小さなあなたと
あなたの名前は?
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フォトフレームを作った後、権兵衛さんからの提案でトランプで遊ぶことになった。
真剣な表情でどのゲームもやっていたし、ババ抜きに関しても特にわかりやすいというわけでもない。
表情に出ないようにちゃんとポーカーフェイスしていた。
だが、僕からしてみれば、職業柄というのか、もっと細かい部分で見てしまうため、わかってしまうのだ。
権兵衛さんは僕に負ける度に悔しそうな顔をしているが、それで機嫌が悪くなることはなかった。
悔しいことは悔しいのだろうが、負けても楽しんでいる様子だった。
最後にやったトランプゲームは権兵衛さんが勝った。
完全に運でのゲームだったが、権兵衛さんは素直に喜んでいたので、思わず笑ってしまった。
勝てたことでテンションが上がっていたのか、こんなことを言ってきた。
「ねぇ、れい君」
「何ですか、権兵衛さん」
「一緒に写真撮ろ」
「写真?」
突然の申し出に何故?という疑問が出てしまったが、フォトフレームを指さされ、意味に気付く。
どうやら権兵衛さんは僕の写真を撮っておきたいらしい。
「うん、これに入れたい」
「そのために作ってたんですか?」
「うん、だって…れい君が帰っちゃったら二度と会えないかもでしょ?
私の心のアルバムにはしっかり刻んであるけど、飾りたい」
「…………」
二度と会えない、という言葉を聞いて少し考える。
元の世界であれば、考える間もなく断っていただろう。
でも、ここは違う。
何よりも権兵衛さんが僕の事を覚えていたいと思ってくれていることが嬉しかった。
自分は忘れるつもりでいるのに、相手には覚えていてほしいなんて、都合が良すぎるなと自分に呆れてしまったが。
しばらくして了承の返事をするものの、考え込んでいたのを見て断られると思っていた権兵衛さんは驚いた顔をしていた。
でもすぐに嬉しそうに笑う。
その顔を見ると、なんとも言えない気分になるな。
彼女には甘い自分に小さく苦笑する。
そんな権兵衛さんを隣に呼び、一緒に写真を撮ることを提案する。
きょとんとした権兵衛さんだったが、再び嬉しそうに笑うと隣に寄ってきた。
隣に寄ってきた権兵衛さんは何故か期待に満ちた顔をしている。
何となく嫌な予感がした。
「せっかくだから抱っこしていい?」
「ダメです」
「………デスヨネー」
あえて確認してきた権兵衛さんにしっかり断る。
残念そうだったが、それでも写真が撮れることが嬉しいらしくにこにこと笑顔があふれていた。
写真を撮り終わると権兵衛さんはお風呂に入ってくると言ってリビングから出ていった。
権兵衛さんが居なくなったのを確認し、自分のスマホを見る。
依然と同じメールが届き、それに同じ返信を返している。
まるでスマホだけ、別に次元にでもいるようだ。
……一緒にいられるのはあと少し。
ここでの権兵衛さんとの生活は、何の事件も起きず、とにかく平和だった。
テレビのニュースを見る限りでは、事件が全くないというわけではないようだが、権兵衛さん自身は平穏に暮らしている。
平和で平穏な中で暮らす優しい権兵衛さんが、いつまでも幸せでいてくれることを心から願った。