小さなあなたと
あなたの名前は?
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なんだか体が痛くて、意識が浮上してきた。
何でこんなに体が…と思って、ふと昨日の出来事を思い出した。
突然現れた子どもの看病をしたんだった。
まだ眠いけど、子どもの様子も気になるから起きなくちゃ。
そう思って身じろぎをすると、背中から何か落ちた。
なんだ?と振り返ろうと思う前に、目の前の子どもと目があった。
子どもは目を覚ましたようでベッドの上に座り、私の方をじっと見てきた。
……寝てる顔もなかなかだったけど……やっぱりイケメンになるわ、この子。
「……あの」
「……ああ、おはよう……ってのんきに挨拶してる場合じゃないよね」
少し困惑している子どもに苦笑しながら、子どものおでこに手を伸ばす。
伸びてきた手にびくっと体を揺らすのを見て、手を止める。
ああ、いきなり触ったら驚くよねぇ。
「えーっと……身体が熱かったりだるかったりする?」
「……いいえ」
「ん……わかった」
「あの…怪我の手当ありがとうございました」
子どもは丁寧にそういうとぺこりと頭を下げた。
そして私の言葉待たずに疑問を口にしていた。
「ここは何処ですか?それから、どうして僕はここにいるのか…あなたは誰なんですか?」
……うーん、自分でここに来たわけじゃないってことかな…?
真剣な目で私を見てくる子どもになんて答えようと思いつつも、ふっと嫌な考えが頭をよぎる。
……これってこの子にしてみたら私が誘拐犯みたいな…えー…。
「ええっと、とりあえず答えられるものから答えるね?私もいろいろ聞きたかったことがあるけど…もしかしたらそれはわからないままかも…。
私は名無し権兵衛、ここに住んでる。
で、あなたがここにいる理由は私もわからない。
私が昨日、仕事から帰ってきたら、部屋の中にあなたがいたの」
「…………」
「うーん…鍵もかけてたはずだからどうして家の中に入れたのかわからないんだけど……あなたは自分で来たんじゃないのね?」
「はい…」
「えっと、じゃあ、誰かに連れてこられたってこと?
ここに来る前はどうしてたのか、覚えてる?」
「………」
自分で来たわけじゃないのなら…とここに来る前の状況を聞いてみた。
でも、子どもは考え込んでしまった。
これは…言いたくないのか、覚えていないのか…。
それにしても、まるで大人と話しているみたいだな…あんまり見た目のわりに子どもっぽくない。
でも、少しだけ安心した。
あんなに傷だらけだったから、もしかしたら酷い目に遭っているのではないかと思っていたけど……そういう感じではなさそう。
考え込んでしまった子どもに再び問いかける。
「ええっと、あなたは家に帰りたいってことよね?」
「はい…やらなきゃいけないことがあるんです」
「やらなきゃいけないこと…なるほど。
で、自分でここに来たわけじゃないと……帰る場所とかはわかるのかな?」
「………」
目の前の子どもは再び考え込んでしまったようだ。
自分で着た覚えはないらしいし、だからと言って全然知らない私の家に誰かが置いていくっていうのもおかしな話だ。
なんだかわけがわからない。
そこでふと、思いついた。
もしかして誰かに連れてこられたか自分で来たかはわからないけど、あれだけ怪我をしていたのだ。
何かの拍子に頭もぶってて記憶が飛んでるのではないかと。
そんな証拠とかは全然ないけど、そうじゃなきゃ説明付かない。
「……もしかして、記憶…あ、えーっと他にも覚えてないっていうか、思い出せないことがあったりするのかな…?」
「はい?僕が記憶喪失だと?」
「えっと、あなたを見つけた時には怪我も酷かったし、熱もあったし…もしかしたらそうなのかなー…なんて」
すごく怪訝そうな顔された…!
しかもわかりやすく言ったのに記憶喪失って訂正された…!
ちょっぴり気持ちが沈んでいた私に気付いたのか、少々取り繕うように子どもは答える。
「…記憶喪失なのかはわかりませんが……ちょっと調べたいことがあります」
「調べたいこと…」
「電話をお借りしたいのですが」
「…知ってる人に連絡を取りたいってことね?ちょっと待ってて」
「はい……ただ、繋がる確率は低そうですが」
「……?」
電話が出来るようにスマホを取りにいく私の耳には子どもがなんて言ったのかわからなかった。
ただ、とても、複雑そうな顔をしたことがだけがわかった。
スマホのロックを解除して、子どもに渡す。
お礼を述べてから電話をかけ始める。
何人かに電話をかけたようだが、どれもダメだったようだ。
はぁ、と深いため息のあと、お礼とともにスマホを返された。
「……うーん……どうしようか…」
「……残念ですが、繋がりませんでした」
さて、これからどうしようか。