もう戻れない
店の自動ドアを過ぎてすぐ
太い腕に掴まれた
バッと振り向くと店員らしき
デブなメガネ男で
「万引き、しただろ」
「はぁ?してねぇよ!腕離せ!このデブ!」
「こっちに来い!!!」
大人の男に怒鳴られたことに怯んでしまった
その時の奴のメガネの奥の細い眼が忘れられない
連れていかれた部屋は
休憩室のようなもので
テレビが2台あってひとつには
4箇所から店内が映し出されていた
「お前取ってねえとか言ってたが
ここに証拠が残ってんだよ。
なあ、警察呼ぶか?」
俯いてなんとも言わない立ち尽くす俺に
やつは俺の万引き映像を見せてきた
入り口とレジ側から店内を見渡すように付けられた防犯カメラしか把握していなかった
だから
死角になるような場所を狙ったのに
店も死角を把握していたみたいだった
「その制服、江野中学のクソガキだな
まず、学校に連絡するわ」
「っ!やめろ!」
「あ?なんだ?その口の聞き方は!」
バンッッと机を殴ったので思わず後ずさる
「やめてください、だろうが」
「ゃめてください」
別に警察を呼ばれて親にバレるのはどうでもよかったんだ
バレたら警察に厳重注意受けるとか、
親にぶん殴られるなんて予想はついてたし
でも
学校には知られたくない
俺には好きな人がいた
佐々木茜って女の子
同じクラスで、陸上部で、いつも元気でクラスの中心にいるような子
周りが触れようとしない俺にも
分け隔てなく話しかけてくれた
それだけで俺は好きになった
だから
俺が万引きしたなんて佐々木に知れたら
それこそ俺に話しかけてくれなくなる
知られたくない
「学校に言われるの方が嫌がんのか。あ?」
「ぃゃ、、」
「あ?聞こえねえよ!」
「嫌です!やめてください!」
「じゃあ土下座しろ」
「ぇ?」
「土下座だよ土下座。
それくらいてめぇでもわかんだろ?
ちゃんとでこ擦りつけろよ?ハハっ」
奴は優位に立ったことでご機嫌なようだ
俺はおずおずと膝をつき
テレビでしか見たことないような土下座をした
「床に顔つくまでっつってんだろガ
それと、謝罪の言葉がねぇな」
「す、すいませんでした」
「主語がねえな」
「ぉ、お店のイヤホンを、ま、万引きしてすみません、でした。」
「そうだお前脱げ」
「え?」
「全裸になって土下座しろ」
そんなことできるわけねぇだろデブ
そう悪態をついてやりたいが
なんの反応も返せずにいると
「学校電話すっか」
と声がかかる
佐々木の笑顔がチラつく
早くこの場から去りたくて
俺は制服を脱いだ
「何突っ立ってんだ
脱いだら土下座しろ
お前彼女はいんのか?」
「…ぃません」
「童貞か?」
「ち、違います」
なんでこんなことお前に答えなきゃいけねんだよ
「クソガキのくせに生意気だなぁ
このチンポで女犯したのか」
「…」
あまりの気持ち悪さに黙っていると
「返事がねぇな!!!」
バンッッと
土下座しているすぐ横にファイルを叩きつけられ
ヒッと思わず声が漏れる
「俺は
このクソガキチンポで
女をアンアン言わせたのかって聞いたんだよ」
「はぃ……」
「じゃあ今日は
俺がこのデブチンポでお前をアンアン言わせてやるよ」
