春うらら
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"悪い、やっぱ帰れなくなった”
そんなメッセージがリョーガから届いたのは
深夜1時を過ぎたところだった。
こんな時間に届く通知も
自由気ままなあいつから届く唯一の頼りだから
どんな時間に届いてもすぐに反応してしまう自分が憎い。
帰れなくなったって、なによそれ。
頭にきて、電話してやろうかと思ったけど
せめてもの抵抗で
私はスマホの電源を落として布団に潜り込んだ。
どうせ電話したところで
「カッカッカッ!わりぃな。また今度土産でも送るからよ」
と、軽快に笑い飛ばされるのだろうと思うと
怒る気力も失せる。
リョーガと付き合って、2年になる。
私から告白して付き合ったのだけど
あいつの第一声は
「お前さん、物好きだな」って言葉っだったのは
はっきりと覚えている。
実際、付き合ってみると本当に
自由気ままな猫みたいなやつで
私自身束縛されたりするのが嫌いだから
相性としては良いのかもしれないけれど
それにしても自由すぎる奴なのである。
久しぶりの日本への帰国、楽しみにしていたのに。
新しいワンピースをおろして
美容室にも行って
リョーガが好きそうな
オレンジの香りのする香水だって買ってみた。
それなのに、当日になって
理由もなしに帰ってこないなんてひどい。
もうあんな奴知らない、と
私は不貞腐れてそのまま眠ることにしたのだった。
翌朝、泣いたせいで目蓋は腫れて最悪なコンディション。
だけどどうせあいつは帰ってこないんだ。
じゃあもうどうでもいいやって気分で
適当な服を着て
昼過ぎに遅い朝食を食べて
散歩に出かけることにした。
まだ春休み期間なのか、公園には
子どもたちがたくさんいて少し気まずい。
そんな中、なんとなく足が向かったのは
自分が通っていた高校だった。
今日はどの部活も休みなのか、校庭には誰もいないので
とりあえず隅にあるベンチに座ることにした。
この春、私は高校を卒業した。
今年から付属の大学生に進学することになったのだけど
親を説得して、実家から数分離れた場所に家を借りた。
一人暮らしに憧れていたし
それに、リョーガが帰国した時
ふたりで過ごせるような場所が欲しかったのだ。
一人暮らし始めるんだよって言ったら
「お。じゃあ俺の荷物置いとけるな!
食器とか、俺の部屋着とかちゃんと揃えようぜ」
って楽しそうに話してたじゃない。
楽しみにしていたのは、私だけだったのか。
私だけが、リョーガのことを好きみたいじゃないか。
春の優しい風が、今は残酷なくらい私の心を傷つける。
しばらくぼんやりして
今何時だろうとスマホを見て気がついた。
そういえば、ずっと電源を落としたままだった。
リョーガから何かしらメッセージが届いているかな?
届いていなかったら別れてやろうか。
そんなことを思いながら電源をつけると
いくつかのメッセージを受信していた。
ちらりとポップで見えたのは越前リョーガの名前。
なにか連絡が来てはいるが今は見る気がしない。
もう傷つきたくないのだ。
そう思っていたら、スマホがブブッと震えだし
電話が掛かって来た。
無機質な画面に浮かぶ名前を見て
しばらくそのままにしていたのだけど
なかなか切れそうにないから
私は深呼吸しながら
ゆっくりとした手つきで電話に出てみた。
「今どこにいるんだよ?」
どこって言ったとして、何になるんだろうって思いながら
学校ってだけ答えた。
すると、そのままでいろよって言われて
すぐに電話は切れてしまい
暗くなったディスプレイになんともひどい顔をした自分が映る。
テレビ電話でもする気なんだろうか。
こんな顔見せたくないなって思う時点で
別れようかとか言ったくせに
リョーガのことがまだ好きなのだと実感する。
あーぁ、これから、どうなるんだろう。
「なんでこんなとこにいるんだよ」
『え………?なんで…?』
なんでこんなとこにいるんだよって、こっちのセリフだ。
帰らないと言ったはずのリョーガが、今、目の前にいる。
「その様子じゃ、やっぱメッセージ見てねぇか」
『……見てない』
「見てみ」
色々混乱しつつメッセージアプリを開くと
「悪い、やっぱ帰れなくなった」のあとに
「エイプリルフールって言ったら怒るか?」
って届いていた。
『…………エイプリルフール…?』
「今日4/1だろ?」
『…………信じらんない』
この男、エイプリルフールにこんな嘘をつくなんて。
「悪かったって!でもよ、電源切るのはなしだぜ。
既読にもならねぇし、連絡つかねえし焦っただろ」
『私は焦るどころか
怒ったし、寂しかったし、傷ついたけど?』
そこまで言うと、涙がこみ上げて来て
リョーガの顔が滲んできた。
エイプリルフールに振り回されたことへの怒りと
会えたことへの嬉しさと安堵、色んな感情が
私の中でぐちゃぐちゃに混ざっている。
「お、おい。泣くなよ。悪かったって。
調子乗った。ほんとごめんって」
私の様子に焦ったのか、リョーガは珍しく動揺して
私の周りをウロウロしたり
頭を撫でたり忙しなく動いている。
『…泣くほど、つらい嘘だった。
それだけ会うのを楽しみにしてたの。
もうこんな嘘、二度とつかないで
待つ方は、不安だらけの中で、待ってるんだから』
「あぁ。肝に銘じる。[#dn=2#]に嘘は二度とつかねえ。
だから泣きやんでくれるか?
お前が泣くとどうしたら良いかわかんねえよ」
『リョーガって、女性の涙に弱いタイプだったんだね』
「[#dn=2#]限定だな」
リョーガは私が笑ったのを見て安心したのか
ゆっくりと、抱き締めてくれた。
久しぶりに感じる彼の体温が心地良い。
「待っててくれてるからって、お前に甘えすぎてたな」
『甘えすぎだし、私のこと適当に扱いすぎ。
……でも、好きだから許せる』
「カッカッカッ!許すの早ぇな!
しばらく日本にいるからよ、その間は今までの埋め合わせする」
『じゃあ甘えまくってやるんだから』
「あぁ、甘えてくれよ。
俺だって会えなかったのは、寂しく感じてたんだぜ」
あまり聞けない甘いセリフに酔いしれる。
今日からしばらく、二人だけで過ごせるのだと思うと
顔は綻び、私は嬉しくなって何度も彼の胸に顔を押し付けた。
大好き、そんな気持ちが溢れて彼を見上げると
同じように微笑むリョーガがいたのだった。
(俺の食器とか用意してくれたのか?)
(ううん。してない)
(部屋着は?)
(ないよ)
(ちぇ〜。まあ服は持っては来たけどよ)
(というか、一人暮らしなくなったから)
(え!?おいおい、マジかよ…)
(残念?)
(まぁ、…そりゃあな。一緒に過ごせると思ってたからよ…)
(ふふっ、嘘でーす。一人暮らしだよ)
(嘘って…やられたな!仕返しかよ!)
(エイプリルフールは、まだ始まったばかりだからね)
(へいへい。お気の済むまま、可愛い嘘には付き合うぜ)
そんなメッセージがリョーガから届いたのは
深夜1時を過ぎたところだった。
こんな時間に届く通知も
自由気ままなあいつから届く唯一の頼りだから
どんな時間に届いてもすぐに反応してしまう自分が憎い。
帰れなくなったって、なによそれ。
頭にきて、電話してやろうかと思ったけど
せめてもの抵抗で
私はスマホの電源を落として布団に潜り込んだ。
どうせ電話したところで
「カッカッカッ!わりぃな。また今度土産でも送るからよ」
と、軽快に笑い飛ばされるのだろうと思うと
怒る気力も失せる。
リョーガと付き合って、2年になる。
私から告白して付き合ったのだけど
あいつの第一声は
「お前さん、物好きだな」って言葉っだったのは
はっきりと覚えている。
実際、付き合ってみると本当に
自由気ままな猫みたいなやつで
私自身束縛されたりするのが嫌いだから
相性としては良いのかもしれないけれど
それにしても自由すぎる奴なのである。
久しぶりの日本への帰国、楽しみにしていたのに。
新しいワンピースをおろして
美容室にも行って
リョーガが好きそうな
オレンジの香りのする香水だって買ってみた。
それなのに、当日になって
理由もなしに帰ってこないなんてひどい。
もうあんな奴知らない、と
私は不貞腐れてそのまま眠ることにしたのだった。
翌朝、泣いたせいで目蓋は腫れて最悪なコンディション。
だけどどうせあいつは帰ってこないんだ。
じゃあもうどうでもいいやって気分で
適当な服を着て
昼過ぎに遅い朝食を食べて
散歩に出かけることにした。
まだ春休み期間なのか、公園には
子どもたちがたくさんいて少し気まずい。
そんな中、なんとなく足が向かったのは
自分が通っていた高校だった。
今日はどの部活も休みなのか、校庭には誰もいないので
とりあえず隅にあるベンチに座ることにした。
この春、私は高校を卒業した。
今年から付属の大学生に進学することになったのだけど
親を説得して、実家から数分離れた場所に家を借りた。
一人暮らしに憧れていたし
それに、リョーガが帰国した時
ふたりで過ごせるような場所が欲しかったのだ。
一人暮らし始めるんだよって言ったら
「お。じゃあ俺の荷物置いとけるな!
食器とか、俺の部屋着とかちゃんと揃えようぜ」
って楽しそうに話してたじゃない。
楽しみにしていたのは、私だけだったのか。
私だけが、リョーガのことを好きみたいじゃないか。
春の優しい風が、今は残酷なくらい私の心を傷つける。
しばらくぼんやりして
今何時だろうとスマホを見て気がついた。
そういえば、ずっと電源を落としたままだった。
リョーガから何かしらメッセージが届いているかな?
届いていなかったら別れてやろうか。
そんなことを思いながら電源をつけると
いくつかのメッセージを受信していた。
ちらりとポップで見えたのは越前リョーガの名前。
なにか連絡が来てはいるが今は見る気がしない。
もう傷つきたくないのだ。
そう思っていたら、スマホがブブッと震えだし
電話が掛かって来た。
無機質な画面に浮かぶ名前を見て
しばらくそのままにしていたのだけど
なかなか切れそうにないから
私は深呼吸しながら
ゆっくりとした手つきで電話に出てみた。
「今どこにいるんだよ?」
どこって言ったとして、何になるんだろうって思いながら
学校ってだけ答えた。
すると、そのままでいろよって言われて
すぐに電話は切れてしまい
暗くなったディスプレイになんともひどい顔をした自分が映る。
テレビ電話でもする気なんだろうか。
こんな顔見せたくないなって思う時点で
別れようかとか言ったくせに
リョーガのことがまだ好きなのだと実感する。
あーぁ、これから、どうなるんだろう。
「なんでこんなとこにいるんだよ」
『え………?なんで…?』
なんでこんなとこにいるんだよって、こっちのセリフだ。
帰らないと言ったはずのリョーガが、今、目の前にいる。
「その様子じゃ、やっぱメッセージ見てねぇか」
『……見てない』
「見てみ」
色々混乱しつつメッセージアプリを開くと
「悪い、やっぱ帰れなくなった」のあとに
「エイプリルフールって言ったら怒るか?」
って届いていた。
『…………エイプリルフール…?』
「今日4/1だろ?」
『…………信じらんない』
この男、エイプリルフールにこんな嘘をつくなんて。
「悪かったって!でもよ、電源切るのはなしだぜ。
既読にもならねぇし、連絡つかねえし焦っただろ」
『私は焦るどころか
怒ったし、寂しかったし、傷ついたけど?』
そこまで言うと、涙がこみ上げて来て
リョーガの顔が滲んできた。
エイプリルフールに振り回されたことへの怒りと
会えたことへの嬉しさと安堵、色んな感情が
私の中でぐちゃぐちゃに混ざっている。
「お、おい。泣くなよ。悪かったって。
調子乗った。ほんとごめんって」
私の様子に焦ったのか、リョーガは珍しく動揺して
私の周りをウロウロしたり
頭を撫でたり忙しなく動いている。
『…泣くほど、つらい嘘だった。
それだけ会うのを楽しみにしてたの。
もうこんな嘘、二度とつかないで
待つ方は、不安だらけの中で、待ってるんだから』
「あぁ。肝に銘じる。[#dn=2#]に嘘は二度とつかねえ。
だから泣きやんでくれるか?
お前が泣くとどうしたら良いかわかんねえよ」
『リョーガって、女性の涙に弱いタイプだったんだね』
「[#dn=2#]限定だな」
リョーガは私が笑ったのを見て安心したのか
ゆっくりと、抱き締めてくれた。
久しぶりに感じる彼の体温が心地良い。
「待っててくれてるからって、お前に甘えすぎてたな」
『甘えすぎだし、私のこと適当に扱いすぎ。
……でも、好きだから許せる』
「カッカッカッ!許すの早ぇな!
しばらく日本にいるからよ、その間は今までの埋め合わせする」
『じゃあ甘えまくってやるんだから』
「あぁ、甘えてくれよ。
俺だって会えなかったのは、寂しく感じてたんだぜ」
あまり聞けない甘いセリフに酔いしれる。
今日からしばらく、二人だけで過ごせるのだと思うと
顔は綻び、私は嬉しくなって何度も彼の胸に顔を押し付けた。
大好き、そんな気持ちが溢れて彼を見上げると
同じように微笑むリョーガがいたのだった。
(俺の食器とか用意してくれたのか?)
(ううん。してない)
(部屋着は?)
(ないよ)
(ちぇ〜。まあ服は持っては来たけどよ)
(というか、一人暮らしなくなったから)
(え!?おいおい、マジかよ…)
(残念?)
(まぁ、…そりゃあな。一緒に過ごせると思ってたからよ…)
(ふふっ、嘘でーす。一人暮らしだよ)
(嘘って…やられたな!仕返しかよ!)
(エイプリルフールは、まだ始まったばかりだからね)
(へいへい。お気の済むまま、可愛い嘘には付き合うぜ)