大きなあなたと
あなたの名前は?
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お風呂に入りながら、私はれい君の事をいろいろ考えていた。
取り敢えず、れい君が何者なのか、と言うのは本人に直接聞くことで解決できるものなので、それ以外の事を考える。
私は、れい君に帰れるまでここに居ていいと言った。
小さなれい君に。
しかし、れい君は大きくなってしまった。
子どもじゃなくて大人のれい君。
いや、別に大人になったらダメ、なんていうつもりはないが……子どもとはわけが違う。
別に金銭的なことは問題じゃない。
私の心の安寧の為のルール作りが必要だな…そんなことを思う。
まぁ、彼だって、子どもの時と同じように過ごしたいとは言わないはずだ。
いや、そもそも、大人だって言ってるのに子ども扱いされてきたれい君の心中とはいかに…。
なんだか申し訳ないことをしてしまったな…と反省した。
照れ屋さんだと思っていたけれど、中身が大人だったら焦るよな…ごめんなさい、れい君。
わざわざ蒸し返すようなことをしてはかえって困らせてしまうだろうからこの話題は持ち出すまい。
心の中で謝っておいた。
「よし!」
私は両頬をぱしっと叩いて気合を入れると、湯船から出る。
髪の毛はざっと乾かして、れい君が居るであろうリビングへ向かう。
「…お待たせしましたー」
「あ、お帰りなさい、権兵衛さん」
私がリビングの扉を開けると、れい君はダイニングのテーブルのパズルをやっていた。
それはれい君が小さかった時に一緒にやり始めたものだ。
れい君が帰ってから少しずつ進めていたが、まだ完成には至っていなかった。
真剣な顔でパズルをはめていたれい君は、私に気付くとふっと笑った。
………うああああっ!かっこよすぎる…!!
無理!安室さん!リンクし過ぎる!!死ぬ!!私が!!
私はフラフラっと扉にもたれかかる。
イケメンの破壊力とはいかに。
子どものれい君は可愛かった。
大人のれい君はかっこいい。
でも、毎回こんなことをしていてはれい君に申し訳なさすぎる。
あれはれい君、安室さんではない。
慣れろ、私。
れい君はそんな私を不思議そうに見ている。
膝から崩れ落ちることを回避した私を誰か褒めてほしい。
「権兵衛さん?」
「ぐっ……何でもない!」
「なんでもなさそうじゃないですけど…」
「れい君、お話があります。
こちらにお座りください」
私はローテーブルの方をパシパシ叩きながら、れい君を呼び寄せる。
れい君は私に言われるまま、言われた場所へ腰を下ろした。
私もれい君の正面に正座をする。
真剣な顔をした私に、れい君も真剣な顔をした。
「権兵衛さん」
「ちょっと待って。
まずは私に話をさせて」
「……わかりました」
れい君が何か言い出す前に私は先程まで考えたことを伝えることにした。
れい君は困ったように眉を下げたが、今はそれに絆されるわけにはいかない。
「……えっと取り敢えず、元の世界に戻れるまではここに居てもらっていいです。
必要な経費はこちらでお支払いしますので、生活に関しては心配しなくて良いです」
「僕にとってはありがたい申し出ですが……」
申し訳なさそうに言葉を挟むれい君を手で制止する。
まだ私の話は終わっていません。
「いいの、大人一人増えたとこで財政的に苦しくないのでお気になさらず!
そして、一緒に暮らすことになるのでルールは決めたいと思います。
と言っても、れい君が小さかった時と変わらないですけど……外出の際には一緒に出てもらうことくらいかな?
あ、料理を一人でしないっていうのはなしにします。
もう大人だし、れい君は料理得意だって言ってたから」
「あの流石にそれだけだと申し訳ないので……良かったら家事は僕にさせてもらえませんか?」
「え?」
「子どもの姿ではあまり役に立てませんでしたが、この姿なら家事くらいは出来ますから」
れい君は、困ったような顔で申し出た。
確かに、逆の立場だったとしたら私も出来ることはすると言うだろう。
それにすることが無いっていうのは結構辛いものがあるかもしれない。
「…………わかりました、では、お洗濯以外はお願いしたいと思います。
でも、基本的に気付いた時には私もやるのでそこまで正確に分けなくてもいいですよね?」
「わかりました、権兵衛さんがそれでいいのなら」
「あとはー…まぁ、いつ戻れるのかわからないけど、困ったことが起きたらその時に解決するってことでよろしくです」
「はい」
私がれい君の提案をのんだことで、れい君はほっとしたような顔をする。
……なんていうか、可愛い。
あれ?大人になっても可愛いってのは一体どういうことなの?
私がじっとれい君を見ていると、今度はれい君の方から話を始めた。
「僕がここで暮らす上で、また情報を収集したいので、必要に応じてパソコンを借りてもいいですか?」
「ん?ああ、もちろん、それは良いです」
私はコクコクと頷く。
パソコンくらいいくらでも使ってちょうだい。
というか、ルール作りとかなんとかいろいろ考えてたのに、れい君を前にしたら大した条件は出てこなかった。
そして私は、本日一番の案件に取り掛かることにした。