小さなあなたと
あなたの名前は?
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ショッピングモールについてからは、れい君の衣服や雑貨なんかを見て回った。
れい君は必要最低限でいいと言って、あまり選ぼうとしなかった。
ざっと見た感じでは、せいぜい三日分くらいの量ではないだろうか。
うん、きっと大人っぽい彼の事だから、遠慮しているのだろう。
いつ帰れるのかわからないけれど、そんな切り詰めた生活送ってほしいわけじゃない。
れい君に合いそうなものを「これなんかどう?」とすすめながら、反応を見る。
大して表情は変わらないが、嫌ではなさそうなものを次々カゴに放り込んでいく。
それを見たれい君は少し困った顔をする。
「権兵衛さん、多過ぎませんか?」
「そんなことないよ?
私が思う必要最低限って言ったら、これくらいだよ?」
「…………そうですか」
「あ、ちなみにこの赤い帽子とかどう?」
「それはいりません」
帽子はきっぱりと断られた。
残念。
子ども物と言えども結構な量になったため、一度車に荷物を置きにいく。
荷物を載せると、れい君も車に乗り込もうとした。
れい君や、まだ買い物は終わっていないのだよ?
手招きする私にきょとんとしたれい君だったが、すぐに降りてきた。
「何か買い忘れましたか?」
「れい君……まだ買ってないものがあるのよ」
何を、と聞いてきたれい君に私は「着くまで内緒」と笑って答える。
再びショッピングモールを歩き、目当ての店に到着した。
「さぁ、着きました!れい君、好きな物選んで選んで~」
「…………………」
「なんでも買ってあげるよー!」
れい君は、呆れた顔をしていた。
え…何故、普通だったら嬉しいでしょ!?おもちゃ屋さん!!
れい君の意外な反応に私は首を傾げる。
だって、私のうちにはれい君が遊べそうなおもちゃとかないし!
パソコンとテレビだけで過ごさせるなんて、ダメでしょ!?
子どもは子どもらしく遊んでもらわないと。
「権兵衛さん…僕、こういう物は…」
「はっ……ごめんね、私ったら気が利かなくて…」
「はい?」
れい君の微妙な反応に、はっとする。
もしかしておもちゃで遊んだ記憶が無いとか…もしくはそもそもそういう生活をしていない…?
思わず涙が出そうになるのを堪えて、れい君の視線に合わせしゃがむ。
「れい君、大丈夫よ。
私も一緒に遊ぶから!」
「え?権兵衛さん?」
「取り敢えず見てみましょー」
「はぁ……わかりました」
最初は乗り気ではなかったれい君も、店内をいろいろ見ているうちに興味深そうな顔をしていた。
物珍しかったのだろうか。
やっぱりおもちゃ屋さんと縁がない生活をしていたのかもしれない。
もしくは行ったことあるけど、記憶が無いだけとか。
「れい君、欲しいものあった?」
「これがいいです」
れい君が持ってきたのはトランプだった。
なるほど。
「いいよ、あとは?」
「これで十分ですけど」
「じゃあ、私も選ぶ」
「はい?」
きっとまた遠慮しているんだろう。
私も好きで時間が潰せそうなものを探していると、目についたのはパズルコーナーだった。
「れい君!
私、パズルがいい!」
「僕に確認しなくてもいいですよ?
買うのは権兵衛さんなんですし」
「れい君も一緒にやるんだから、ちゃんと選んでね?」
「…わかりました」
一緒にやる、というのを強調したら、苦笑しながらパズルを一緒に選んでくれた。
真剣な表情で選ぶれい君。
ああ、その顔も可愛いな。
真剣に悩んでいるれい君を微笑ましく眺めていたら、にっこり笑顔で私に一つの箱を手渡してきた。
「これにしましょう、権兵衛さん」
「いい……よ……って、2000ピースもあるけど、これ…」
「はい、一番難しそうなのにしました」
「お、おう…」
良い笑顔で渡してきたパズルは2000ピースもある風景画のパズルだった。
東京の夜景みたいな風景で、ヤバい、めっちゃ難しいじゃん、これ。
光輝くビル郡めっちゃ細かいよ、お姉さんにはどれも一緒に見えるよ?
空もほぼ同じ色じゃない?
本気でこれやんの?
こんなガチなの選ばれるとは思わないじゃない?
私が少し戸惑ったのを感じたれい君は、再び可愛い笑顔で私に言った。
「大丈夫ですよ、権兵衛さんもやってくれるんなら心強いです」
「………くっ……が、頑張るね…!」
「はい、頑張りましょう」
可愛いれい君の笑顔に勝てなかった。
そして私が自分で言い出した「一緒にやる」を持ち出され、やらないとは言えなくなった。
でも、私が思わず苦悶の表情になっているのを見て、可笑しそうにれい君が笑ったからこれで良かったと思ってしまった。