アーユーマネージャー?
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撮影が始まれば、逢坂くんは調子も回復したみたいで、水も滴る良い男状態。興奮と発狂を超えた末に真顔になってたら、紡ちゃんに心配された。大丈夫だよ正常です。
自分の仕事の片手間だけど、カニやらなんやらを捕まえて見せに来る環くんがいるから、なんだかんだわたしも海を満喫しているような気分だ。わがまま言うならちゃんと満喫したいけど。
そうして今日のぶんを終了していく撮影、紡ちゃんがみんなにタオルを配っているから、わたしはドリンクを配る係だ。
お疲れ様です。そりゃー喉も渇くよなあ、と、わたしが配りに行く前に取りに来てくれた面々にドリンクを渡してあとのメンバーを探す。環くんと和泉さん兄は遠泳しそうな勢いで近くの島へと泳いでいた。待とう。
そしてあとは、逢坂くんだ。まさか具合が悪くなったのかと慌ててその姿を探すが、あれ、おかしいな、ただ遠くにいるだけなら、わたしが逢坂くんを見つけられないハズはーー
「名字さん、ちょっといい?」
「ほうああ逢坂くん!!あっこれお水!」
「えっ、あ、ありがとう。…隣、座るね」
「あ、うん。寒くない?体調は?」
「大丈夫だよ。…環くんは、大丈夫だったの?」
「え?ああ、大丈夫大丈夫。ゲームしてた。ごめんね、逢坂くん体調悪いのにゲームなんて」
「ううん。一織くんが替わってもらったって言ってたから」
「あ、うん…」
「環くん、すごく名字さんのこと気に入ってるみたいだって、みんな言ってたよ。すごいな、やっぱりーー」
「逢坂くん、ごめんね」
ぴたり。泣きそうな顔で笑っていた逢坂くんが、言葉を止めた。それからすぐに顔をそらして、うつむいて。ごめん、と、抱えた膝に顔をうずめて小さく呟いた。「……かっこ悪いな」その耳は、少し、赤いようにも見える。
どうしたんだろうか。いやいや、やっぱり、調子が悪いときくらいゲームなんかしてほしくないんだよ。大人しく環くんを寝かしつけておけばよかったんだよわたしのアホウ。
わたしだって環くんだって、ワガママで固まったようなものなんだ。優しすぎる逢坂くんには、きっと負担。わがままが苦手なことも知ってる。でも、たまには。「……へへへっ」こうして、嫌なことは嫌だって、言ってくれたら嬉しい。
思わず漏らしてしまった間抜けた声に、逢坂くんは顔を上げずぴくりと反応を示す。うわわ、嫌だったかな。「…名字さんは」いつもよりもちょっと硬い声は、わたしに緊張を走らせた。
「…僕より、環くんとの距離の方が、近いから」
「ん!?そ、そう?そんなつもりはないんだけど…」
「名前を呼んだり、叩いたり、一緒にゲームしたり」
「叩いたりって」
「僕は、環くんみたいにはなれなくて、名字さんに気を遣わせてるのかな、って」
「…気は使ってないけど、ただ、緊張するよ。今でも、わたしは逢坂くんの隣にいられることが、信じられなくて、幸せでさ」
「僕だって幸せだ。でも、不安になる。周りは、かっこいい人ばっかりで。名字さんは、みんなに、好かれてるから」
「…わたしが好きなのは、逢坂くんだよ」
好きなところを言えというのであれば、それは逢坂くんが過ごす日々のすべて。逢坂くんでしか紡げない日々。わたしはそんなあなたのすべてに魅了された。だから、そんなあなたの毎日に、わたしがいられるってことが、もう幸せで幸せで仕方ない。
たしかに、逢坂くんの前では、普段のわたしじゃいられない。少しでもたくさん好きだって思ってほしいし、そうじゃなくたって緊張で変になる。「…ちが、うんだ、こんなことが言いたかったわけじゃ、なくて」逢坂くんがわたしのことを考えて、わたしのことで悩んでくれてるってことが、ごめんね、たまらなく嬉しい。
「言いたいことまとめなくていいよ。全部聞くから」
「…ごめん。困らせたくないのに」
「ううん、困ってないよ!優しい逢坂くんも好きだけど、甘えてくれると、嬉しいから」
「……好き」
「へっ」
「好きだよ。環くんより先に会ったのも先に好きになったのも僕だ。誰にも渡さない」
「おっおおお逢坂くん?」
「…でも、それじゃーー」
「マネージャー!!」
びくん。切なげに目尻を下げた逢坂くん色っぽくてわたしの毛根死滅するとか思ってたら、前方から聞こえた荒っぽい声にわたしも逢坂くんも跳ね上がる。「あっ、お、お疲れ環くん、和泉さんも」恥ずかしくて少し逢坂くんと距離をとって、声のした方へと向き直る。そこには遠泳から戻ったのであろう二人の姿。はあびっくり。
負けたのかな、なんだか不機嫌な環くんがずいっと手を出してくるのでお水を渡す。「ちがう!!」え?まじで?ごめんプリン持ってないわ。「ちがう。プリンでもない。…遊び行こって、言ってんの」はい?え?わたし?
ぽかんとしていると、わたしの隣を越した和泉さんが自分でお水を取ってくれていた。うお、申し訳ない。自分の仕事くらいちゃんとしろわたしのポンコツ。いやしかし和泉さんも突飛な環くんの行動に目を丸くしていた。「わたし泳ぐ装備じゃないんだけど?」あと、いくら夏だからって濡れたままだと風邪ひくぞ。
「べつに。カニでも捕まえに行こ」
「でも仕事」
「いーじゃん。今日はもう、撮影終わりだろ」
「…どしたの?なんか焦ってる?」
「…っ、あーもう。俺は!」
「っ、環く、」
「あんたと一緒にいたいの。…だから誘ってんの」
夕日のせいか、環くんの顔が赤く見える。どうしたんだろうか、今日はなにか、甘えたい理由でもあるのかも。わたしが驚いて、環くんはわたしの返事を待って、逢坂くんも環くんに遮られた言葉の先は続かず、波の音が遠くなる。静粛の中、ぶっ、と和泉さんが水を吹き出した音だけが聞こえた。