春うらら
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極寒の冬が終わり、春の陽気を感じられる季節になった。
花々が綺麗に咲き始め
道行く人達も春の装いになっている。
春物の服を着るのが楽しみだなあ
なんて呑気に考えながら学校に着くと
いつもと違ってなんだか騒がしい気がした。
教室に入り、友達におはようって挨拶をして
今日なんだか騒がしいねって声を掛けたら
多分入学式だからじゃないかなって返答が返ってきた。
そっか、そういえば今日は入学式だったなと思い出す。
2年生の頃は
後輩が入学してくることにドキドキしていたけれど
3年生ともなればなんだか懐かしいなあなんて
悟ったような気持ちになってしまっていた。
あと1年で卒業。
自分の進む進路は、朧げだけど決まってきているし
今のところ成績に悩むこともなさそう。
私の悩みは、やっぱり……。
「よう。なんだか今日は騒がしいな」
『おはよう、鬼くん。今日は入学式だって』
あぁ、それでか、と鬼くんは答えながら私の隣に座った。
今日から最年長だな、俺達。と笑う彼を見て
鬼くんはよく下級生の面倒を見ているようだから
気になるのかもしれない。
部活だけでなく、U-17というテニスの後輩たち
それに施設の子供たち・・・
鬼くんはいろんな人の面倒を見ていて
私は彼のそんな優しい一面を見て、好きになった。
片思い歴2年。
私の最近の悩みは、専ら彼のことだ。
鬼くんが今後どんな道を進むのか聞けずにいた。
近くの大学に進学するとか
このあたりの企業で働くとかも有り得るけれど
海外の試合で活躍した話からすれば
プロテニスプレイヤーとして遠く離れてしまうかもしれない。
気持ちを伝えられないまま
私の高校生活は終わってしまうのかなって考えたら
鼻の奥がツンとして、目が霞んできたような気がした。
「おい、どうかしたのか?」
『え?いや、なんでもないよ。あくびを噛み殺しただけだよ』
まさか彼に感づかれているなんて思いもよらず
あははと笑って誤魔化す。
勝手に先のことを考えて、メンタルが不安定になってるのかな。
私は涙が出そうになるのをなんとかこらえたのだった。
その日一日、私はどこか調子がおかしかった。
気を抜いたら涙が出てしまいそうになって
そのせいでか鼻水も出るし
頭がボーっとするような感じもした。
なんとか耐えて放課後になって
とにかくもう今日はすぐに帰ってしまおうと思っていたら
鬼くんに呼び止められた。
「お前、どうしたよ?今日調子悪かったのか?」
『えっと、具合悪いとかではないんだけど・・・
ううん、大丈夫。なんでもないよ』
「なんでもないって顔じゃねえぞ。帰り送る。
荷物持つから貸してみろ」
普段なら嬉しいのだけど、今はヤバい。
涙が零れそうになってきて、もう耐えられない。
『あっ・・・』
泣きたいわけじゃないのに、涙がポロポロと溢れてしまった。
どうしよう、止まらない。
泣き顔なんて見られたくないのに、って困って鬼くんを見たら
彼は私以上につらそうな表情をして固まっていた。
とにかく涙を拭かなきゃと
袖で拭おうとしたら鬼くんに腕を掴まれ
そのまま彼の胸に引き寄せられた。
咄嗟のことで、頭が追いつかない。
え?今私鬼くんに抱きしめられてるの?なんで?泣いてるから?
色々キャパオーバーになってきたその瞬間
涙だけじゃなくて、鼻水も出そうになって
慌てて彼の胸を押しのけた。
「わ、悪い・・・!!つい・・・」
『違うの、嫌ってわけじゃなくて
鼻水も止まらなくなって・・・』
自分の身体がなにかおかしい。
涙と鼻水。しかもなんだか目も痒くなってきた気がして
ハッと、気がついた。
これって絶対。
『花粉症だ・・・』
「花粉症?」
鬼くんは素っ頓狂な声を上げて、ポカンとしていたが
色々と合点がいったのであろう、安堵の表情に変わった。
『ごめんね、ややこしくて。
でもこれ絶対花粉症だよね!?
目も痒いし、涙出るし、鼻もムズムズするし・・・』
「多分そうだろうな。
後輩にも花粉症の奴がいるが、似たようなこと言ってたぞ。
あと頭がぼーっとするって」
『あぁ、もう、絶対そうだ・・・。今まで大丈夫だったのに・・・』
誰もがいきなりなるというから
仕方がないことなのだろうけど
それにしてもいきなりの症状でびっくりした。
落ち着きを取り戻してくると
先ほどまでの出来事を思い出す。
私はさっき、鬼くんに抱きしめられてしまった。
彼の体温、力強い腕を思い出すと、徐々に体が火照ってきた。
それはどうやら彼も同じらしく、顔が赤く染まっている。
「さっきは本当に悪かったな。
お前が泣いてるのを見たら
つい居ても立っても居られなくなっちまった」
『いいの。
その、私の顔が見えないようにしてくれたんだよね?
ありがとう』
「それもあるが・・・
こういうとき、なんて言ったらいいんだ。
・・・誰が泣かせたんだとか
俺がどうにかしてやりたいと思ったと言うか
いや、でもあれは完全にセクハラだな」
自分の行動を反省したのか
鬼くんは私から距離を取ってしゅんと
しているように見えた。
『セクハラじゃないよ!
私のためにしてくれたことだし
それに、その、さっきも言ったけど
私嫌じゃなかったから。
むしろ、嬉しかったから・・・』
今伝えるしかない、と意を決して
「好きです」の言葉を言おうとしたら
誰かが廊下を通る音がして
今までの二人の空気が終わりを告げた。
「か、帰るか」
『う、うん、そうだね』
まだドキドキする胸を押さえ
花粉症の話をしながら帰路に着く。
家の近くまで来て別れる間際
もうあんなチャンスはないんじゃないかなって落胆する。
「じゃあ、帰るけどよ・・・ちゃんと病院行くんだぞ。
俺はもう、お前が泣いてたり
つらそうな顔してるのは嫌だからな」
『うん。ちゃんと病院行くよ。きついもん』
「そうだよな。変わってやりたいくらいだよ」
『ねえ、鬼くん。なんでそんなに優しいの?』
これ以上優しくされたら、勘違いをしてしまう。期待してしまう自分がいる。
今だって、優しくする理由に
期待してしまっているのだ。
私だけ特別なんじゃないかって。
「守りたいって思うから、優しくするのかもな。
・・・言っとくがな、俺だって
誰でも抱きしめるわけじゃないぞ」
照れ隠しなのか、彼はそのまま背を向けて帰って行った。
広い背中はたくましいけれど
ちらりと見える耳は赤く染まっている。
もうこんなの、期待するしかない。
鬼くんってずるいなあって笑いながら
私は明日、告白するシチュエーションを
あれこれと考えていたのだった。
(おはよう…)
(おはようって…お前、大丈夫か?)
(目腫れてるよね〜。めちゃくちゃ痒いの)
(充血してるじゃねえか。見せてみろ)
(えぇっ!?
いや、ちょっと、鬼くんそれは恥ずかしいから・・・!)
(おっと、悪い。またやっちまった・・・。
どうもこう触れちまうな)
(ねぇ、それ素でやってるなら質悪いよ・・・)
(あぁ?何がだ?)
(なんでもない!)
花々が綺麗に咲き始め
道行く人達も春の装いになっている。
春物の服を着るのが楽しみだなあ
なんて呑気に考えながら学校に着くと
いつもと違ってなんだか騒がしい気がした。
教室に入り、友達におはようって挨拶をして
今日なんだか騒がしいねって声を掛けたら
多分入学式だからじゃないかなって返答が返ってきた。
そっか、そういえば今日は入学式だったなと思い出す。
2年生の頃は
後輩が入学してくることにドキドキしていたけれど
3年生ともなればなんだか懐かしいなあなんて
悟ったような気持ちになってしまっていた。
あと1年で卒業。
自分の進む進路は、朧げだけど決まってきているし
今のところ成績に悩むこともなさそう。
私の悩みは、やっぱり……。
「よう。なんだか今日は騒がしいな」
『おはよう、鬼くん。今日は入学式だって』
あぁ、それでか、と鬼くんは答えながら私の隣に座った。
今日から最年長だな、俺達。と笑う彼を見て
鬼くんはよく下級生の面倒を見ているようだから
気になるのかもしれない。
部活だけでなく、U-17というテニスの後輩たち
それに施設の子供たち・・・
鬼くんはいろんな人の面倒を見ていて
私は彼のそんな優しい一面を見て、好きになった。
片思い歴2年。
私の最近の悩みは、専ら彼のことだ。
鬼くんが今後どんな道を進むのか聞けずにいた。
近くの大学に進学するとか
このあたりの企業で働くとかも有り得るけれど
海外の試合で活躍した話からすれば
プロテニスプレイヤーとして遠く離れてしまうかもしれない。
気持ちを伝えられないまま
私の高校生活は終わってしまうのかなって考えたら
鼻の奥がツンとして、目が霞んできたような気がした。
「おい、どうかしたのか?」
『え?いや、なんでもないよ。あくびを噛み殺しただけだよ』
まさか彼に感づかれているなんて思いもよらず
あははと笑って誤魔化す。
勝手に先のことを考えて、メンタルが不安定になってるのかな。
私は涙が出そうになるのをなんとかこらえたのだった。
その日一日、私はどこか調子がおかしかった。
気を抜いたら涙が出てしまいそうになって
そのせいでか鼻水も出るし
頭がボーっとするような感じもした。
なんとか耐えて放課後になって
とにかくもう今日はすぐに帰ってしまおうと思っていたら
鬼くんに呼び止められた。
「お前、どうしたよ?今日調子悪かったのか?」
『えっと、具合悪いとかではないんだけど・・・
ううん、大丈夫。なんでもないよ』
「なんでもないって顔じゃねえぞ。帰り送る。
荷物持つから貸してみろ」
普段なら嬉しいのだけど、今はヤバい。
涙が零れそうになってきて、もう耐えられない。
『あっ・・・』
泣きたいわけじゃないのに、涙がポロポロと溢れてしまった。
どうしよう、止まらない。
泣き顔なんて見られたくないのに、って困って鬼くんを見たら
彼は私以上につらそうな表情をして固まっていた。
とにかく涙を拭かなきゃと
袖で拭おうとしたら鬼くんに腕を掴まれ
そのまま彼の胸に引き寄せられた。
咄嗟のことで、頭が追いつかない。
え?今私鬼くんに抱きしめられてるの?なんで?泣いてるから?
色々キャパオーバーになってきたその瞬間
涙だけじゃなくて、鼻水も出そうになって
慌てて彼の胸を押しのけた。
「わ、悪い・・・!!つい・・・」
『違うの、嫌ってわけじゃなくて
鼻水も止まらなくなって・・・』
自分の身体がなにかおかしい。
涙と鼻水。しかもなんだか目も痒くなってきた気がして
ハッと、気がついた。
これって絶対。
『花粉症だ・・・』
「花粉症?」
鬼くんは素っ頓狂な声を上げて、ポカンとしていたが
色々と合点がいったのであろう、安堵の表情に変わった。
『ごめんね、ややこしくて。
でもこれ絶対花粉症だよね!?
目も痒いし、涙出るし、鼻もムズムズするし・・・』
「多分そうだろうな。
後輩にも花粉症の奴がいるが、似たようなこと言ってたぞ。
あと頭がぼーっとするって」
『あぁ、もう、絶対そうだ・・・。今まで大丈夫だったのに・・・』
誰もがいきなりなるというから
仕方がないことなのだろうけど
それにしてもいきなりの症状でびっくりした。
落ち着きを取り戻してくると
先ほどまでの出来事を思い出す。
私はさっき、鬼くんに抱きしめられてしまった。
彼の体温、力強い腕を思い出すと、徐々に体が火照ってきた。
それはどうやら彼も同じらしく、顔が赤く染まっている。
「さっきは本当に悪かったな。
お前が泣いてるのを見たら
つい居ても立っても居られなくなっちまった」
『いいの。
その、私の顔が見えないようにしてくれたんだよね?
ありがとう』
「それもあるが・・・
こういうとき、なんて言ったらいいんだ。
・・・誰が泣かせたんだとか
俺がどうにかしてやりたいと思ったと言うか
いや、でもあれは完全にセクハラだな」
自分の行動を反省したのか
鬼くんは私から距離を取ってしゅんと
しているように見えた。
『セクハラじゃないよ!
私のためにしてくれたことだし
それに、その、さっきも言ったけど
私嫌じゃなかったから。
むしろ、嬉しかったから・・・』
今伝えるしかない、と意を決して
「好きです」の言葉を言おうとしたら
誰かが廊下を通る音がして
今までの二人の空気が終わりを告げた。
「か、帰るか」
『う、うん、そうだね』
まだドキドキする胸を押さえ
花粉症の話をしながら帰路に着く。
家の近くまで来て別れる間際
もうあんなチャンスはないんじゃないかなって落胆する。
「じゃあ、帰るけどよ・・・ちゃんと病院行くんだぞ。
俺はもう、お前が泣いてたり
つらそうな顔してるのは嫌だからな」
『うん。ちゃんと病院行くよ。きついもん』
「そうだよな。変わってやりたいくらいだよ」
『ねえ、鬼くん。なんでそんなに優しいの?』
これ以上優しくされたら、勘違いをしてしまう。期待してしまう自分がいる。
今だって、優しくする理由に
期待してしまっているのだ。
私だけ特別なんじゃないかって。
「守りたいって思うから、優しくするのかもな。
・・・言っとくがな、俺だって
誰でも抱きしめるわけじゃないぞ」
照れ隠しなのか、彼はそのまま背を向けて帰って行った。
広い背中はたくましいけれど
ちらりと見える耳は赤く染まっている。
もうこんなの、期待するしかない。
鬼くんってずるいなあって笑いながら
私は明日、告白するシチュエーションを
あれこれと考えていたのだった。
(おはよう…)
(おはようって…お前、大丈夫か?)
(目腫れてるよね〜。めちゃくちゃ痒いの)
(充血してるじゃねえか。見せてみろ)
(えぇっ!?
いや、ちょっと、鬼くんそれは恥ずかしいから・・・!)
(おっと、悪い。またやっちまった・・・。
どうもこう触れちまうな)
(ねぇ、それ素でやってるなら質悪いよ・・・)
(あぁ?何がだ?)
(なんでもない!)