アーユーマネージャー?
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その夜、わたしと逢坂くんは深夜帯残業。うそ。さっさと寝てしまった環くんは何度起こしたって起きないから、二人で明日の打ち合わせだ。一通り終わったところだけど。
今日は一日お疲れ様です。ずっと動いてて疲れたよね、なんて他愛ない話をしていると、逢坂くんはふいに黙り込む。んん?ど、どうしたんだ。も、もしかして具合が悪いのか。「大丈夫?そろそろ解散しよっか」あんまり引き止めてるのも悪いと思って慌てて立ち上がる、が。
「…環くんと、仲が良いんだね」ぼそり。わたしに聞こえるような聞こえないような微妙な声で逢坂くんはそう呟く。えっ、だからってわたし、聞き間違えてないよな。「…仲が良いわけでもない、んだけど」というか、ほとんど今日初めて話したようなものだし、良いも何も。
「名字さんは、筋の通った環くんみたいっていうか…」
「嬉しくなさすぎてびっくりしてる」
「だからかな、環くん、すごく懐いてる」
「懐いてないよ?」
「懐いてるよ」
「…ううーん、そうかなあ」
「…妬ける、くらい」
今度こそ、ほとんどわたしに聞こえないような、それでも耳だけは良いわたしに届くそんな呟き。「ご、ごめん!変なこと言った、よね」今日はよく赤面した逢坂くんを見ている気がする。なんて幸せな職業だ。いやそれよりも。
「だ、大丈夫だよプリンを奪おうとする横暴女より優しい逢坂くんの方が環くんも好きだよ!」慌てて弁解。例えるなら環くんのわたしへの態度は口うるさい委員長にしぶしぶ従う不真面目生徒だ。心配なんてあったもんじゃない。
心を開いてくれているような気もするけど、あの面倒くさがりにガミガミと指図しているのだからそんなに好かれるものでもないと思う。わたしがそうだし。逢坂くんは誰にでも優しいもんなあ。そんなあなたが好きです幸せ。
「…………そうじゃ、ないんだけど」
「大丈夫だって、環くんは自分に素直なだけだし、逢坂くんのこと分かりたいって思ってるよ」
「…………」
「環くん、逢坂くんに甘えたいん……お、逢坂くん?なんか怒ってる?」
「…名字さんの口から」
「へ?」
「他の人の名前、聞きたくない……」
「へっ」
間の抜けた声がもれる。「………ご、ごめん、困るよねこんな、」と、口調は焦ったような、でも不満は表情に表れているような。………えっ、や、妬いてるって、そういうこと!!?嬉しいけど嬉しすぎてもっと呼びたくなるぞ!!?
そういえば、間接キスの件も当人同士がなんとも思わないのに逢坂くんはバナナスムージーをぶんどった。嫉妬?逢坂くんが?「……そーご、くん」ぽそっ。聞こえるかな、くらいの声で、逢坂くんを呼んでみる。
ぴしり、と彼は固まった。ぴくりともしない。う、うお、変なことを言ってしまったか。「…名字さん、意地が悪いよ…」えっ、うそ、そんなつもりはなかったんだけど何か気に障ったかな!!?
「ご、ごめん?」
「……誤魔化されないからね」
「へえっ!?」
「簡単に、環くんにしたようなああいうこと、しないで」
「う、うん」
「…環くん『ばっかり』、甘やかさないで」
「うん、…えっ?」
「………僕のことも、名前で、呼んで」
「……壮五くん?」
「…………やっぱり、意地が悪い。分かってて、環くんだけ名前で呼んだの?」
「ち、違うよ!!逢、…壮五くんが、かわいいなって」
「……『名前さん』の方が、ずっとかわいい」
びっくりした。心臓止まるかと思った。仕返ししてやろうって顔して笑う逢坂くんかわいすぎるし名前で呼んでくれるしかわいいって言ってくれるしってそれ仕返しっていうかむしろご褒美っていうか!
幸せすぎるなあ。大好きだなあ。「ふへへ、ありがとう」こんなに楽しくて嬉しい日々がやってくるなんて思わなかった。見ているだけでも幸せだったのに、これじゃもっと欲張りになる。甘やかされたら甘えるぞ。
「…名字さん」ああ、戻しちゃうか。残念。でも、いつかちゃんと呼んでもらいたいし。「キス、していいかな」そうだなあ、今はまだ早いかもしれないけど、キスだってきっとーー「えっ?」いま、なんて?
ぞくぞくぞく。顔が熱くて爆発しそうだ。えっ、キス?していいって、いやむしろ、してくれるの?いや待っていまの言い方はだめだ、逢坂くんも期待してるみたいになる、し、………そう、なのか、な。
わたしさっきチョコレート食べたけど、歯とか大丈夫かな。変な味も匂いもしないかな。「う、うん……」え、ええい、もう、どうとでもなれ!
目を瞑れば、肩に手を置かれた。過剰なほどに跳ね上がるのは身体と心臓。あ、逢坂くんの、匂い。一気に緊張が走っていく。薄く目を開けば、そこには、端正な逢坂くんのーー
「押すなよ!!」
「ばか!!デカい声出すんじゃ、」
「兄さん!!声が大きいです!!」
「おまえもデケェよ」
「……………なにしてるんですか」
「いいいいやあのこれは、…その」
「OH、ゴカイですソウゴ、ジャマではなく、『テイサツ』です」
わたしと逢坂くんの打ち合わせのための場所だったリビングの一角は、賑やかしくアイドリッシュセブンのメンバーに占拠された。そういやここリビングかよ。なんて大胆なことをしているのか。つか、環くん起きたのか。
「俺、入りづらいじゃん。イチャつくなよなー」その割にオマエ一緒になって『テイサツ』楽しんでんじゃねーか。違う意味で顔が熱くなってきた。あー、もう。「…明日は7時に起床だよ特に環くん」ちらりと時計を見ればその短針は10を少し過ぎたところ。チャリ付き大学生にもはや怖いものなどないが、気まずいしそろそろおいとまするか。
「それじゃ、今日はお世話になりました」
また一緒に酒でも飲もうぜ、と笑った二階堂さんは、ふてくされたような逢坂くんを肘で小突く。ふてくされた顔もすごい可愛かったけど、小突きに反応した逢坂くんが、小さく手を振って送り出してくれた。
「あと一歩だったなぁー?」
「…………」
「怒んなって。邪魔されたくないなら部屋に連れ込めよ」
「つれこっ…!!大和さん、そういうことをみんなの前で…っ」
「壮五、奥手っぽいもんなあ」
「み、三月さんまでそういう話、」
「いや、奥手っつか」
「そーちゃん、ムッツリ」
「!!?そ、そんなこと!!」