小さなあなたと
あなたの名前は?
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ひとまず、何を食べさせたらいいのか全然わからなかったが、熱も出していたしお腹に優しいものが良いだろう、という考えで卵雑炊を作ることにした。
れい君は私が何か言う前に自分にも手伝いをさせてくれと、言ってきた。
気を遣わせてしまっているのかな、と心配したが、料理が好きだと宣った。
取り敢えず、彼の気のすむようにさせてあげることにした。
好きなことをしてる間だけでも、気が紛れるだろうし。
料理が好き、という言葉通り、卵を割ってかき混ぜる様子は手慣れたものだった。
私があれくらいの歳の時には、卵の殻めちゃくちゃ入ってましたけど?
しかも、終わった物の洗い物までしようとする始末。
片付けまでちゃんとしようとするとか、えらすぎやしない?
まだ病み上がりなのだし、手を滑らせてお皿割って怪我なんかされたらたまらない。
私の心の安寧の為にも、申し出はお断りさせてもらった。
熱いから気をつけてね、という言葉を忠実に守っているようで、ふーふーしながら食べている。
かわいい。ものすんごいかわいい。
癒されるわ…。
そんなことを思いながら、れい君の食べる様子を眺めていた。
さすがに見過ぎたようで、れい君が遠慮がちに私を見てくるので自分も食べることに専念した。
まだやることもあるし、さっさと終わらせねば。
食べ終わった食器を片付けている間、れい君は朝のニュース番組を見ていた。
眉間にしわを寄せながら、それは難しい顔で見ている。
時折ため息も聞こえてくる。
やっぱり不安だよね…。
わけわからない場所に、わけもわからず放り出されるなんて。
「れい君、お待たせ。
ご飯も食べたことだし、いろいろ話をしておきましょう」
「わかりました」
「まず、れい君はどうしたい?」
「………いろいろ調べたいので、パソコンとか調べられるようなものをお借りしたいです」
「わかった、じゃあ、パソコン使って調べてみようか」
「はい、ありがとうございます」
れい君のご希望通りに私はパソコンの電源を入れる。
準備ができたところでれい君に場所を譲る。
「好きに使っていいよ」
「いいんですか?」
「うん、私も取り敢えずシャワー浴びてきちゃうから」
「わかりました」
「何か困ったら呼んでね」
こくんと頷くれい君を確認して、私は浴室へ向かう。
昨日はれい君の看病やらでお風呂もろくに入らなかったから、いい加減さっぱりしたい。
れい君も熱もなさそうだし、食欲もあるようだから安心した。
脱衣場で服を脱ぎ、シャワーを浴びながら今までの事を考えてみる。
帰る方法を探すと言ってたが、見つかるだろうか。
記憶も曖昧なれい君が覚えていることとは何だろう?
まぁ、ある意味、れい君にしてみれば私は怪しい人物なわけで。
すべて本当の事を言ってくれているのかもわからない。
まぁ、嘘を吐いているとしても、私はきっと許してしまうだろう。
あんなに可愛いんだもの。
不謹慎だが、れい君が来てくれてよかったと思っている。
昨日、仕事を辞めたばかりの私はきっとれい君がいなかったら、とんでもなく自堕落な生活をしていただろうから。
れい君の前ではちゃんとした大人でいなくてはな、と何となく思った。
シャワーを済ませ、脱衣場に。
自分の服と、ついでにれい君が最初に来ていた大人の男性物のスーツを広げてみる。
ところどころ焦げていたり、破れていたりするそのスーツ。
一体、どうやったらこんなことになるのやら?
ズボンを広げると、ゴトンと何かが落ちた。
ポケットに何か入っていたのだろうか?
音のした方を見ると、スマホが落ちていた。
私の物ではない。
見たことのないスマホだ。
でも…れい君を抱っこした時には全然気づかなかった…変だな…。
もしやれい君の、またはれい君に関係がある人のものかもしれない。
そう思ったらいてもたっても居られなくなって、すぐさまスマホを片手にれい君のいるリビングへ走った。