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アニメの収録が休憩に入ったのでスタジオの外に出て一息入れようと思う。 自販機でなにか買おうとしたら、その近くに梶さんの背中を見つけた。
「かっ…」
「あの、梶さんのことが、」
「うん」
ん?これは告白シーン、だよね?
聞いてはいけないと思いつつ、思わず立ち止まって2人から見えない位置に隠れてしまう。しまった。
「……です。付き合ってください…」
「あーはは、…」
次に聞こえてきた声は、恥ずかしさいっぱいの尻すぼみな告白だった。
相手の子は私より後輩の子。
容姿も可愛ければ、声も可愛い。そしていい子だ。
男なら大抵の人は惚れるだろう。
梶さんはそんな可愛い子から告白されて頭をポリポリとかきながら困ったように笑っている。
「…ごめんね。好きな子いるんだ。だから気持ちには応えられない。でも、僕を好きって言ってくれてありがとう。」
自分で、面倒くさい性格。とまで言っちゃう真面目な梶さんは、告白した子にもめちゃくちゃ真面目で丁寧に断った。お礼までつけて。
こりゃモテるわ。と改めて思った自分と
だいぶショックを受けている自分に気づいた。
え?梶さん好きな人いるの?
ていうか私好きだったの?
もちろん人として、先輩としては大好きだし尊敬もしているが、ショックを受けているということはそういうことだろう。
好きな気持ちはあったが「そんなふうに見てもらえるわけない」といつの間にか気持ちに蓋をしていたのだ。
頭の中が混乱してしばらく立ちつくしていた。
「、…!、荒枝!」
「ひぁい!!!」
「何その返事」
「だって、梶さんがいきなり名前叫ぶから!」
「何回も名前呼びましたー」
「ご、ごめんなさい…」
「ん、まぁいいんだけど」
「いいんかい!」
突然名前を大声で呼ばれて変な声が出てしまった。
声の方を向くと、梶さんが。
一連の流れにケラケラと笑っている。
え、待って!今は気まずい!いつものノリで思わずツッコンでしまったが、気まずいことには変わりない。
もちろん「好きな人って誰ですか?」と聞いてしまいたいが、わざとじゃないにしろ盗み聞きをしていたことがバレるし、それこそ他の人の名前が出てきたら立ち直れる気がしない。
あー、本当に私は好きだったんだなぁと改めて思う。
「もしかしてさっきの聞いてた?」
「なんのことですか?こくっ…」
「こく?」
バカか私は。
「こくっ…とうの美味しいお菓子あるんですよ!」
「黒糖…?」
「いや、あの、えっと、失礼します。」
「待って待って待って!」
訳の分から言い訳をしてもうその場にいたくなくて逃げ出すと、呼び止められてしまった。
早くこの場から立ち去りたいのに…!
「んー…と、さっきから荒枝のこと見えてて…多分聞いてるだろうなーと。…残念?」
「…いや…別に」
「残念に思わなくていいんじゃない?」
「えっ?」
「先輩の俺が言うのも変だけど、友達からでいいから」
「あの、梶さんっ、」
「ほら、次始まるよ」
そう言うと私の肩をぽんと叩いて先にスタジオの中へ。
とりあえず、頭の整理と思わず緩んだ頬を仕事モードに切り替えて後を追う。
終わった後にご飯でも奢ってもらおう。
その時に、ちゃんとした返事をしたら彼はどんな表情をするだろうか。