あなたを濡らす雨に傘を
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年下だと思っていた『ミツキくん』はまさかの『ミツキさん』だったらしい。最初に興味を持ったのはそれだけだったけど、なんだか歌っている声も、公式プロフィールで見た好きなものも嫌いなものも、とても純粋で可愛らしくて。
どうして21歳でこの可愛さを保っていられるのか。わたしは元々こういう可愛い系の男の人が好きなわけで、それでいてこの間路上ライブをしていたときに見た彼はとてもお兄さんで、よく見たら彼は『イオリくん』のお兄さんらしくて。きゅん。それからは、公には『ミツキさん』推しだ。
それでもやっぱり、ネットにあがった動画を見ていると、逢坂くんしか見えなくなる。なにかの魔法にかかってるんじゃないかと思うくらい、彼が、彼だけが、キラキラしている。
あっ、いや、だめだ。わたしの恋とは、切り離さなきゃ。切り離すまでは、わたしは『ソウゴくん』を見られないから。きちんと諦めると言ったんだ、諦めきれるまで、中途半端ではいけない。
しかしなんでわたしは『彼以外』の推しを探し始めたんだっけ。あ、そうだ、ライブで叫ぶためだ。恥ずかしすぎて彼の名前を呼べないのはまだファンになりきれないわたしがいるから。ちゃんとアイドルグループとして客観的に見て、先入観なく『推し』を探そうって話だ。
アイドルとして『ソウゴくん』を見れるようになったら、一番なんだけど。それまでアイドリッシュセブンを見れないってのはそれ違うんじゃないの。いやだよ。
そうだなあ、もし逢坂くんのことなんて全然知らなくて、このグループを知ったら、わたしは誰を好きになっていたのだろうか。そう考えると、きっと。…なんて『もしも』は、もうわたしには掴めない。だからせめて、恋愛対象として好きな『逢坂くん』じゃなく、ファンとして好きな『ミツキさん』に、ちゃんと好きって叫ぼう。
「ライブ、はやく行きたいなあ」
またあの会場で、ライブをするらしい。今度はきっと、たくさんお客さんが来るって。だから早めにチケットを予約するべきだって友人は力説する。そんなに言うなら開始直後にとってやろう。と、わたしは都合よく休みだった講義に土下座して感謝しながらパソコンに向き合っていた。
残念ながら友人は大学に行っている。自分のぶんまで取っておくようにと念を押された。住所とか入力し直せってか。面倒だな。だがしかし、わたしひとりで慣れないライブに行く度胸もない。面倒だが、彼女のぶんも。
そうして、予約の開始時間。わたしの分はとれた。さて友人の個人情報をコピーペースト、クリック。これで予約完了のはず……ん?あれ?完了されない。混み合ってるのかな。もう一回。
「…………完売?」
わたしの目に飛び込んできたのは『完売しましたありがとうございます』みたいな文面。えっ?完売?なにかの手違いじゃないの。何度か更新ボタンを押してみるけど画面は変わらない。変わってくれない。え、うそ、ほんとに完売?3分経ってないんじゃないか?
「………えっ」
ってことはわたしすらギリギリ。友人はアウト。もしかしてわたし、めちゃくちゃ幸運なんじゃないの。「というか人気がすごい」ああわたし、時間のある大学生でよかった。
………ん?もしかして、わたし1人で3000人、いや2999人の中へ乗り込まなきゃならないの?まじでかよ。しかしまあ、幸せだから仕方ない、な。