大きなあなたと
あなたの名前は?
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ゆるく絡めた指はれい君によって、よりしっかりと絡められている。
自分から絡めてみたものの、もしかして、この繋ぎ方のまま行くのだろうかと疑問には思う。
今は彼女面も彼氏面もしてないはずだが。
「れい君」
「何ですか、権兵衛さん」
「手、このままでいいの?
これ、いわゆる恋人繋ぎしちゃってるけど」
「僕は構いませんよ、他の繋ぎ方が良ければ変えますけど」
「んー……いや、そんなに手の繋ぎ方にレパートリー無いし、知らないよ…!」
他の繋ぎ方ってなんだ、というのがれい君に伝わったらしく、れい君は少し考えるように目線だけ上を向いた。
そしておもむろに繋いでいた手を普通に繋いできた。
手のひらと手のひらを合わせる繋ぎ方だ。
「これが一般的なシェイクハンドと言うやつですね、誰でも知ってる繋ぎ方だと思います」
「うん」
私がこくこくと頷くのを見届けたれい君は、今度は指を絡ませ、手のひらも合わせ、手首まで絡めるように密着させてきた。
私がさっきしたのよりも絡め方が濃厚で「ひょえっ」と変な声が出たため、思わず視線を泳がせてしまった。
恥ずかしいわ!
そんな私を見て、れい君はふっと笑いながら説明し始めた。
「これが俗にいう恋人繋ぎですね。
主に恋人同士がすることが多いため、そう呼ばれていますね」
「うん、これは知ってる」
「指の絡め具合によっても、少し意味合いが違ってきますが……それはまたにしましょうか」
「え……」
なんだか意味深な発言をされた気がする。
しかし、れい君はそれ以上、話すつもりはないようで再び違う繋ぎ方をしてきた。
今度はお互いの手の甲を合わせるような形で、指を絡めてきた。
え、何この繋ぎ方、やりにくくね?
「これは逆恋人繋ぎです、恋人繋ぎでは手のひらを合わせていましたが、こちらは手の甲の為、逆だそうですよ」
「………へー……」
「指の絡み具合としては、恋人繋ぎよりは緩くなりますね」
「なんか……指攣りそう…」
「攣らないでくださいね…」
私の手と言うか腕の動きまでぎこちなくなってしまったのを見て、れい君は苦笑しながら手を離した。
慣れない繋ぎ方をして、変な筋肉を使ってしまったような気がして私は繋いでいた手を握ったり開いたりした。
すると、今度はれい君が私の顔の横に指切りする時みたいに小指を出してきた。
何だろう、と思いつつも、同じように小指を出すと、そのまま指切りするみたいに小指同士を絡めてきた。
指切りげんまんの歌が頭の中に浮かぶ。
しかし、歌が歌われることも、何か約束をすることもなく、小指を絡んだまま手が下ろされた。
「……もしかして、これも?」
「そうですね、こういう繋ぎ方もあるみたいですね。
見た目通りに小指繋ぎ、約束繋ぎというらしいですよ」
「……なんか……」
「権兵衛さん?」
「……可愛い…きゅんってする……もどかしー!」
一人できゃあきゃあ言い始めた私に、れい君はクスクス笑っている。
私の脳内妄想が爆発しそう、ヤバい。
自重せねば。
そう思っていたら、小指が離され、れい君が手のひらを私の方へ向けてきた。
今度は何だ?と思いつつ、何となくその手の上に自分の手を乗せてみる。
よく男性が女性をエスコートする時みたいな感じだ。
「なんか特別感あるね、これ」
「そうですね、よく男性が女性をエスコートする時や高貴な女性に対して男性がする挨拶の時にも使われているので、お姫様繋ぎというそうですよ」
「なるほど……ああ、男の人が女の人の手の甲にキスする時とかこんな風だわ」
「まさしくそれでしょうね」
「うーん、だから特別感があるのかな」
ほーと感心した声をもらせば、ちょうど階段だったようでそのままれい君にエスコートされた。
なるほど、確かにお姫様扱いされているような感じがある。
いや、そもそもこんなことができるのはもともと紳士に違いない。
というか、階段があることを見越して、この繋ぎ方をこのタイミングで紹介したのだろうか。
だとしたら、れい君のスペック凄すぎやしない?
前々から思ってたけど、本当に………本物なのでは…。
モヤモヤとそんなことを思っていたら、階段が終わると同時に手が離される。
そして今度は手ではなく手首を掴まれた。
「あまり見かけませんが、こういう繋ぎ方もあります」
「………なんか、連行されてるみたい」
「片方が片方の手首を握る場合と、お互いに手首を持つ場合とありますよ」
「お互いに……え、手首そんなに回んないんだけど?」
「ちょっと角度を変えないと無理ですね、それに権兵衛さんは手を攣りかねないので止めておきましょう」
「……複雑な気分になった!」
「はいはい」
軽くあしらわれたことでジト目でれい君を見やる。
れい君は涼し気な顔をしている。
すると今度は、れい君の中指と薬指で人差し指を挟まれた。
え、何でこんな複雑な。
「これはフィンガーロックという物ですね。
攣らないでくださいね」
「そんなに攣らないよ…!」
「指先関係で言えば、他にも片方が相手の一本の指を握るという繋ぎ方もありますよ」
「ほう……」
「それから……権兵衛さん、手を軽く握ってみてください」
「ん?こう?」
指が離れたところで軽く自分の手握り、拳を作ってみる。
すると軽く握った指の所にれい君の指が入り込んできた。
ひぃ、指の入れ方えげつない。えろい。
指をしっかりと包み込まれているため、指先、めっちゃあったかい。
これは……夏は無理だな、私。
めっちゃ手汗かきそうだわ。
「これもあまり見ないですが…ジャーマンという物です」
「じゃーまん…?」
「プロレス技のジャーマンに似ていることが由来だそうですよ」
「そうなんだ……」
手の繋ぎ方でこんなにも種類があるとは。
そしてこんなにいろいろな手の繋ぎ方を知っているれい君は何者ですか。
これが……本物の降谷さんとか安室さんとかバーボンとかならわかる。
実際のところ、ハニートラップ仕掛けてるのか知らないけど、女性の心鷲掴みにするための作戦の一つだと思えば。
ただ、そうでない場合は、れい君はとんでもないプレイボーイということに……?
もしかして、元の世界では遊びまくりなのでは…!?
いや、うちの子に限ってそんなことは!!
照れ屋さんなれい君が、実は遊び人だったなんて……そんな馬鹿な!
よっぽど険しい顔をしていたのだろう。
れい君は私の方を見てぎょっとした顔をした。
「あの、権兵衛さん?」
「れい君、刺されないようにね…?」
「………はい?」
首を傾げるれい君。
そのあざといのも計算のうちだろうか。
いや、うちの子に限ってそんなことは……と、さっきから同じことを頭の中で繰り返してしまった。
いやいや、れい君を疑うなんてそんな…心を入れ替えるのよ、私。
繋いでいた手を離して、自分の胸に手をあてる。
はぁっと一呼吸おいてから、再びれい君の手を握る。
今度は普通に。
「いや、あまりにもいろいろな繋ぎ方知ってるから、ちょっといろいろ吃驚しまして?」
「まぁ……気になったことはとことん調べたい性格なので」
「へー……」
「権兵衛さんこそ…」
「私?」
実際にやってます、という言質は取れなかったどころか、急に私の方へ話題が回ってきた。
私の方こそ、なんぞや?
首を傾げていると、れい君は半眼で少し拗ねたように口をへの字に曲げている。
………可愛いよ、何それ、可愛い…!
れい君の可愛い表情にテンションが上がってしまったのは仕方がない。
しかし、次に飛び出してきた言葉は私の思考を止めるには十分なインパクトがあった。