小さなあなたと
あなたの名前は?
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スーパーでの買い物を済ませ、家への道を安全運転で進んでいく。
途中で、川沿いの桜並木の歩道が目に入る。
ああ、もう桜の蕾が膨らんできてるんだなぁ、なんてことを考えた。
仕事をしていた頃は、新年度が始まるこの時期、忙しくて桜を愛でる気力さえもわかなかった。
平日はもちろん、休みの日も家でぐったりしてたのを思い出す。
懐かしいなぁ、なんて思いつつも、今年はちゃんと桜を見に行けるといいなぁ、なんて思った。
後部座席に座っているれい君をミラー越しに見ると、窓の外をじっと真剣な顔で見ている。
何か思うところがあるのだろう。
私にはれい君が何を考えているかわからないが…いや、わからないなんて嘘だな。
れい君が考えているのはきっと「早く帰りたい」ってことだろう。
私の願いももちろん、れい君の願いが叶うことだ。
だが、もし、許されるのなら…満開の桜を一緒に見たいとも思ってしまう。
「ここの桜、毎年、すごく綺麗なんだよ」
「…そうなんですね、見ごたえがありそうです」
「まぁ、私もちゃんと見れたことはないんだけど」
独り言のように零れた言葉をれい君はしっかりと拾っていたらしい。
「れい君は桜好き?」
「……そう、ですね、好きですよ」
「そっか。
じゃあ、もし桜が満開の時にれい君がまだうちに居たら、一緒にお花見しよっか」
「……いいですね」
「お弁当もつくろっかなー」
「権兵衛さん、僕も手伝いますね」
「うん、よろしくね、れい君」
この約束が守れるかどうかは私にもれい君にもわからない。
それはお互いにわかっているのに。
願わくば、桜のように儚く散ってしまわないことを。