アーユーマネージャー?
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帰りの飛行機では紡ちゃんの隣に座らせてもらって、逢坂くんと環くんに隣同士になってもらう。席順を決定したのは『仲良くなれよ』と笑った二階堂さんだ。しかしまあ、行きの便では元気だった環くんもさすがに疲れたらしく、ぐっすりと眠っていた。
わたしはメッゾの曲とアイドリッシュセブンの曲をひたすらリピートしながら次の仕事を組んでスケジュールを詰める。この辺りで少し休んでほしいけど、アイドリッシュセブンのデビューも決まったし、難しいかなあ。
ちょっとでも楽に仕事をしてほしいけど、わたしには何もできない。忙しいことは苦でないと逢坂くんは言うけど、さすがに疲労が溜まっている頃ではないだろうか。体調管理もマネージャーの仕事であってしかし彼らの要望に応えることが最優先で、ううむ。
「…はー」
曲のループは何度目だったか数えてもいない。もうほんと逢坂くんのCパート色っぽくてたまらないし興奮しすぎてやけに喉が乾く。環くんの感情の乗せ方も好きだ。ほらね言っただろ友人、この二人の声すごく相性がいいんだって。
二人だってアイドリッシュセブンとしての活動を増やすことを望んでいるだろうけど、しかしかといってメッゾとして活動することを疎かにするわけにもいかない。デビューまでの期間をどう過ごすか、ちゃんと相談しないと。
デビュー後は、紡ちゃんが支えてくれる。それまでわたしは、彼女に甘えるわけにはいかない。彼女のように、マネージャーとして、ファンとして、最善を尽くさなければ。
メッゾの曲の次に流れるのは、この度の新曲。元気で明るくて、まさにアイドリッシュセブン。「…好きだなあ」がんばろうって思える。出会えてよかったって思う。PVも楽しみだなあ。こんなに近くでいられるなんて、ファンとして、本当に幸せな日々を送っている。
アイドリッシュセブンのデビュー曲となるはずだったそれは、先に他のグループのものとなった。決まっているデビューの日を変更することもできずに、デビューの曲は既存のものを使用することになる。
それは悔しいことだけれど、しかし、やっとデビューなんだ。それはただただ嬉しいこと。さて、それではわたしはお役御免だろう。お別れ会でも開いてくれるかな。なんて思ってたら「名字さん、ツアーもよろしくお願いします!」なんて紡ちゃんに無邪気に頭を下げられ疑問符しか浮かばなかった。
しかもアルバムツアーについて来いと言うのだから耳を疑う。わたしはファンとして一緒に日本を回る気満々だったんだが。しかし、アイドリッシュセブンがデビューしたとはいえ、メッゾとしての仕事が減るわけでもない。そうか、更に忙しくなる彼らを支える役目を、わたしに一旦預けてくれるというわけか。
「環くん荷物持った!?上着着た!?」
「なんで俺だけだよ!」
「逢坂くんの荷物は確認したけど環くんの陣地はいくら片付けてもごちゃっとしてて確認しきれなくて」
「環くん、携帯!」
「あ」
「!!?ああああありがとう逢坂くん、つか環くんそんな大事なものだから次から一番に確認してくれ…!」
「充電してんの、わすれてた」
さてさてこれから、別行動をしていたメッゾはアルバムツアー中のアイドリッシュセブンに合流することになっていた。くそ、いいかんじにスケジュール詰められて褒めてもらえたってのに、局の都合で1時間もずれ込んだ。ゆるさん。
「中でスケジュール確認するね、乗って!」事故しない程度に急がなければ。紡ちゃんに連絡しなきゃならないけど、それはもう通話をナビに繋いで車で走りながらでいいや。
「俺も免許とりたい」あっ環くんバイク似合いそうだよ、いやそうじゃないそういう話は落ち着いたときにしようか!「出発するよ、シートベルト大丈夫?」それぞれから返事が返ってきたことを確認して、さあ出発。その直後に、環くんは寝てた。スケジュール確認するって言ってんのに。
「紡ちゃんごめん!遅れてる!」
『そうなんですか…!了解です!』
「ツアーには間に合う。でももし間に合わなかったら繋いでくれる?」
『はい!こちらで対応します!』
「お願いします、それじゃあ今スタジオ出たところだから、あと一時間半で着く!」
『お気をつけて!』
スクリーンタッチで通話を切れば、丁度信号に引っかかった。ふう、と一息。友人乗せてたくさん練習しててよかったってか、そこかしこに送らされたんだけどまあ結果オーライっていうか。
「お疲れ様」ふふ、と逢坂くんが美しすぎて直視できないくらいの笑みを見せてくれる。ビーナスかよ。ミラーでそれを確認しながらわたしも笑う。「逢坂くんも寝てていいよ、発声できるように三十分前には起こすから。疲れたでしょ?」しかし彼は、目が冴えちゃって、と困り顔。可愛いけどそれ疲れすぎて寝れないやつじゃないか!?
「ううん、何か眠れそうな音楽でも…?」
「大丈夫だよ、僕まで寝たら、名字さんも眠くなるでしょう?」
「ぐっ、その気遣い嬉しすぎて息ができない…いやなんでもない、すーはー、じゃあ、せめてゆっくり休んでてね…!!」
「…せっかく、」
「えっ?」
「な、なんでもないよ。ありがとう」
「えっ、ううん、あっ、暇になったらいつでも話しかけてね!ウェルカム!」
「……うん」
最近は忙しすぎてあんまり話もできないし、せっかくだからたくさん声を聞かせて欲しいけど、わたしがそんなわがままを言うわけにはいかない。待ってる、とも言えない。
わたしは、逢坂くんと毎日顔を合わせられる幸せにまだ慣れない。朝早く、おはようって言って、仕事が、一日が始まる。お疲れ様、おやすみって言って、夜遅くに別れる。わたしはそれが嬉しくて嬉しくて、疲れなんてそんなもの、微塵も感じなくて。
逢坂くんにしたらたまったものじゃないのかもしれないけど、彼がいてくれるから、わたしは頑張ろうって思える。わたしの日々が彼のために、彼らのために回っているのだと思うと、学生生活よりもずっと充実しているように思える。
その笑顔が傍にある、それは偶然ばっかりに助けられた、奇跡みたいなもので。ありがとう、なんて何度伝えてもわたしの思いは尽きやしない。好きだよ。大好き。ありがとう。
信号が変わった。彼の時間をいつまでもわたしが独り占めしていいわけもない。「出発するよー、あーんぜんうんてーん、っと」アクセルを踏み込めばゆっくりと加速。上手い上手い。いつもみたいに彼が助手席にいたなら、こんな調子は出せないけど。「…ふふ、お願いします」でもまあ、声を聞くたびにアクセルにかけた足が震えるのだから、似たようなものか。