大きなあなたと
あなたの名前は?
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「うーん……どうするか……」
私は前方で女の子たちに囲まれているれい君を見て、どうするべきかを考えていた。
ただいま、ショッピングモールで買い物中。
子どもではないので、一緒について回らなくてもいいと思い、別行動をしていた。
れい君は服など必要なものを買いに行ってもらい、私は食料品を買いに行っていた。
集合場所を決め、一時間後に一度、集合することにした。
そして先にれい君が集合場所についていたらしく、女の子に囲まれていたのだ。
まぁ、見た目もよろしい彼の事だから、こうなるのは予想通りではある。
遠巻きに見ている女の子からも「あの人かっこよくない?」などとお褒めの言葉が出ている。
うん、私も同意。
あんなカッコイイ人いないよね!
見てるだけで眼福ですよ、みなさん!
ただ、れい君は困ったような顔をしているので……助けてあげなくては!と思ってしまうのです。
うちの子が困ってる…!
でも、どうやってこの場を乗り切ればよいのか…いや、普通に声かければいいんだけれど。
「……流石に母としては無理があるよね。
いくられい君が可愛い顔してるからって…あ、私が美魔女ならありかしら?
……やっぱり姉面して登場すべき?
まぁ、無難、非常に無難…逆に無難過ぎて面白くないかな。
それか…妹面ってのもありか…!
れい君を“お兄ちゃん”って呼んでみたい気もする…!
でもそれめっちゃ笑える…何故に妄想上で萌え系妹キャラにしちゃったの、私…!
はたまた彼女面して登場すべき?
いやでも……あんまり名前呼ぶのは良くないかなー……変に目立つのは困るよねぇ。
ああ、でもコスプレだと思ってもらえば…いや、それはそれで目立ち過ぎてまずいか。
はっ……もしくは妻面って手もあるけど……!?
”ダーリン”とか呼んでみる?」
私の脳内妄想は口からだだ漏れだった。
ニヤニヤしながらぶつぶつ独り言を言う様は周りの人に異様な光景に見えたであろう。
しかし、この楽しい妄想やめられない。
「あ、でも、ただ登場するだけだから、どの面してるのかは周りの人にはわからないか」
「権兵衛さん」
「私の気分の問題ってことね…!」
「他の人の通行の邪魔になってますよ」
「ああ、ごめんなさい……って、れい君…いつの間に」
「"どの面してるかは…"のあたりからいましたよ」
「わぁ…」
私が脳内妄想を楽しんでいる間に、れい君は自力で女子たちを撒いてきたらしい。
そして、だだ漏れだった私の妄想をほぼ聞かれていたわけか。
れい君は苦笑している。
持っていた荷物をさらわれた。
「え?」
「重いものは僕が持ちますよ」
「大丈夫よ、これくらい。
れい君だって自分の荷物あるでしょ」
「僕のは大した重さじゃないので。それに」
「ん?」
れい君は爽やかな笑顔を私に向ける。
イケメン過ぎて眩しいです。
「せっかくなので、子どもでも弟でも兄でもなく彼氏面させてくださいね」
「………それは結構前から居たね?全部聞いてたね?」
「さぁ?どうでしょう」
「なんと」
雑な誤魔化しに私がジト目になっていると、れい君は何を思ったのか、荷物を持っていない手を私に差し出してきた。
ん?と首を傾げていると、れい君は私の手を取り、繋いできた。
「………手、繋ぎたかったの?」
「彼氏面してるので」
「なるほど」
れい君は、手を繋いでラブラブする恋人ごっこをご所望とみた。
子どもの時は当たり前だが、私の手の方が大きかったのに、今は完全にれい君の手の方が大きい。
私の手はすっぽりと包まれてしまう。
こうなったら私の妄想を実現させるしかあるまい。
「れい君」
「何ですか、権兵衛さん」
「私も彼女面しまーす」
私は包み込まれていた手を動かして、れい君の指に指を絡ませる。
そう、いわゆる恋人繋ぎって奴だ。
れい君は、少しだけ目を見開いた。
ちょっとした悪戯のつもりだったので、恋人繋ぎでもゆるく絡める程度にした。
あわよくば、子どもの時みたいに照れてくれたら可愛いんだけどな。
そんなことを思いながら、どんな顔してるかなー?、と顔を覗き込むと、目を細め、微笑んでいた。
え……ちょ、どういう反応…!?
そんな表情されるとこっちが恥ずかしくなる、と思い、慌てて絡めていた指をもとに戻そうとすると、れい君の方が逆にしっかり絡めてきた。
ひぃ!その指の動きはセクシー過ぎます…!
というか、指の力強いな…!絶対に逃がさないってか!?
私があわあわと慌てているのを見て、クツクツと可笑しそうにれい君は肩を震わせていた。
「……もしかしてからかわれた…!?」
「ふふっ……すみません、あまりのも権兵衛さんが可愛かったので」
「ひぃ…!褒め言葉怖い!」
「このまま彼女面しててくださいね」
「…………何たる羞恥プレイ」
恥ずかしくて頭パンクしそうな私とは反対に、れい君はとても良い笑顔をしておりました。
可笑しい、こんなはずでは…!
可愛い弟(仮)をからかう姉のつもりだったのに…!
完全にれい君の方が一枚上手だった。
照れるれい君が見たかったのに……こうなったら、絶対にどこかで照れさせてやるんだから…!と私の負けず嫌いに火が付いた。
でも、れい君が楽しそうなので今日はこれでいいか、と思った。