小さなあなたと
あなたの名前は?
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お互いにありがとう、という感謝を伝えていたら、なんだか可笑しくなってしまった。
ふふっと笑う私につられて、れい君も可笑しそうに笑う。
お別れが近いけど、笑顔でさよならができそうだ。
その後は、いつもと同じ日常を過ごす。
お昼ご飯を一緒に作って、一緒に食べて、お昼からもパズルをして……パズル三昧なのはちょっとあれだが。
結構パズルは頑張ったが、まだ完成しそうにない。
夕食後私はいったん頭をリフレッシュさせるために、先にお風呂に入ることにした。
湯船につかりながら、れい君の様子を思い出す。
まだ時間ではないのか、そわそわする様子はない。
具体的な時間を聞いても良いだろうか…?
そんなことを考えていると、はた、と思う。
今、この時間、れい君が帰ってしまったら?
なんてことだ!
呑気のお風呂に入ってる場合ではない!
慌ててお風呂から上がると、髪の毛もろくに乾かさずにバタバタとれい君が居るリビングへ行く。
途中で足ぶつけた、痛い!
もちろん、パジャマはちゃんと着た。
バンッと扉を開けると、れい君がきょとんとした顔でこちらを見た。
髪も乾かさずに飛び込んできた私にため息を吐く。
「どうしたんですか、権兵衛さん。
ちゃんと髪の毛乾かさないと風邪引きますよ」
「あ……うん、そうだね…」
「ほら、ドライヤー持ってきてください」
「ハイ」
れい君に促され、再び脱衣場へ戻る羽目になった。
ドライヤーを持ってくると、ソファの前に座るように言われる。
私は言われるがまま、そこに座る。
此処で乾かせってことか。
なるほど、とパソコンを繋いでいる延長コードへドライヤーの線を繋げる。
大人しく乾かしていると、れい君が目の前のローテーブルにコップとサプリを置いた。
「いつも飲んでますよね、お風呂上り。
あと、昨日薬局で貰ったサプリです」
「…おお、なんと気が利く子なの、れい君」
私はお礼を言って、サプリを口に含み、ぐいっとコップのお水を飲み干す。
昨日、れい君が薬局でお試しで貰ってきたサプリだ。
一体、何に効くのかわからない。
いや、美容に良い的なことは説明はされたけど、お試しが終わったらそれまでだな、なんてことを思う。
するとれい君がソファに座る。
ちょうど私の真後ろだ。
どうしたのかと思っていたら、カチッという音と共に頭に温風がかかる。
「わっ」
ちょっと驚いたが、れい君がドライヤーを私の頭に当てているようだ。
何、どうした、れい君。
後ろを振り向こうとすると、れい君に「動かないでください」と言われてしまった。
「自分でできるよ?」
「僕がやったらダメですか?」
「ダメじゃないけど、ドライヤー重たくない?」
「僕がドライヤーごときで音をあげるとでも?」
「あ、すみません、何でもないです」
ドライヤーの温風とれい君の可愛い小さな手の動きが実に気持ちがよい。
あったかいなぁ、癒されるなぁ…なんてことを思っていたら、なんだかだんだん眠くなってきた。
いやいや、私、今、寝ちゃダメでしょ!
起きろ、権兵衛!寝たら死ぬぞ!なんて雪山で遭難してたたき起こす妄想をしていたが、それすら億劫なくらい眠くなってきた。
「権兵衛さん…?」
「ん……ごめ、れい君……なんか、ねむ…」
「……いいですよ、ゆっくり寝てください」
「でも……ふあぁ……あと、おこして…かえる…まえ……」
「…おやすみなさい、権兵衛さん」
こんなに耐えられないくらい眠いことなんてあったっけ…そんなことを思いながらも、私の意識は深く深く沈んでいく。
最後に聞こえたれい君の声はとても優しい声だった。