小さなあなたと
あなたの名前は?
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2000ピースのパズルはやっぱり難問で…と思っていたが、れい君がサクサク進めていくものだから思ったよりも進んでいる。
パズルしながら、れい君からの質問は少し心をざわつかせたけれど、最終的にはれい君はいつも通りの塩対応になっていた。
でも、私は、少しだけありえないことも考えてしまった。
れい君はもしかしたら、この世界の人ではないのかも、なんて。
突然私の部屋に現れたこともそうだし、今日質問された内容も少し違和感があった。
記憶喪失だった、というのも私が言いだしたことだから…本当は全部覚えていて、でも、あまりにありえないことだから言えないとか。
そんなことを考えてしまっていたが、もし、そうだとしても私のするべきことは変わらないだろう。
れい君を元の場所へ帰すっていうことは変わらない。
ただ、違う世界から来たとかなったら、そこらへん歩いてみるとかは全く役に立たなそうだ。
れい君を寝かしつけてから、リビングでテレビを見ながらうとうとしていた。
早くベッドに入って寝ればいいのに、もう、それすら億劫だった。
少しだけ…と思っていたら、私はあっという間に寝落ちしていたらしい。
目を覚ますと、見覚えのある白い空間だった。
すぐさまこれはあの夢の続き、もしくは同じ夢かな、と漠然と思った。
何処を向いても真っ白な場所、どっちへ進めばいいのかもわからないが、取り敢えず前進していく。
進んでいきながら、そういえば宿題が出ていたことを思い出す。
今度はちゃんと覚えていた。
「……萩原さん」
「呼んだ?」
「おおっ!?」
先日、ここで会った人の名前を小さく読んでみると、真後ろから返事が返ってきた。
何故、また真後ろから現れるんだ…!
今日もやっぱり変な声をあげてしまった。
「驚かせないで下さいよ…!」
「ああ、ごめんごめん」
「あんまり申し訳なさそうじゃないですけど…」
萩原さんは笑いながら謝ってきた。
まぁ、私もそこまで気にしているわけじゃないからいいけど。
「そういえば、宿題ちゃんとやってきたんだね、権兵衛ちゃん」
「はい、私の夢なので」
「ははっ、そうだったね」
萩原さんは可笑しそうに笑う。
何がそんなに可笑しいのか私にはまったくわからない。
「それにしても、権兵衛ちゃん、ありがと」
「はい?」
「いやぁ、いいもの見せてもらってるなぁって」
「いいもの?」
「ああ、ゼロのあんな姿見られるなんてなかなか無いからさ。
他の奴らにも見せてやりたかったよ」
「そんな面白いことしましたっけ」
「こりゃあ、ゼロも手をやくわけだなぁ…」
萩原さんは困ったような顔をする。
イケメンの困り顔もやっぱりイケメンだな。
「まぁ、権兵衛ちゃんが俺との約束通りゼロの事をたっぷり可愛がってくれててよかったってこと」
「可愛い子を愛でるのは当然ですとも」
「うんうん、ありがとね?」
小さい子にするように頭をぽんぽん撫でられた。
大人になってからこんな風に頭を撫でられるなんてないなぁ、と思いつつ、私ったら欲求不満なのかしら?なんて馬鹿なことを考える。
大人しく撫でられている私を見て、萩原さんは目を細めて笑う。
「もう少しだけ、よろしく頼むよ」
「もう少しって、どれくらいですか?」
「うーん、それが分かったら苦労はしない?」
「何故疑問形…」
「まぁ、こんなことは初めてだからどうなるのかちょっとわかんなくてね」
「私の夢なのに…」
「そうそう権兵衛ちゃんの夢のなのにね?」
不満気に唇を尖らせていたら、笑われた。
しかし、しばらくすると眉をさげた。
「………無事にゼロが帰れたら…」
「萩原さん?」
「んー…いや、やっぱ何でもないわ」
「え、気になります」
「……また、今度話すよ」
「え、次もあるんですか?」
「何?逢ってくれないの?」
「いえいえ、私、萩原さんの事も好きなんで逢えるんならぜひ」
そういったら萩原さんはきょとんとした。
そんな萩原さんを見て私も首を傾げる。
「え、そうなの?」
「そりゃあ好きですよ、イケメンだし」
「その割にはあんまりグイグイ来ないじゃん?」
「そんなのいくら私の夢でもあんなことやこんなことなんてしませんよ…!」
「え、権兵衛ちゃん、あんなことやこんなことってどんなこと考えてるの…!?」
萩原さんは自分の体を抱きしめるようにし、私から距離を取った。
これでは私がまるで変態のようでは…。
「ちょっと、なんで遠ざかるんですか!
しないって言ったところなのに…!」
「いやぁ、なんか身の危険を感じて」
「私を何だと思ってるんですか…!
それに、襲ったところで腕力的に勝てるわけないじゃないですか…!」
ぷんぷんしている私に、ごめんごめんと苦笑しながら謝る萩原さん。
しかし、次の瞬間、視界が揺れた。
「ん?」
私の異変に気付いた萩原さんは、ああ、と納得した顔をする。
なんだか体をゆすられてるような感じ。
「あーあ、ちゃんとベッドで寝ないから」
「え、それが原因?」
「まぁ、そんなとこかな」
じゃあまた、という萩原さんに返事を返す前に私の意識は浮上した。