小さなあなたと
あなたの名前は?
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夢のような話を聞いた後、漠然と思ったのは、あと数日、れい君と何をしよう?ということだった。
れい君の話を聞く限り、スマホの日付が事件のあった日になったら帰れるのではないかという話だった。
本当に帰れるのか、真偽は不明だが、それはその日になればわかることだろう。
だから、その日が来ても後悔のないようにしなくては。
もし帰れなかったとしても、それはその時考えればいいことだ。
れい君の告白を聞いてからも、私はいつも通り接している。
昼食後は散歩に出かけることにした。
この間の公園とは違うところを今日は歩く。
ただ、少しだけ遠出する予定だ。
れい君は体を動かすことが好きみたいだから、まぁ、歩くことにする。
私としても歩けないことはない。
「権兵衛さん、今日は何処に行くんですか?」
「ふふー、なーいしょ」
「…………この間の公園とは違う方向ですよね?」
「うん、そうだねー」
れい君は私に考えながら質問をしている。
ああ、何処に行くのか、当てたいのだろう。
考え事をしながら歩いているため、少し危なっかしく感じて、思わずれい君の手を握っていた。
れい君はきょとんとしていた。
「権兵衛さん?」
「あ……ごめんね、考え事してるみたいだったから、ぶつかったりしないようにーって思わず繋いじゃった」
「……転んだりしませんよ…」
「そっか、じゃあ、私が転ばないようにれい君、手、握っててね~」
「手を繋いだまま権兵衛さんが転んだら僕も一緒に転ぶんじゃないですか?」
「なんと…現実的な……」
事実を突きつけられ、思わずよよよと泣き真似をしたが、れい君が手を放すことはなかった。
温かい小さな手、これは守ってあげないといけない手だ。
「権兵衛さん、今から行くのは海ですか」
「………な、何故…それを…」
「内緒です」
「内緒返し、だと…?」
「何ですか、内緒返しって」
普通に何処に行くか当てられてしまった。
驚かせたかったが、それは失敗に終わったようだ。
でも、れい君はクスクスと可笑しそうに笑っていたから、もうそれでいいよ。
可愛いは正義だ。
れい君と手を繋いでのんびりと歩いて行く。
住宅街を抜けると大通りに出る。
夏場には海水浴客で込み合う海岸だが、今はそんなに人がいない。
犬の散歩やトレーニングで走ってる人なんかがちらほらいるくらいだ。
「れい君、着いたよ」
今日もあまり人気はない、波も穏やかな感じだ。
さすがに水につかるのは寒いだろう。
もう少し暖かかったら、足くらいはつかってもよさそうだけど。
「では、れい君。
今日の任務です」
「任務?」
「今日は、綺麗な貝殻を集めましょう」
「貝殻集め…?」
私の話を聞いて目を点にしたれい君。
そりゃそうだ、何の説明もしてないんだから。
「ちょっと作りたい物があってね、それに貝殻が必要なの」
「そうだったんですね」
「うん、せっかくだかられい君が居る間に、一緒に行っときたくて」
「僕がいる間に?」
職業柄、一人でドングリや松ぼっくり拾いに行ったり、虫を捕まえに行くことがあった。
ただ、ふと我に返ると大人が一人で大量のドングリ集めてる姿はちょっとシュールだったな、と思ったのだ。
貝殻もしかり。
それを話すとれい君は複雑そうな顔をしていた。
「………権兵衛さんならあんまり違和感ないですけど」
「え…?」
「いえ、何でもないです。
早く探しましょう」
え?れい君、私の事なんだと思ってるのかな?
聞き返したら、にっこりと笑顔で何でもないとか言われましたけど。
聞こえなくて聞き返したわけじゃないですけど。
しかも、早々に探し始めた。
何となく納得できない感じがしたが、すでに貝殻を探し始めているれい君に思わず笑みがこぼれる。
お互いに黙々と貝殻を拾っていく。
れい君がこの世界の人間だったなら、ご家族のもとに帰ってもまた会うことも出来ただろう。
でも、違う世界から来たというのなら、きっと帰ってしまったら二度と会うことは出来ないだろう。
どうして違う世界に来てしまったのかわからないけど、私の世界でもれい君の世界でも他の世界に行くなんてありえないことだ。
きっと二度目はない。
だから、れい君とのこの数日間をずっと覚えていたい。
れい君と一緒に探した貝殻を使って、フォトフレームを作ろうと思った。
一緒に作ったフォトフレームにれい君の写真でも飾ろうかな、なんて考えたのだ。
まだ、れい君の了承は得てないが。
本当は笑顔の写真とかがいいけど、断られたら寝顔を撮ってやろうと心に決めている。