小さなあなたと
あなたの名前は?
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意識が浮上して、最初に思ったことは、体がうまく動かせないということ。
一体、何が…と、思ったが、意識を失う前の状況を思い出す。
ショッピングモールで爆弾騒ぎがあった。
犯人は無事に逮捕することができたが、爆弾の解体に少々手をやいた。
爆弾処理班が来て、解体が終わったのは良いのだが、爆弾は一つではなかった。
二つ目の爆弾は威力はそれほどではなかったようだが、二つ目に気付いた時には時間が無く。
退避を呼び掛けている最中だった。
爆風で飛ばされたところまでは覚えているが、それ以降は意識が無かった。
手足はズキズキと痛みを感じるし、体もだるい。
しかし、目を開けてみると、見慣れない天井が。
病院かと思ったが、病院にしては造りが…違う。
そして、人の気配を感じ頭を気配の方へ向ければ、見知らぬ女が自分が寝ているベッドにもたれかかり眠っている。
状況を把握するために体を起こそうとして、異変に気付く。
目の前を横切る子どもの手だ。
本来ならば自分の手が目に入るはずの場所に見慣れない小さな手。
考えたくもないし、そんな現実離れしたことが起こるはずもないと思ってはいるものの…これが自分の手だと?
嫌な汗が背中を流れる。
そんなはずはない、と体を起こした。
寝ている女を起こさないように気をつけながら、ベッドを降りるが、やはり体の感覚がおかしい。
着ているものも大き過ぎるし、思ったように進めない。
ベッドを降りたところあたりに気を配りながら隣の部屋へと続く扉に近寄る。
耳を当ててみても、他に誰かがいる様子もない。
音を立てないように扉から出てみる。
出た場所は普通のマンションにあるようなリビングだった。
リビングであたりを見回して、唖然とした。
ちょうど壁に沿っておかれていた姿見に自分の姿が映し出された。
「……嘘だろ…」
悪い夢なら覚めてほしいくらいだ、と思いながらも、自分と同じ動きをする鏡の中の子どもに舌打ちをした。
見た目から言うと……小学生1年生くらいだろうか。
さらに声まで子ども特有の高めの声になってる。
これは本当に自分の声なのだろうか?いや、でも、子どもの頃はこんな声だった気がしなくもない。
何故、こうなったのかはわからない。
もしかしたらあの女が何か知っている…?
そしてここがどこなのかを調べるために、リビングを調べることにした。
リビングのローテーブルには、新聞が置いてあった。
「………なんだ、これは…」
新聞を読み始めてすぐに違和感に気付く。
……自分の知っている場所ではない。
知っているはずの場所や名前が違っている。
女の物と思われるパソコンを見つけたが、生憎ロックがかかっていて開くことは出来なかった。
無造作に置かれた鞄の中身を確認する。
鞄の中身は財布やスマホの他に、折り紙や絵本なんかが入っていた。
子どもが住んでいる様子はないが…。
他にもエプロン、部屋の隅にはピアノが置かれている。
小さなチェストの上には写真があった。
手を伸ばせば届く距離にあり、月明りで見てみれば、寝ていた女と数人の子どもたちが写っている。
集合写真のようだ。
何となく彼女の職業が分かった。
まだ確実ではないが、見る限り一般の人間であることは確かだろう。
何故、自分をここに連れてきたのかはわからないが…手当の跡がある自分の体と、ベッドに寝かされていたことも善意からのような気がする。
しかし、まだ、あの女からの話を聞いてみないとわからない。
子どもが好きすぎて誘拐…いや、そもそも僕は子どもではないんだが…。
いっその事、これが都合のいい夢でも見ているだけだと思いたい。
爆発現場がどうなっているのかも気になるところだ。
早く元の場所へ戻らなければ。
再び寝室へそっと戻る。
女はまだベッドに凭れたまま眠っている。
少し疲れた顔をしている。
ベッドに寝かせた方がいいだろうと、思いつつも……今の自分では彼女を運ぶなんてとても無理だ。
近くに置いてあったブランケットをそっと彼女の背中にかける。
「………はぁ、とりあえず、彼女が起きたらいろいろ聞いてみないと…」
頭の痛くなるような状況と体のだるさも相まって、ベッドに寝転がると瞼が降りてきた。
目が覚めた時にはもとに戻っていることを願った。