第3話!
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「お前さん、軽すぎだ。もっと飯食わねぇといい女にゃなれねぇよ。」
はい、ここで問題です。
私は今、何処にいるでしょうか?
答え、イゾウ隊長の膝の上。
あれ?なんで私ここにいるの?!
そう。ことの経緯は、数時間前まで巻き戻る。
─数時間前─
「おーい!アキーー!!
おっかしいなあ、さっきまでそこに居たと思うんだけど…?
あ、お前らアキ知らねえ?」
「いやぁ…し、知らねっすわ…」
「アイツ何処行っちまったンでしょうねぇ…」
「そ、そうだな…エース隊長来てんのにな…」
「???」
エースを怒らせてしまった日から数日。私はエースが近くに来ると瞬間的に逃げていた。
またエースを怒らせて、今度こそお前なんてもういらない。等の言葉を言われてしまえば、私はきっとこの広い海の真ん中で途方に暮れてしまうだろう。
初めは不思議がっていた船員の皆も、事情を話せば何となく理解してくれた。
それから、だ。エースの近くにいるのが怖くて、彼が近くにいると息を潜めてその場から離れ、今回のように逃げ場がないと近くの船員達の後ろに隠れるような日々を送っている。
エースには悪いと思うが、私の心の問題なのだ。見逃してくれ。
そして、今。食堂でご飯を食べている頃。エースが野生の勘かなにか分からないが、私を探しにやってきた。咄嗟に周りの船員達の後ろにかくれ、その場をやり過ごしたと思えば、ふ、と上に影ができる。なんだと思い見上げると、そこには、
「い、イゾウ隊長…?」
「よぅ。何してんだ?ここ数日、隠れん坊かい?」
そこには、イゾウ隊長が立ってこちらを見下ろしていた。
顔つきは穏やかだが、その目は獲物をみつけた獣の目をしていた。
「なァ、お前さん、エースに…いや、俺たちに隠し事でもしてんのかい?」
「っ!!?
…嫌だなあ!隠し事だなんて〜!俺たち家族ですよ〜?そんなのするわけないじゃないですか〜!!」
バレてる。この全て見透かす様な、どんな事も見逃さない様な、この人の目が怖い。
「…ふっ…。なァに、そんなに怯えなくてもお前さんのようなヒョロっこいガキなんざ取って食いやしないさ。まァ、俺の部屋で家族の中を深めようぜ?」
そう言ったイゾウ隊長は、答えを待たず私をズルズル引き摺って彼の目的の場所へ連れていく。
「さァて、何を隠しているのか言ってみな。お嬢ちゃん。」
「えぇ〜…何も隠してなんかないっすよ〜!さっきも言った、じゃ………!?
お、おじょ!?」
イゾウ隊長は、私を部屋に連れてきて開口一番言ったのだ。そう、『お嬢ちゃん』と。
「いゃ、いやいやいや!!
おおお俺!男っすよ!?嫌だなぁ!イゾウ隊長!も、もしかして俺の事、女だと思ってました!?もー!ちゃんと付いてるもん付いてんスから!」
「…お前さん、それはちと無理があるんじゃねぇのかい?
エースは…まぁ、気づいてねぇかもしれねぇが…他の船員達は殆ど気づいてるぜ?」
イゾウ隊長からの衝撃の事実に、私は床に崩れ落ちる。効果音を付けるならばガーンと出ているだろう。
でも、そんな、私は完璧に男の振る舞いができていたはず!それを見破るなんて…!!
「いや、お前さん全っ然隠せてなかったぜ?
むしろ逆に、此方を試してんのかと思った程にねェ。」
「嘘だろ。そ、そんなぁ!絶対に誰も気づいてないって信じてたのに!!」
バレバレだったらしい私の男芝居は、お兄ちゃん達の優しさでフォローされていたらしい。なんか申し訳ない…。
「でも、なんでイゾウ隊長はそれをわざわざ確かめたんですか?」
「可愛い妹を、クセェ野郎共と一緒に雑魚寝って訳にも行かねェだろうよ。
オヤジにも言われてな。お前さんの今寝てる部屋、出ていくようになってる。」
嘘だろパパん…親馬鹿にも程があるよ…。
「で、だ。それに伴い、お前さんはこれからナースん所で過ごしてもらう。」
「…あの中に入れ、と…?」
当たり前だろ、と言うイゾウ隊長の視線を受け流す。
あの部屋は…というかナースのお姉様達が、どうも苦手なんだよな…。
「何が嫌なんだい、同性だろうがよ?」
「いやあ、なんて言うんですかね…あのキャピキャピした感じが…。」
「あァ…。お前、婆臭いもんな…。」
失礼なこと言われているが、確かに精神年齢的に私はあの女の子って言う空気がどうも苦手なんだよな…。
そして、女社会と言うのは、怖い。前世社会人の私が言うのだから、間違いない。
男には分からない、あの冷たい視線。あの標的になってしまうと、一筋縄では行かない。最悪の場合…自殺……。
「やっぱり今のままで良いです!!」
「おっと、静かになったと思えば急にどうしたよ。」
「むり、女の人こわい!」
私はイゾウ隊長にタックルの勢いで縋り付く。
「その言葉、オヤジが聞いたら悲しがるだろうなァ…。」
「えっ?」
彼は後ろを向き、震えながら言葉を続ける。
「っく…!オヤジはお前さんを男共の魔の手から守ろうと思っているのに、お前さんはそんなオヤジの気持ちを踏み躙るのかい…?」
「そ、そんなつもりは…」
「っいや、いいんだぜ?お前さんがオヤジの気持ちを振り払ってでも男部屋にいたいってんなら、そのまま今の部屋ですごしてくれて。」
「あ、あの…イゾウ隊長…ごめんなさい、私…やっぱり…」
「っくっくっく…!!!」
ナースさんのところにお引越しします。と、そう続く言葉は、イゾウ隊長の笑い声に掻き消される。
「…イゾウ隊長?」
後ろを向いたイゾウ隊長を覗き込むと、彼は耐え切らないという風に声を上げて笑う。
「クハハっ!いや、すまねェっ…!
はぁー。お前さん、何でも信じすぎちゃイケねぇよ。海賊は特にな。」
私はいやー、笑った笑った。と言うイゾウ隊長をひと睨みして、部屋に戻る。
「おい、ナースの部屋で寝るのは本当に決定してんだ。大部屋で寝んじゃねえぞ。」
「今から荷物をまとめるんです!お引越ししなきゃなんですから!」
振り向いて発した言葉にイゾウ隊長はポカンとした顔でこちらを見ると、ニヤリと笑い私をだきあげた。
「素直だねェ、ウチの妹は。」
君はやっぱりうちの子だ
そして、そのままイゾウ隊長の膝の上で夜を明かしたと気づいたのは翌朝、サッチ隊長の悲鳴を聞いてから。