春うらら
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真新しい少し大きめの制服に身を包み
まだ履きなれない硬いローファーを履く。
ドキドキしながら玄関のドアを開けて、私は深呼吸した。
今日から、高校一年生。
新しい土地での生活が始まる。
九州から、父の仕事の転勤で京都へとやってきた私は
この街でやっていけるか不安だった。
九州の田舎娘が、歴史ある古都京都に馴染めるのか。
制服だと少しは田舎臭さが
カモフラージュできるかもしれないけれど
髪型やメイク、立ち振舞では誤魔化せないものがある。
浮かないかな、友達できるかな、いじめられないかな
って、そればかりが気がかりで
昨日はなかなか寝付けなかった。
それでも、今日がいちばん大事なのだ。
人間どんなに頑張っても
第一印象はいつまでもつきまとうもの。
今日をうまく乗り切らなければならない。
学校へと向かう通学路には
スーツを来たサラリーマンや同じ制服を
身にまとった子達が歩いている。
なんとなく、制服が真新しく感じるから
同じように新入生なのかもしれない。
通学には、徒歩20分。
バスに乗るには近くて、歩くには少し遠い。
緊張を紛らわすために
送っていくという父の申し出を断ったのだけど
失敗だったかもしれない。
履き慣れないローファーのせいで
足が痛くなってきた。
どうやら、靴擦れしてしまったようだ。
どうしよう。絆創膏は持っているけど
ここでひとりで靴を脱いで絆創膏を貼るって行為が
すごく恥ずかしいことのように思える。
でもこのまま歩いたらきっと
血だらけになってしましそうだし、と考えていたら
後ろから明るい声がした。
「どないしたん?」
振り向くと、そこには白い髪の
褐色の肌をした男の子が立っていた。
『あの、えっと…。靴擦れしたみたいで』
「あらま。絆創膏持ってるん?」
『一応は』
「あぁ、ひとりじゃ貼りにくいよな。
俺の肩貸すで☆」
『え、いや、あの……』
「あ、あっちにベンチあるから
ちょっと座ろか。まだ時間大丈夫やろ」
私の返事を待たずに
彼は私の手を引いてバス停のベンチに座らせてくれた。
靴を脱いで怪我を確認すると
血は出ていなかったけど皮が向けていた。
このまま歩いていたら
きっと私の靴下は真っ赤になっていただろうなと苦笑する。
絆創膏を貼り終えると
隣で見守ってくれていた彼に、改めてお礼を伝えた。
『ありがとうございました。
ちょっと、ひとりで靴を脱ぐのが
恥ずかしかったから助かりました』
「お礼なんてええよ。
俺なんもしてへんしな。それより、一年生?」
『はい』
「なら俺と一緒やん。俺、種ヶ島修二。名前なんて言うん?」
『東春陽です』
どんなテンションで話していいかわからず
そのまま敬語で名乗ったら
彼は大きな口を開けて笑った。
「同い年やって〜。タメ口でええよ」
『あ…う、うん』
「よし、ほなそろそろ学校行こか!
入学式で遅刻とかシャレにならんしな。
話しながら一緒に学校行こや☆」
種ヶ島くんは京都弁とも大阪弁とも言えない
不思議な話し方をしていた。
だけど軽快な口調で、すごく話しやすくて
人を惹きつける人だなって思えた。
「ほんなら、九州からこっち来たばっかなんやな」
『うん。だから学校までの道のりしかまだわからなくて』
「さよか〜。
なら今度、修さんがこの辺案内したろ!
ええとこ、いっぱいあんねんで」
『あはは、お願いしようかな』
出会ってまだ数分なのに
種ヶ島くんとだったら、きっと楽しいだろうなあと思えて
私は思わず声に出して笑ってしまった。
すると、種ヶ島くんは目を細めて
優しく微笑んでくれた。
さっきまでの無邪気な顔から
いきなり変わるものだから、ドキッとする。
「やっと素で笑ってくれたなぁ」
『え?そう…かな?』
「緊張しまくってたやろ?顔強張ってたで」
『そりゃあね。
友達できるかな、馴染めるかな、頑張らなきゃなって
色々考えてて、不安しかなかったから
笑う余裕なんてなくなってたのかも』
「靴擦れもするし?」
『ほんとそれ』
なんだか可笑しくなって、私達は顔を合わせて笑った。
その瞬間、私達の間に、はらりと何かが舞った。
話に夢中になって気がつかなかったけれど
道沿いに綺麗な桜が咲いていた。
種ヶ島くんの笑顔と、桜並木を見て
頑張れって言われてるような気がした。
『種ヶ島くん、ありがとう。
種ヶ島くんのおかげで緊張もほぐれたし
なんだか頑張れそう』
「力になれたなら良かったわ。お、そろそろ着くなあ」
『そうだね。
ちょっとだけ、楽しみになってきた』
「ええやん。楽しんだもんがええで」
校門を潜って、足を止める。
ここが、これから3年間を過ごす場所。
ふと、背後から種ヶ島くんを呼ぶ声がした。
友達なのだろうか、眼鏡の可愛らしい男の子が
手を挙げている。
『ここで良いよ。本当にありがとう。
同じクラスになれたら良いね』
「そしたら俺東さんの友達1号やって自慢するわ」
『なにそれ。ふふっ、じゃあ、またね』
「おん。じゃあ、また」
もう、緊張でウジウジしていた私はいない。
胸を張って、教室へと向かおう。
そしてこの新しい地で、たくさんの人達と出会いたい。
きっと、種ヶ島くんのような
素敵な人達がたくさんいるから大丈夫。
これから、よろしくね、という気持ちを込めて
私教室のドアへと手をかけたのだった。
(なぁ春陽、テニス部のマネージャーやらへん?)
(えっ?私がマネージャー?)
(誰かやってくれへんかな〜って話出ててな)
(いや…遠慮しておくよ)
(えぇ〜!なんでや〜)
(だって、ただでさえ種ヶ島くんと付き合ってるっていう
根も葉もない噂が立ってるし
これ以上目立ちたくないというか…)
(ハハッ!ごめんて!
同じクラスでテンション上がってもうたからなあ〜。
あ、せやったら噂ホンマにしたらええやん☆)
(へ?)
(俺は本気やで?って、春陽ちゃーん。
あらら、固まってしもたわ)
まだ履きなれない硬いローファーを履く。
ドキドキしながら玄関のドアを開けて、私は深呼吸した。
今日から、高校一年生。
新しい土地での生活が始まる。
九州から、父の仕事の転勤で京都へとやってきた私は
この街でやっていけるか不安だった。
九州の田舎娘が、歴史ある古都京都に馴染めるのか。
制服だと少しは田舎臭さが
カモフラージュできるかもしれないけれど
髪型やメイク、立ち振舞では誤魔化せないものがある。
浮かないかな、友達できるかな、いじめられないかな
って、そればかりが気がかりで
昨日はなかなか寝付けなかった。
それでも、今日がいちばん大事なのだ。
人間どんなに頑張っても
第一印象はいつまでもつきまとうもの。
今日をうまく乗り切らなければならない。
学校へと向かう通学路には
スーツを来たサラリーマンや同じ制服を
身にまとった子達が歩いている。
なんとなく、制服が真新しく感じるから
同じように新入生なのかもしれない。
通学には、徒歩20分。
バスに乗るには近くて、歩くには少し遠い。
緊張を紛らわすために
送っていくという父の申し出を断ったのだけど
失敗だったかもしれない。
履き慣れないローファーのせいで
足が痛くなってきた。
どうやら、靴擦れしてしまったようだ。
どうしよう。絆創膏は持っているけど
ここでひとりで靴を脱いで絆創膏を貼るって行為が
すごく恥ずかしいことのように思える。
でもこのまま歩いたらきっと
血だらけになってしましそうだし、と考えていたら
後ろから明るい声がした。
「どないしたん?」
振り向くと、そこには白い髪の
褐色の肌をした男の子が立っていた。
『あの、えっと…。靴擦れしたみたいで』
「あらま。絆創膏持ってるん?」
『一応は』
「あぁ、ひとりじゃ貼りにくいよな。
俺の肩貸すで☆」
『え、いや、あの……』
「あ、あっちにベンチあるから
ちょっと座ろか。まだ時間大丈夫やろ」
私の返事を待たずに
彼は私の手を引いてバス停のベンチに座らせてくれた。
靴を脱いで怪我を確認すると
血は出ていなかったけど皮が向けていた。
このまま歩いていたら
きっと私の靴下は真っ赤になっていただろうなと苦笑する。
絆創膏を貼り終えると
隣で見守ってくれていた彼に、改めてお礼を伝えた。
『ありがとうございました。
ちょっと、ひとりで靴を脱ぐのが
恥ずかしかったから助かりました』
「お礼なんてええよ。
俺なんもしてへんしな。それより、一年生?」
『はい』
「なら俺と一緒やん。俺、種ヶ島修二。名前なんて言うん?」
『東春陽です』
どんなテンションで話していいかわからず
そのまま敬語で名乗ったら
彼は大きな口を開けて笑った。
「同い年やって〜。タメ口でええよ」
『あ…う、うん』
「よし、ほなそろそろ学校行こか!
入学式で遅刻とかシャレにならんしな。
話しながら一緒に学校行こや☆」
種ヶ島くんは京都弁とも大阪弁とも言えない
不思議な話し方をしていた。
だけど軽快な口調で、すごく話しやすくて
人を惹きつける人だなって思えた。
「ほんなら、九州からこっち来たばっかなんやな」
『うん。だから学校までの道のりしかまだわからなくて』
「さよか〜。
なら今度、修さんがこの辺案内したろ!
ええとこ、いっぱいあんねんで」
『あはは、お願いしようかな』
出会ってまだ数分なのに
種ヶ島くんとだったら、きっと楽しいだろうなあと思えて
私は思わず声に出して笑ってしまった。
すると、種ヶ島くんは目を細めて
優しく微笑んでくれた。
さっきまでの無邪気な顔から
いきなり変わるものだから、ドキッとする。
「やっと素で笑ってくれたなぁ」
『え?そう…かな?』
「緊張しまくってたやろ?顔強張ってたで」
『そりゃあね。
友達できるかな、馴染めるかな、頑張らなきゃなって
色々考えてて、不安しかなかったから
笑う余裕なんてなくなってたのかも』
「靴擦れもするし?」
『ほんとそれ』
なんだか可笑しくなって、私達は顔を合わせて笑った。
その瞬間、私達の間に、はらりと何かが舞った。
話に夢中になって気がつかなかったけれど
道沿いに綺麗な桜が咲いていた。
種ヶ島くんの笑顔と、桜並木を見て
頑張れって言われてるような気がした。
『種ヶ島くん、ありがとう。
種ヶ島くんのおかげで緊張もほぐれたし
なんだか頑張れそう』
「力になれたなら良かったわ。お、そろそろ着くなあ」
『そうだね。
ちょっとだけ、楽しみになってきた』
「ええやん。楽しんだもんがええで」
校門を潜って、足を止める。
ここが、これから3年間を過ごす場所。
ふと、背後から種ヶ島くんを呼ぶ声がした。
友達なのだろうか、眼鏡の可愛らしい男の子が
手を挙げている。
『ここで良いよ。本当にありがとう。
同じクラスになれたら良いね』
「そしたら俺東さんの友達1号やって自慢するわ」
『なにそれ。ふふっ、じゃあ、またね』
「おん。じゃあ、また」
もう、緊張でウジウジしていた私はいない。
胸を張って、教室へと向かおう。
そしてこの新しい地で、たくさんの人達と出会いたい。
きっと、種ヶ島くんのような
素敵な人達がたくさんいるから大丈夫。
これから、よろしくね、という気持ちを込めて
私教室のドアへと手をかけたのだった。
(なぁ春陽、テニス部のマネージャーやらへん?)
(えっ?私がマネージャー?)
(誰かやってくれへんかな〜って話出ててな)
(いや…遠慮しておくよ)
(えぇ〜!なんでや〜)
(だって、ただでさえ種ヶ島くんと付き合ってるっていう
根も葉もない噂が立ってるし
これ以上目立ちたくないというか…)
(ハハッ!ごめんて!
同じクラスでテンション上がってもうたからなあ〜。
あ、せやったら噂ホンマにしたらええやん☆)
(へ?)
(俺は本気やで?って、春陽ちゃーん。
あらら、固まってしもたわ)