春うらら
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夢を見た。
春の日差しが降り注ぐ中
私は野原でなにかを探していて
見つからないって、落ち込んでいた。
それでもずっと探していたら
誰かが来て、一緒に探してくれることになって
そこで目が覚めた。
大きな影は、優しく手を差し伸べてくれたけど
あれは誰だったんだろう。
そして私は一体何を探していたのだろう。
そんなことを思いながら身支度をはじめて
自室から出たのだった。
『おはようございます』
挨拶しながらコートへと向かう。
息を吸うと、草木の香りがして
穏やかな春を感じられた。
練習の準備をしていたら、続々と先輩達がやって来て
同じように春になったなあ、なんて話しをしている。
穏やかで、暖かくて、すごく好きな季節だけど
同時に嫌いな季節でもある。
来年の春には、先輩達はいなくなってしまう。
まだ先のことだけど、私の頭には
いずれくる別れが既につらくて、寂しくて
大好きな先輩達がいなくなった後のことばかりを考えてしまう。
最近ニュースで卒業式のこととか
放送されてたからそう思ってしまうのだろうけど
どうしても、これからどうなるんだろうって
不安に思ってしまうのだ。
「どないしたん?浮かない顔して」
頭の上の方で聞こえる声に振り向くと
同い年の寿三郎がいた。
『そんな顔してたかな?』
「してたしてた。こないになってたやんけ」
真似された顔を見て、思わず軽く小突く。
そんなブサイクな顔してないし、と言うと
寿三郎はけらけらと笑い
自然と自分の顔に笑顔が戻るのを感じた。
そのまま一言二言話すと
寿三郎は私の頭をくしゃっと撫でて
コートに戻って行った。
どうやら私に用事があったわけではなく
彼なりに心配してくれたようだ。
同い年のよしみなのか、寿三郎はこうやってよく
私のことを気遣ってくれる。
コートに戻る寿三郎の背中を見送っていると
彼の背中に草が付いているのが見えた。
きっと寿三郎のことだから
寝っ転がっていたに違いないと思うと
私はまた自然と顔が綻んでいた。
夜になり、調べたいことがあったので図書室へと向かった。
普段なら柳くんや大曲先輩がいるのだけど
今日は誰もいないようだ。
しんと静まる夜の図書室に怖さはないけれど
やっぱり、また寂しくなってきてしまった。
今日はもうさっさと寝てしまったほうが
良いのかもしれない、と思い目的の本を探していたら
ふと夢のことを思い出した。
野原で探していたものは、何だったんだろう?
何か落としたのか
それとも何かを選んでいたのか…
そう思っていたら一冊の本が目に入った。
“幸運のクローバー”
引き寄せられるように本を手に取り
パラパラと頁をめくる。
そこには不安を抱えた女の子が
四つ葉のクローバーを探して旅をする、という絵本だった。
なんだか、私みたいな子だなと思って途中まで読み
よし、と小さく呟き絵本を閉じた。
どうしていいかわからないこの気持ちを
昇華させることができるかわからないけど
ちょっとやってみよう。
何か変わるかもしれない。
私は調べたかったことのことなんて頭から綺麗さっぱり忘れて
明日に向けて、少し前向きな気持ちになれたのだった。
翌日は、ちょうど練習のないオフの日だったから
私は合宿所から少し離れたところにある野原に来ていた。
小春日和の野原は心地が良くて
私を応援してくれてるかのように
優しい日差しが降り注いでいた。
今日、私は四つ葉のクローバーを探しに来た。
柳くんに聞いたけど、見つかる確率は10,000分の1だから
簡単に見つかるわけではないけど
挑戦してみたかったのだ。
見つけたら、なにかが変わる気がしたから。
意気込んで、黙々と探し続けてみたけれど
やっぱり簡単には見つからない。
あった!と喜んだものの
隣の葉と重なっていたり、見間違えたりで
さっきから一喜一憂している。
あの絵本の女の子は、どうなったんだろう?
四つ葉のクローバーを手に入れて
不安も消えて、無事に旅を終えたのだろうか。
それとも、探す旅を続けたのだろうか。
結末は、自分の中の気持ちが落ち着いたら
読みたいと思ったから読んでいない。
だけど、このままだったら
私のこのどうしたらいいかわからない気持ちは
宙ぶらりんのまま終わってしまう。
こんなんじゃ、だめ。
クローバーを見つけないと、私は前に進めない。
目の前が霞んで、涙が滲んできた。
「こないなとこにおったんかいな。探したんやで」
『あ………寿三郎…?』
太陽を背にして一瞬誰だかわからなかったけど
口調ですぐに彼だとわかった。
寿三郎はそのまま私の隣に座り込み、顔を覗いてきた。
私は涙目になっていることを悟られたくなくて
顔を背けて下を向く。
「なんか無くしたん?探してるんやったら手伝うで」
『無くしたわけじゃない…』
「ん?ほな何探してるんけ?」
『………四つ葉のクローバー』
「へ?四つ葉のクローバー?」
何言ってるんだって笑われるかもしれない。
そんなの見つけられないって呆れられるかもしれない。
そう思うとまた涙が滲んで来て
寿三郎から離れようとしたら
彼はすくっと、立ち上がった。
「よっしゃ!2人がかりで探すで!」
『え…?』
「何ボサッとしてんねん。
暗くならんうちに、はよ見つけな!」
バカにするわけでも、笑うわけでもなく
彼は何も聞かずにいてくれて
大きな身体を縮めて、探し始めてくれた。
しばらく2人で探したけど
やっぱり四つ葉のクローバーは見つからず
西日が私達を照らし始めた。
『寿三郎、ありがとう。
もういいよ。暗くなるからもう帰ろう』
「すまん…力になれへんかったわ…」
私よりもしゅんと、した寿三郎を見て
さっきまでのどうしたらいいかわからない気持ちは落ち着いて
なんだか少しスッキリとしていた。
私は少し休んでから合宿所に戻ろうと彼に言って
その場に座った。
『……クローバーを探してたのは
何か変わるかもしれないって思ったからだったの』
「何かって?」
『来年で先輩たち卒業しちゃうでしょ?
それを考えたら寂しくて、つらくて…。
仕方ないって頭では理解してるのに
自分の気持ちが整理つかないっていうか
どうしたらいいかわからなくて』
視界の端に映る寿三郎の手が、ぎゅっと握られた。
私が寂しいと思っているのだから
寿三郎だってきっと同じように思っているのだろう。
彼は私よりも、先輩達の近くにいるのだから。
『…幸運になれる、なんて迷信を信じているわけでもないんだけど
なんかね、四つ葉のクローバーを見つけられたら
自分の気持ちが変わるんじゃないかって思ったの。
クローバーをお守り代わりにしたら、前を向ける気がして』
自分の気持ちの問題なのに
寿三郎を付き合わせてしまったことが申し訳なく思う。
ごめんね、と言おうと思ったら
寿三郎は私の両手を大きな手で包んでくれた。
「先輩らがおらへんようになるんは寂しい。
せやけど、俺がおる。[#dn=#2]の傍にずっとおる。
俺だけじゃ力不足かもしれへんけど
寂しくならへんように支えるから…悲しい顔するんはやめんせーね」
『ずっと、いてくれるの?』
「俺はずっと一緒にいたいって思ってるんよ」
『ふふっ…なんだかプロポーズみたいね』
そう言うと、寿三郎は変な声をあげて固まり
顔は真っ赤に染まった。
私が声をあげて笑うと、少し不服そうだったけど
すぐに彼も笑顔になり、立ち上がって私に手を差し伸べてくれた。
「そろそろ帰るで」
『うん』
寿三郎の手を取って、ハッと気づく。
昨日の夢は、寿三郎だったんだ。
一緒に探してくれて、傍にいてくれたのは彼だったんだ。
そう思うと、夢まで出てくるんだもの。
本当に、これから先もずっと一緒にいられるような
そんな気がしたのだった。
(なんで四つ葉のクローバーやったん?)
(図書室に絵本があったの。それを見て探してみようって思って)
(絵本なあ。それってどんな話やったん?)
(悩みを抱えた女の子が
四つ葉のクローバーを探す旅に出るんだけど
最後までは読んでないの)
(じゃあ結末はわからへんのやね)
(うん。でもいいの)
(読まへんの?)
(きっと結末は、素敵な王子様が現れて
悩みを解決して、二人で旅続けるのよ)
(ストーリー作ったん?)
(実話を元に作ってみました。
だってこれから一緒にいてくれるんでしょ?
旅は続けて、一緒に色んなもの見たいじゃない)
(俺が王子様なんや……)
(ちょっと、感激するのそこ?)
春の日差しが降り注ぐ中
私は野原でなにかを探していて
見つからないって、落ち込んでいた。
それでもずっと探していたら
誰かが来て、一緒に探してくれることになって
そこで目が覚めた。
大きな影は、優しく手を差し伸べてくれたけど
あれは誰だったんだろう。
そして私は一体何を探していたのだろう。
そんなことを思いながら身支度をはじめて
自室から出たのだった。
『おはようございます』
挨拶しながらコートへと向かう。
息を吸うと、草木の香りがして
穏やかな春を感じられた。
練習の準備をしていたら、続々と先輩達がやって来て
同じように春になったなあ、なんて話しをしている。
穏やかで、暖かくて、すごく好きな季節だけど
同時に嫌いな季節でもある。
来年の春には、先輩達はいなくなってしまう。
まだ先のことだけど、私の頭には
いずれくる別れが既につらくて、寂しくて
大好きな先輩達がいなくなった後のことばかりを考えてしまう。
最近ニュースで卒業式のこととか
放送されてたからそう思ってしまうのだろうけど
どうしても、これからどうなるんだろうって
不安に思ってしまうのだ。
「どないしたん?浮かない顔して」
頭の上の方で聞こえる声に振り向くと
同い年の寿三郎がいた。
『そんな顔してたかな?』
「してたしてた。こないになってたやんけ」
真似された顔を見て、思わず軽く小突く。
そんなブサイクな顔してないし、と言うと
寿三郎はけらけらと笑い
自然と自分の顔に笑顔が戻るのを感じた。
そのまま一言二言話すと
寿三郎は私の頭をくしゃっと撫でて
コートに戻って行った。
どうやら私に用事があったわけではなく
彼なりに心配してくれたようだ。
同い年のよしみなのか、寿三郎はこうやってよく
私のことを気遣ってくれる。
コートに戻る寿三郎の背中を見送っていると
彼の背中に草が付いているのが見えた。
きっと寿三郎のことだから
寝っ転がっていたに違いないと思うと
私はまた自然と顔が綻んでいた。
夜になり、調べたいことがあったので図書室へと向かった。
普段なら柳くんや大曲先輩がいるのだけど
今日は誰もいないようだ。
しんと静まる夜の図書室に怖さはないけれど
やっぱり、また寂しくなってきてしまった。
今日はもうさっさと寝てしまったほうが
良いのかもしれない、と思い目的の本を探していたら
ふと夢のことを思い出した。
野原で探していたものは、何だったんだろう?
何か落としたのか
それとも何かを選んでいたのか…
そう思っていたら一冊の本が目に入った。
“幸運のクローバー”
引き寄せられるように本を手に取り
パラパラと頁をめくる。
そこには不安を抱えた女の子が
四つ葉のクローバーを探して旅をする、という絵本だった。
なんだか、私みたいな子だなと思って途中まで読み
よし、と小さく呟き絵本を閉じた。
どうしていいかわからないこの気持ちを
昇華させることができるかわからないけど
ちょっとやってみよう。
何か変わるかもしれない。
私は調べたかったことのことなんて頭から綺麗さっぱり忘れて
明日に向けて、少し前向きな気持ちになれたのだった。
翌日は、ちょうど練習のないオフの日だったから
私は合宿所から少し離れたところにある野原に来ていた。
小春日和の野原は心地が良くて
私を応援してくれてるかのように
優しい日差しが降り注いでいた。
今日、私は四つ葉のクローバーを探しに来た。
柳くんに聞いたけど、見つかる確率は10,000分の1だから
簡単に見つかるわけではないけど
挑戦してみたかったのだ。
見つけたら、なにかが変わる気がしたから。
意気込んで、黙々と探し続けてみたけれど
やっぱり簡単には見つからない。
あった!と喜んだものの
隣の葉と重なっていたり、見間違えたりで
さっきから一喜一憂している。
あの絵本の女の子は、どうなったんだろう?
四つ葉のクローバーを手に入れて
不安も消えて、無事に旅を終えたのだろうか。
それとも、探す旅を続けたのだろうか。
結末は、自分の中の気持ちが落ち着いたら
読みたいと思ったから読んでいない。
だけど、このままだったら
私のこのどうしたらいいかわからない気持ちは
宙ぶらりんのまま終わってしまう。
こんなんじゃ、だめ。
クローバーを見つけないと、私は前に進めない。
目の前が霞んで、涙が滲んできた。
「こないなとこにおったんかいな。探したんやで」
『あ………寿三郎…?』
太陽を背にして一瞬誰だかわからなかったけど
口調ですぐに彼だとわかった。
寿三郎はそのまま私の隣に座り込み、顔を覗いてきた。
私は涙目になっていることを悟られたくなくて
顔を背けて下を向く。
「なんか無くしたん?探してるんやったら手伝うで」
『無くしたわけじゃない…』
「ん?ほな何探してるんけ?」
『………四つ葉のクローバー』
「へ?四つ葉のクローバー?」
何言ってるんだって笑われるかもしれない。
そんなの見つけられないって呆れられるかもしれない。
そう思うとまた涙が滲んで来て
寿三郎から離れようとしたら
彼はすくっと、立ち上がった。
「よっしゃ!2人がかりで探すで!」
『え…?』
「何ボサッとしてんねん。
暗くならんうちに、はよ見つけな!」
バカにするわけでも、笑うわけでもなく
彼は何も聞かずにいてくれて
大きな身体を縮めて、探し始めてくれた。
しばらく2人で探したけど
やっぱり四つ葉のクローバーは見つからず
西日が私達を照らし始めた。
『寿三郎、ありがとう。
もういいよ。暗くなるからもう帰ろう』
「すまん…力になれへんかったわ…」
私よりもしゅんと、した寿三郎を見て
さっきまでのどうしたらいいかわからない気持ちは落ち着いて
なんだか少しスッキリとしていた。
私は少し休んでから合宿所に戻ろうと彼に言って
その場に座った。
『……クローバーを探してたのは
何か変わるかもしれないって思ったからだったの』
「何かって?」
『来年で先輩たち卒業しちゃうでしょ?
それを考えたら寂しくて、つらくて…。
仕方ないって頭では理解してるのに
自分の気持ちが整理つかないっていうか
どうしたらいいかわからなくて』
視界の端に映る寿三郎の手が、ぎゅっと握られた。
私が寂しいと思っているのだから
寿三郎だってきっと同じように思っているのだろう。
彼は私よりも、先輩達の近くにいるのだから。
『…幸運になれる、なんて迷信を信じているわけでもないんだけど
なんかね、四つ葉のクローバーを見つけられたら
自分の気持ちが変わるんじゃないかって思ったの。
クローバーをお守り代わりにしたら、前を向ける気がして』
自分の気持ちの問題なのに
寿三郎を付き合わせてしまったことが申し訳なく思う。
ごめんね、と言おうと思ったら
寿三郎は私の両手を大きな手で包んでくれた。
「先輩らがおらへんようになるんは寂しい。
せやけど、俺がおる。[#dn=#2]の傍にずっとおる。
俺だけじゃ力不足かもしれへんけど
寂しくならへんように支えるから…悲しい顔するんはやめんせーね」
『ずっと、いてくれるの?』
「俺はずっと一緒にいたいって思ってるんよ」
『ふふっ…なんだかプロポーズみたいね』
そう言うと、寿三郎は変な声をあげて固まり
顔は真っ赤に染まった。
私が声をあげて笑うと、少し不服そうだったけど
すぐに彼も笑顔になり、立ち上がって私に手を差し伸べてくれた。
「そろそろ帰るで」
『うん』
寿三郎の手を取って、ハッと気づく。
昨日の夢は、寿三郎だったんだ。
一緒に探してくれて、傍にいてくれたのは彼だったんだ。
そう思うと、夢まで出てくるんだもの。
本当に、これから先もずっと一緒にいられるような
そんな気がしたのだった。
(なんで四つ葉のクローバーやったん?)
(図書室に絵本があったの。それを見て探してみようって思って)
(絵本なあ。それってどんな話やったん?)
(悩みを抱えた女の子が
四つ葉のクローバーを探す旅に出るんだけど
最後までは読んでないの)
(じゃあ結末はわからへんのやね)
(うん。でもいいの)
(読まへんの?)
(きっと結末は、素敵な王子様が現れて
悩みを解決して、二人で旅続けるのよ)
(ストーリー作ったん?)
(実話を元に作ってみました。
だってこれから一緒にいてくれるんでしょ?
旅は続けて、一緒に色んなもの見たいじゃない)
(俺が王子様なんや……)
(ちょっと、感激するのそこ?)