大きなあなたと
あなたの名前は?
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布団を頭から被り、寝ることに集中してみるが…先程のれい君とのやり取りが頭を過り、「ああああ…」と変な声が出た。
むくりと起き上がり、ベッドの上に座ってみる。
うん、全然寝れる気がしないね!
れい君に膝枕をしてる時はまったりしていて、撫でている私まで眠くなってきていたのに。
今の私は目もパッチリだし、頭の中も覚醒している。
これもすべてれい君のせいだ。
いや、人のせいにするにはいけない。
そうなんであんなことになってしまったのか、考える。
れい君を甘やかすまでは良かったはず。
その後の、れい君がお礼と称して私にでこちゅーしてきたのも、吃驚したけれど、まぁ、良しとする。
先にやったのは私だ。
もちろん、大人のれい君にはやったことはないけれど、子どものれい君にはした。
それはまだ良いとする。
でこちゅーって言っても、本当に一瞬だった。
いっそのこと、もっとしっかりキスしてくれてもいいくらいだった。
リップ音もつけていいくらいには!!
問題はその後だ。
あの良い声で、あの至近距離で、「……足りませんでしたか?」なんて言われたら……興奮しますがな!
れい君は気付いてなったかもしれないけれど、声ちょっとかすれてた。
めっちゃセクシーだった!
ソファから飛び出して隠れてから、鼻を触って赤いものが垂れてないか阿呆みたいに確認した。
よく鼻血出さなかった、私、えらい!
誰か褒めて!
でも、その後の発言はいただけなかった。
自分でも馬鹿なことを口走ったと思っている。
破廉恥な夢ってなんだ、破廉恥な夢って。
いや、まだ具体的にどんなことか口走らなかっただけ良いとしよう。
最近、れい君の前で脳内妄想だだ漏れだから気をつけなければ。
いろいろ考えては見たものの、考えれば考えるほど頭は冴えてしまった。
こうなったら、もう寝るのは諦めよう。
私は、ベッドから降りると、本棚から数冊本を持ってベッドに乗せる。
寝転がってぺらぺらと本を読み始める。
数冊読んだところで、ふあっと欠伸が漏れる。
時計に目をやれば結構な時間が過ぎている。
もはや真夜中。
ふうっと枕に顔を埋める。
このまま寝てしまったら、確実に寝坊するから目覚ましセットしないといけないな…なんてことを思いながら、私は瞼を閉じていた。
気が付くと、真っ白な空間に私はいた。
これは、覚えのある場所だ。
私はきょろきょろと周りを見渡す。
何処を見渡しても、やっぱり真っ白で何もない。
「………まさか萩原さんと破廉恥しちゃう?」
「権兵衛ちゃんが望んでくれるんなら、喜んで付き合うけど?」
「ぎゃあっ!」
お約束ではあるが、やっぱり後ろから現れた。
私の発言もしっかり聞かれていたようだ。
もちろん、萩原さんのことは好きだが、れい君に興奮したのに夢で違う男と破廉恥なことしちゃうのはダメだろ、夢だけど。
どっちにも申し訳ないです…!
「なしで、今のなしで」
「ははっ、残念」
「は………それよりも、またれい君来ましたよ!?」
「あー……そうみたいだねぇ」
萩原さんは私から視線をそらして、気まずそうに言った。
萩原さんが悪いわけではないけれど、何となくジト目で詰め寄ってしまう。
「しかも、今度は大人の姿ですよ!?
もろ、降谷さんですよ!?」
「どーどー、落ち着いて、権兵衛ちゃん」
「………まぁ、萩原さんが悪いわけじゃないんですけど……」
「今回ばっかりは…というか前回もそうだったけど……まぁ、ちょっと助けてやってくれないかな」
「ん?でも、怪我とかしてなかったですよ?」
「まぁ、そのうちわかるんじゃないかな?」
助ける?誰を?と私が疑問符を頭に浮かべているのが分かったらしい萩原さんは苦笑している。
れい君は怪我なかった。体調が悪いわけでもなさそうだ。
ただ……時折、少しの違和感を覚えることはある。
それが何なのかまだ私にはわからない。
私がうーんと考え始めてしまったのを見て、萩原さんが思い出したように声をあげる。
「そうだ、権兵衛ちゃんに紹介しときたい奴らがいるんだったわ」
「私に、紹介…?」
「そ、誰だかわかる?」
「………これが私の夢なら…萩原さん関連は、松田さんでしょう!」
「ピンポーン!さすが権兵衛ちゃん、正解!」
「やったー!……って、え?本当に?」
まぁ、私の夢の中なら出てきても可笑しくはないんだけれど、なんで今になって紹介しようとしてるんだろうか。
だって、前の時は話題にも上がらなかった。
「ちょっと待って…萩原さん、奴らって言いましたよね?」
「うん」
「ってことは……ヒロくんやら伊達さんやらもいるのでは…」
「おお!なかなか冴えてるねぇ」
「なんと」
おいおい、降谷さんの同期勢ぞろいしちゃうの?
いっそ、そうなら降谷さんも登場してよ、私の夢なんだし。
全員そろってるところが見たいよ!
「じゃ、場所は移動しよっか」
「移動する必要あります?どこ行っても同じじゃないですか、この夢」
「まぁまぁ」
萩原さんは私の手を取ると歩き出した。
私は手を引かれながら、真っ白な空間を歩いて行く。
しばらく歩いて行くと、真っ白な空間の中に何かが見えてきた。
どうやら真っ白な建物らしい。
こんなものがあったのか。
扉のようなものをくぐると、また真っ白な空間になっていた。
建物だから部屋みたいになっているのかと思ったが、そうではないらしい。
くぐった扉を振り返りながら、何故か心がざわついた。
「おーい、連れてきたぞー」
萩原さんが前方に声をかける。
はっとして、前を見る。
「遅かったなぁ、萩原」
「萩の事だから、話し込んでたんだろ」
「ははっ、陣平ちゃん正解。
ごめんごめん、権兵衛ちゃんと会うの久しぶりだったからつい」
「そうみたいだね」
全員の視線が私に向いた。
私は、夢みたいだな…なんて思った。
あ、いや、夢なんだけど。
「まぁ、改めて自己紹介なんてしなくても、権兵衛ちゃんは誰が誰だか知ってるだろ?」
萩原さんの言葉に私はこくんと首を縦に振る。
一人ひとり視線を合わせながら名前を呼ぶ。
「伊達さんに、松田さんに、諸伏さん」
「本当に知ってんだな」
「ま、萩は嘘言わねぇからな」
「それにこれは権兵衛さんの夢の中、だしね」
名前を呼ばれたそれぞれが、小さく笑う。
逢えたことは嬉しいことのはずなのに私の心はぎゅっと締め付けられたように痛む。
だって、ここに一番居たいのは私じゃなくて。
そこまで考えて、ハッとする。
これは私の夢なんだから、私の夢の中で5人がそろったって嬉しいのは私だけだ。
私は気持ちを切り替えて、ぺこりと頭を下げる。
「なんかよくわからないけれど、よろしくお願いします」
「あんたの夢なんだから、そんな気にすんなよ」
「それに……どっちかというとお願いしたいのは俺たちの方だし」
「え?」
頭を上げ、4人の顔を見る。
何やら困ったような、迷っているような、そんな表情だった。
「萩原からも聞いたと思うが…ゼロの事を頼む」
「え、伊達さん?」
「といっても、権兵衛さんに特別何かしてもらいたいってわけじゃないんだけどね」
「はぁ…?」
「あんたは難しいこと考えずに普通にしてりゃいいぜ」
「普通に…」
「そうそう、権兵衛ちゃんは今まで通りゼロと仲良くしてくれたらいいってこと」
「仲良く…」
私はぽかんとしていた。
どうしてこんな夢を見ているのだろうか。
やっぱりれい君が降谷さんにそっくりだからなのだろうか。
れい君はれい君で降谷さんではないのに。
私がなんと返事をしていいのかわからないでいると、先程までの表情とは打って変わって笑っている。
何というかニヤリと…ちょっと悪い顔してるよ、皆さん。
何だ、なんなんだ。
「それにしても……権兵衛さんといる時のゼロは、結構面白いことになってるね」
「え……?」
「お、それは俺も思ってた」
「…うん?」
「なんていうか青春してるって感じがしてなぁ?」
「ぶっ…青春って!」
青春してる発言に思わず笑ってしまった。
一体、みんなにはどんな風に見えているのだろう?
私にしてみれば、私の方が翻弄されている気がするのに。
ケタケタ笑っている私を見て、4人が優しく笑った。
「そうそう、権兵衛ちゃんはそうしててよ」
「ふふ……まぁ、頼まれなくても仲良くしますよ!
なんていったって……れい君はうちの子ですからね!」
私はどんっと片手で自分の胸を叩きながら、宣言した。
自信満々に言い切ったのに、何故か4人は憐れむような表情をしていた。
そして、こそこそと内緒話をするように小声で話している。
「こりゃあ、ゼロが手ぇやくのも無理ねぇな」
「確かに…さすがにあんなに堂々とうちの子宣言されるとゼロに同情したくなるなぁ…」
「ま、見てる分にはめちゃくちゃおもろいからいいんじゃねぇの?」
「陣平ちゃんってば他人事だねぇ」
「ちょっと、聞こえてますけど?」
私はジト目で4人を見る。
相変わらず私の思い通りにならない夢だ。
うーんと唸っていると、萩原さんが私の頭に手を置いた。
「しばらくゼロを頼むよ」
「それは良いですけど……」
「ほら、これ、やるよ。
そろそろ起きねぇとな」
「え!?」
萩原さんが離れたと思ったら、松田さんが私に向かって何かを投げてきた。
あわあわしながらキャッチする。
何かと思えば、煙草の箱だった。
しかも使いかけ。
「私、煙草吸いませんけど」
そう言いながら、煙草の箱を開ける。
その途端に、箱の中から何かが飛び出してきた。
「うぎゃあ!?」
思いっきり仰け反って、避けようとしたら足がもつれた。
後ろに倒れそうになりながら飛び出してきたものに何か書いてあるのが、一瞬、見えた。
へのへのもへ…じ………びっくり箱かよ!!
おのれ、松田………!許さん…!