大きなあなたと
あなたの名前は?
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お昼過ぎにインターホンが鳴った。
一体なんだろう、と思いつつ、扉を開けると、目の前にはお隣の奥さんが立っていた。
「はい…どうしました?」
「あの、名無しさんに頼みたいことがあって」
「頼みたいこと?」
「そうなの、ちょっとだけうちの子預かっててくれない?」
「はい?」
突然、どうしたのだろうか、そんなことを考えていると、隣の奥さんは早口でまくし立てた。
「ちょっと上の子が熱出ちゃって、病院に連れていきたいんだけど…下の子も一緒にってなるとちょっと大変で…。
いつもだったら祖母に頼むんだけど、こういう時に限って用事で出掛けちゃってて…本当に申し訳ないんだけれど、一時間だけみててほしいの!」
「下の子っておいくつでしたっけ」
「あ、まだ6ヶ月なの!
でも、上の子に比べれば大人しい子だから大丈夫だと思うのよね」
「まぁ、良いですけど…」
「本当!?名無しさん、ありがとう!
じゃあ、すぐ連れてくるから!」
「あ、はい」
私が了承の返事を出すと隣の奥さんはあっという間に見えなくなった。
だいぶ切羽詰まっていたようだ。
しばらくすると隣の奥さんが、6カ月の赤ちゃんと、赤ちゃんに必要なものを持参してきた。
ミルクは少し前に飲んだところだし、オムツもかえたばかりだから大丈夫だと言い残し、嵐のように去っていった。
玄関には赤ちゃんのお出掛けセット、そして私の腕の中には小さな赤ちゃんがいる。
私は赤ちゃんの顔を見ながら声をかける。
「お兄ちゃんを病院に連れてくんだって」
「あー」
「ふふ、お利口だね」
赤ちゃんは泣きだすことなく、私の腕の中で「あー」とか「うー」とか言っている。
それにしても…久しぶりにこんな小さい子を抱いたなぁ。
れい君も小さかったけど、赤ちゃんじゃなかったからこれはとても新鮮だ。
元の職場でもここまで小さい子はいなかったからちょっとテンションがあがる。
ゆらゆらと赤ちゃんを抱っこしながら揺れていると、赤ちゃんが泣き始める。
ああ、どうやら眠くなってきたみたいだ。
ミルクも飲んだって言ってたし、寝かすか。
ゆらゆらと揺れながら、鼻歌で子守歌を歌う。
子守歌って言ってるけど、実際には子守歌じゃない。
ゆっくりとした歌を適当に歌ってるだけ。
それでも赤ちゃんはぐずるのをやめ、小さな寝息を立て始める。
ああ、可愛い。
よこらしょっとしゃがみ、お出掛けセットの中身を確認する。
ちょうど赤ちゃんを包むのによさそうなタオルケットが出てきた。
きっとお家でも使っている物なのだろう。
タオルケットを出し、そのままリビングへ移動する。
赤ちゃんを抱っこしたまま、ソファに座り込む。
タオルケットを赤ちゃんに巻き付けるようにくるむ。
そして私も楽な姿勢を取りながら、再び鼻歌を歌う。
ああ、れい君はどうしてるかなぁ。
元気でやってるといいんだけどなぁ。
子守をしながら、かつてのうちの子に想いを馳せていた。
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