小さなあなたと
あなたの名前は?
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目の前には不敵な笑みを浮かべるれい君。
それとは反対に私は眉間にしわを寄せている。
目の前にはトランプを二枚持ったれい君が居る。
私の手元にもトランプが一枚。
そう…私たちは絶賛ババ抜き中である。
二枚のトランプを目の前に、私はどちらを選ぶべきか…とても悩んでいる。
右か左か。
手をうろうろさせながら、れい君の顔を見るが…くっ、どっちもなんて良い笑顔!
だが、しかし!
右の時に微妙に顔が変わった気がする!
思い切って右側のトランプをとる。
「…………ああー!違う!」
「残念でしたね」
「ああっ、まだ混ぜてないのに取るなんてずるい…!」
「待たなくちゃいけないルールなんてないですよ」
「くっ……!確かに…!」
手元に残ったジョーカーを机に放り投げながら床に仰向けに倒れこむ。
れい君とのババ抜き勝負、3連敗だ…。
もう勝てる気がしない。
私、ババ抜きこんなに弱かったの?
それともれい君が強すぎるの?
……うん、れい君が強すぎるんだな。
ジト目でれい君を見るが、にっこりと良い笑顔を返された。
…もう、その笑顔で全部チャラにしちゃう私はちょろい女です。
他にもいろいろなトランプゲームで遊んだが、全敗だった。
れい君は勝負の女神にでも好かれてるのかな?
「全然勝てない」
「まぁ、権兵衛さんは普通だと思いますよ」
「何気に自分最強自慢してない?」
「権兵衛さんよりは強い自信あります」
「……天才少年現る、か」
私の呟きはしっかりと拾われていたようで、苦笑された。
何故に。
「そもそも権兵衛さんは、得意なんですか?」
「……いや、どれも普通に楽しむ程度だねぇ。
そもそも競うってことがそんなに得意じゃないからなぁ……」
「その割には負けず嫌いですよね、まさかババ抜き3回もやるとは思いませんでした。
でも、諦めが早いですよね」
「……私は今、プロファイリングでもされてるのかな?」
「そんなことしなくても、わかりますよ」
「なんと」
起き上がってれい君によるプロファイリングに耳を傾けながら、テーブルで頬杖をついていると、トランプ前に作ったフォトフレームが目に入る。
海で拾った貝殻をれい君と一緒に飾り付けて作った物だ。
結構、可愛くできてると思う。
れい君が手伝ってくれたと思うと、もうそれだけで価値がある。
後はこれにれい君の写真を入れることができたら完成である。
れい君には言ってないけど。
トランプを始めたのも、このフォトフレームが乾くのを待っていたからである。
何気なく始まったトランプ遊びだが、最初は神経衰弱をした。
このくらいの歳の子が出来る遊びってなんだろうな、と考えた結果、まぁ、無難なものを選んだわけだ。
でも、れい君の記憶力半端なかった。
そのあと負けたままが悔しい私が、様々なゲームを提案した。
スピード勝負は言わずもがな、れい君の素早さと判断力に私が勝てるはずがなかった。
持ちかけた私が馬鹿だった。
七並べも私の戦略は読まれてた!
まぁ、二人でやってる時点でお互いの手札はわかってるんだけど、それでも負けるって何事。
これまでのゲームとババ抜き3連敗を考えると、運だよりのゲームじゃないとダメだな。
もっと早く気付けばよかった、と思いつつ、次のゲームの提案をする。
「れい君、次はたこやきにしましょう」
「たこやき?」
「あれ、知らない?」
目をぱちくりさせるれい君にたこやきのルールを教える。
本当にこれは運だ。
「………やったー!れい君に勝ったー!」
わーい!と1から10が綺麗に並んだトランプを目の前に私は喜びの声をあげた。
れい君は苦笑しながら、「おめでとうございます」とか言ってる。
海からの帰り道で大人宣言されたが、うん、今は完全にれい君の方が大人の対応してるよ。
私は全力で子どもしてるよ!
これでれい君が勝ってたら、もうれい君の事は神様と崇めようかと思ってたところだ。
「ねぇ、れい君」
「何ですか、権兵衛さん」
「一緒に写真撮ろ」
「写真?」
不思議そうに首を傾げながら、れい君は聞き返してきた。
私の唐突な会話にも順応してくれるれい君。
先程、作った貝殻で飾り付けられたフォトフレームを指さしながら、続ける。
「うん、これに入れたい」
「そのために作ってたんですか?」
「うん、だって…れい君が帰っちゃったら二度と会えないかもでしょ?
私の心のアルバムにはしっかり刻んであるけど、飾りたい」
「…………」
れい君はフォトフレームと私を見比べながら、少し考えるしぐさをする。
すぐに返事を貰えないことから、これは断られるのかな、なんて考えていた。
まぁ、断られたら断られたで、諦めるしかない。
こっそり寝顔写真に変更するから。
「あー…ダメだったらいいよ、無理に撮るものじゃないし」
「いいですよ」
「だよね、ダメだよね……ん?」
「ダメじゃなくて、良いですよ?」
「え、いいの?」
「はい」
まさかの了承の返事に、私は心の中でガッツポーズをとった。
そしてれい君の気が変わらないうちにと、いそいそをスマホのカメラを起動させる。
スマホを構えると、れい君が眉間にしわを寄せた。
え、もう気が変わったの?
険しい表情のれい君に私が唸っていると、れい君は苦笑して私の手を引っ張った。
「権兵衛さんも一緒に撮りましょう」
「……なるほど、いいよ!」
れい君の提案を受け入れた。
何を言われるかと内心ドキドキしていたが、一緒に撮ろうとのお誘いだったため、快く引き受けた。
そんな可愛いお願いされたら断ることなんてできるだろうか、いや、できはしない。
「せっかくだから抱っこしていい?」
「ダメです」
「………デスヨネー」
抱っこでは撮らせてくれなかったけど、ツーショットの写真が撮れました。