アーユーマネージャー?
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「よ、よろしくお願いします……」
あれからマネジメントというものを徹底的に勉強し、芸能界について集中的に叩き込まれた。頭が痛い。必要な知識も入っていないのになんでわたしの頭を虐めるのか。なんでこのすっからかんの頭に知識を押し込もうなどと思えるのか。わたしを留年させる作戦か?
「顔色悪くね?」わたしのことは社長さんから聞いていたらしい四葉くんが初顔合わせだというのに驚くこともなく心配してくれた。「大丈夫、大丈夫」きみに癒されたよ、年下ってのは可愛いもんだなあ。
そりゃあ顔色が良いはずもない。ギリギリまで詰められるだけマネジメントの術を詰め込んだんだ、寝てないよ。テスト前でもこんなに徹夜したことないよスパルタかよ。
未だにどうしてわたしをマネージャーにするなんて奇行に走ったのかは聞けておらず、いやそんなもの聞けるはずもないが、もはや後には引けない。わたしはわたしのできることを、彼らのために、精一杯。そうして決心した尽くすべき相手に開口一番心配をさせてしまって申し訳ないけど。
「名字さん、無理しないでね」
「ありがとう、大丈夫だよ。さて!記念すべき初任務」
「ニンム。かっけーな」
「そう。これに失敗したらさっそくわたしの首が飛ぶ」
「まじで。成功したら?」
「お金くれる」
「へー。がんばろ」
素直にわたしの心配をしてくれているのかそれともお金がほしいのか。しかしそこはどっちでもいいです。とにかくがんばってくれ。
わたしだって迷惑かけられない。わたしより年下の紡ちゃんは人数の多いアイドリッシュセブンみんなの面倒を見てるんだ。がんばれわたし負けるなわたし。この頭の埋められた容量を無駄にしないためにも、そしてなにより、この二人を先頭としてアイドリッシュセブンを世に広めるため。首を守れ、わたし。
終わった。いや、わたしの首がじゃなくて。結論から言うなれば、成功。途中四葉くんが筋を忘れたり四葉くんが駄々を言ったり四葉くんがプリンをねだったり四葉くんがなんやかんやとあったけど、無事だ。わたしのミスはなかったような気がしてる。
身を呈してわたしを庇ってくれこともなくもないような四葉くんにも、初っ端から最後の最後までフォローしまくってくれた逢坂くんにも、感謝しかない。やっぱり付け焼き刃じゃ、最初から役にはたてないか。
「お疲れ様逢坂くん、四葉くん。楽屋に次の仕事のアンケートがあるからよろしくお願いします。その間になにか買ってくるよ、なにがいい?」
「王様プリン」
「アンケート書いてなきゃあげないよ」
「分かった」
「それじゃあ、缶コーヒー、お願いできるかな」
「承知。それじゃあ行ってくるね」
ファンのわたしが彼らの傍で仕事だなんて、どうなるかと思ったものだが、なんとかやっていけそうだ。次は頑張って役に立とうと心に決めて、この2日くらい手を止めずに書き連ね続けたメモ帳を取り出し、最初のページに書いた、マネージャーの心得を復唱した。
王様プリンと、前に逢坂くんに教えてもらった好きな缶コーヒー、それからわたしのぶんのバナナスムージーを買ってスタジオへ。途中で、王様プリンだけじゃ喉が乾くんじゃないかと思い立って水を買いに少し走った。
「お待たせ様」楽屋へ戻ると四葉くんが机に突っ伏していた。え、なに、疲れたのかな。「おかえり」対照的に楽屋でも背筋を曲げない逢坂くんは、アンケート用紙を見直しながら迎えてくれた。うっ、天使かよ。
「ただいまです。逢坂くんこれでよかった?」
「うん。ありがとう」
「いいえ。…で、四葉くんどしたの」
「……王様プリン」
「あ、起きてるのね。アンケートと交換だ」
「………書けてない」
「じゃあわたしが食べるね」
「は!!?俺の王様プリン!!」
「書いてなきゃあげないって言ったじゃん」
「~~っ、書く!そーちゃん、ペンかして!!」
「あ、うん」
子供か、と心の中で突っ込んだ。かわいいもんだ。わたしもどっちかっていうと彼みたいなタイプだし、この手のやつの扱い方は分かってるぞ。「適当に書いたら、やり直しね」くそ、と四葉くんは悔しげにこちらを見返してきた。
再びアンケートに視線を落とした彼を見届け、逢坂くんとアイコンタクト。四葉くん単純でかわいいね。しかし逢坂くんは驚いたように目を見開いていた。あれっ。あ、ちょっと尽くすべき相手に対して軽かったか?
ガリガリガリ、と四葉くんの走らせるペンの音だけが響く。あっべつにアイコンタクトじゃなくても普通に話せばいいのか。「アンケート、貰っておくね。ありがとう」ええと、これ、次のところのプロデューサーに出せばいいんだっけか。
「できた!!ほら!!」
「お、早いね。どーれ、………うん、よろしい。ご褒美の王様プリンね」
「元々俺のだろ…」
「さあね、アンケートの出来次第ではわたしのものになってたね」
「……ぜってーやらねー」
「はいよ。王様プリン好きなのね。寮の近くのコンビニの王様プリンが最近売り切れ気味なのは四葉くんのせいなの?」
「…あー、そうかも。けっこう買ってる」
「甘いもの好き?」
「ん。…つか」
「ん?」
「環でいーよ」
「…フレンドリーだね。ありがとう、環くん」
わたしが思ってるよりももしかしたら四葉くん、環くんはわたしのことを認めてくれているのかもしれない。目の敵にされてもおかしくない態度をとっているのにだ。今時珍しいほど、素直で純粋だなあ。
せっかくだしわたしも二人と一緒に交流をしながら休憩を貰おうと、買ってきたバナナスムージーを流し込む。すると流れてくるのは環くんの視線。痛いな。「なにそれ、うまそう」素直すぎんのもどうなのよ。そりゃいいけどさ。
「飲む?」呆れながらもかわいい弟のような彼にバナナスムージーを差し出せば、環くんはこくこくと頷いた。甘いもの好きの好奇心旺盛か、the・子供だなーーバシン。「………えっ、お、逢坂くん?」しかし予想に反して、わたしの手からバナナスムージーを奪い取ったのは、逢坂くんだった。え、逢坂くんもこれ好きなの?
「……名字さん」
「は、はい!!」
「間接的と言えど、そういうのは控えてほしい」
「間接的?……あっごごごごごめん!!!このまま飲んだら変な菌ついてるかもしれないよね!!?ごめん環くん新しいの買ってきたらそのときにあげるから」
「えー」
「そ、そうじゃなくて!!…二人は気にしないかもしれないけど、…間接的に、その」
「あー、分かった、そーちゃんヤキモチだ」
「はい?」
「なあっ、そ、そんなこと!!」
「俺と名前っちが、間接キスすんの、嫌だったんだろ?」
「そっそんなことで目くじらをたてるほど子供じゃない!!」
間接キス。言われてみればそうかもしれなくてでもこの男にそんなこと意識するほどわたしも子供じゃなくて。というか名前っちって早速あだ名かよ。わたしはなんだ?友人か?
しかしそうじゃない。顔を真っ赤にした逢坂くんはぱくぱくと口を開いては閉じ開いては閉じ。もしかして図星。ヤキモチって、でもまさか、あの逢坂くんが。ううう、嬉しいぞ?「そーちゃん顔真っ赤」あっ、それ言っちゃうのね環くん。