボーイではないはず…!
れい君の為にもここは心を鬼にしなくては。
そう考えた私は、こほんと一つ咳払いをして、れい君をじっと見つめる。
「れい君…」
「はい」
「そういうことはあまりしちゃいけません」
「……はい?」
「いいですか、れい君。
いくら自分がイケメンだからって、いや、イケメンだからこそ紳士であれと私は思います」
「……はぁ」
「そんな良い顔で可愛く首傾げて「惚れました?」なんてセクシーに聞かれた日には、普通の女子はメロメロですよ、メロメロ!」
何に対してのお説教なのかわからなくなっているが、つまりあまり女の子を惑わせちゃダメよって言ってるだけなのである。
それがれい君に伝わっているのかは、甚だ疑問ではあるが。
れい君は手を顎に当て、少し考える仕草をした後、真剣な顔をした。
その顔に、私は思わず背筋を伸ばした。
「……権兵衛さんはどうですか?」
「……私?」
れい君のあざとい仕草を目の当たりにして箸を落とした私に改めてそれを聞くとは。
いや、そもそも何で惚れたかどうかを確認したいのかわからない。
もしかして、ただのノリかな?
そう思ったが、やけに真剣な顔のれい君に茶化すのは失礼かもしれないと思った。
「……メロメロ……にはなってない。
可愛いとは思ったけど……」
「けど?」
にっこりと笑って続きを促してくるれい君。
何故だか、変な圧を感じるんですけど…!?
下手なことは言えない…嘘もバレそう……え、一体、どういうこと?
正直に思ったことを言うのは苦手なんだけれど、ちゃんと言わないといつまでも追及されそうだ。
「……えっと……れい君が、私と関係ない人だったら、メロメロになってたかも?」
「何で疑問形なんですか…」
「だって……今の私は、れい君と関係ない人じゃないから。
私はれい君の魔法使いなんだから、いちいちメロメロになってたら助けられないでしょ?
まぁ、そうじゃなくても、もうれい君は私の大切な人だし」
私が勝手にそう思っているだけで、れい君はそう思ってないかもしれないけど、私にとっては大切な人だ。
だってうちの子だもん。
初めて子どものれい君が私の所へ来た時の事から、大人のれい君が再び私の前に現れたこと。
時間にしてみたら、決して長くはない。
でも、私にとっては守るべき大切な人であることには間違いない。
そう思ったら自然と笑みが浮かぶ。
「メロメロっていうか……私はれい君が大好きだよ」
私は一度懐に入れた人間には甘々なんだよ、れい君。
そんなことを心の中で思いながら、れい君を見れば、両手で顔を覆い、天を仰いでいた。
突然のれい君の奇行に、思わずぎょっとしてしまった。
「え、れい君、大丈夫…?」
「………大丈夫です………」
「そう…?」
そのまま固まっているれい君を眺めながら、食事を再開する。
しばらくすると、れい君は天を仰ぐのをやめ、今度は下を向いたまま片手で口元を抑えている。
小さな声で何か言っているが、ちょっと聞き取れない。
私は首を傾げながら「ごちそうさまでした」と言うと、れい君は少し顔をあげ、ジト目でこちらをちらりと一瞥した。
「片付けは僕がするので、権兵衛さんはお風呂行ってきてください」
「え、でも……はっ」
その時に私は気付いてしまった。
れい君の頬が色付いていることに…!
どうやら私の発言で照れさせてしまったようだ。
やっぱりれい君は照れ屋さんだなぁ、なんて思うと目の前の彼が本当に可愛くみえてしまう。
こうなると、さらにどろどろに甘やかしたくなるところだけれど……それはお風呂から出てからにしよう。
一緒にデザート食べて、のんびりしよう!
きっと私がお風呂から出てくるころには、れい君も落ち着いているだろうから。
私は、れい君に言われた通り、片付けを頼み、お風呂に入ることにした。
ちゃぽんっと湯船に浸かりながら、先程のやり取りを思い出す。
れい君の様子を思い出しながら、少しだけ後悔していた。
「………流石に、大好きなんて正直に言い過ぎちゃったかな…」
友達とか家族とかに言うような「大好き」って意味だったんだけど、れい君にちゃんと伝わっただろうか。
まさかあんなに照れるとは思ってもいなかった。
いや、ちゃんと伝わったから照れちゃったってことだよね。
もう言ってしまったから、どうしようもないよね。
れい君のこと甘やかすって決めてるし。
うんうんと自分を納得させ、お風呂上がりの甘いものに想いを馳せることにした。