あなたとの一杯を
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蒸し暑く
熱気に溢れた神社の鳥居の前で彼を待っていたら
人混みの中からひょっこり頭が抜きん出た彼が
私を見つけて大きく手を振った。
「千波ちゃん!待たせてもーたよね?すんません!」
『ううん。いま来たところだから気にしないで』
寿三郎は私を待たせたことを気にしているのか
何度もごめん、と謝る。
ちょっとしたことでも素直に謝ったり
気遣ってくれたりして優しさが垣間見えて嬉しいから
楽しみすぎて本当はかなり前から来ていたことは
内緒にしておこうかと思う。
「人多いからはぐれんようにせんとね」
『寿三郎は目立つから大丈夫だよ』
「そらそうやね!ほんなら、そろそろ行きまっせ!」
今日は、寿三郎とふたりで
地元の神社で行われる夏祭りに遊びに来た。
目的は屋台の食べ歩きだ。
寿三郎が先輩たちとビアガーデンに行った話や
先輩が蔵開きにいった話とかを聞いていたら
ふたりして外で飲んだりしたいねって話になって
そうだ、お祭りに行こう!となったのだ。
「何食べます?
いくつか食べ物買って、ビールとか飲みたいですよね」
『そうだね!
やっぱり焼き鳥は外せないから焼き鳥と…
ソース系もいいよね』
「たこ焼きと、お好み焼き、焼きそば・・・
うっは~、どれもええですね!」
屋台を覗きながらお腹すいたとふたりでお腹を抱えて笑い
結局どれにするか決められなかったので
寿三郎は大人買いしやる!と言ってはりきって屋台に並んだ。
手に持てないじゃん、という私のツッコミで
泣く泣くたこ焼きだけになったのだけど
ちょっとしたことでも
彼と一緒にいると一喜一憂共有できて、全てが楽しい。
「焼きそばと、お好み焼きは第2ラウンドやね」
『第3ラウンドは何にする?』
「はし巻きってのもありましたよ!
割り箸にお好み焼き巻いてあるみたいなやつでっせ」
『結局粉ものにソースじゃん』
「あ、ホンマやね」
この人の、明るい笑顔が好きで
笑ってばかりの時間がすごく幸せに感じる。
『あっちに座れそうな場所があったからそこで食べる?』
「せやね!千波ちゃん先に座りんせーね。
俺ビール買ってきます」
お願い、っていう前に彼は走ってビールを買いに行った。
ものの数分で、寿三郎はプラスチックのカップに入った
生ビールを持ってきた。
「へいお待ち!」
『わ!生ビールだ!缶だと思ってた!最高!』
「へへっ、ほなかんぱーい!」
同時に飲んで、同時に美味しいと声を上げる。
私たちの息がぴったりだったのが面白かったのか
隣に座っていたおじさま達に、いい飲みっぷりだねと
笑われてしまった。
「ええですね〜。
ビールも焼き鳥も美味しいし、みーんな楽しそうに笑ってて。
俺むっちゃ楽しいです!」
『あはは、私も楽しいよ。
子どものときも、大人になっても
何だか特別な夜って感じがしてわくわくするし』
寿三郎は私の答えを聞いて満足気に笑った。
それに、こんなに楽しい時間を
好きな人と一緒にいられて楽しくないわけがない。
これは、まだ言えない本音だけれども。
寿三郎は顔がほんのり赤くなっている。
お酒にそんなに強くはなかったはずだから
もしかしたら少し酔ってきたのかもしれないなと
思っていたら
彼の視線が何かを追った。
見れば、浴衣を着た綺麗な女の人だった。
あ、彼もやっぱり異性が気になるんだなって思ったら
胸が締め付けられて少し苦しくなる。
今日の私の格好は飲んで食べて遊ぶのがコンセプトだから
動きやすい服装でパンツスタイルだし足元もスニーカー。
浴衣はNGかなと勝手に思ったのだけど
やっぱり気になる相手とのお出かけなのだから
もうちょっとおしゃれすればよかった。
寿三郎が、目を追うくらいに。
「どないしました?酔ってもーた?」
『えっ!あ、ううん。なんでもないの…』
顔に出てしまっていたのか
寿三郎が心配そうな顔をして私を見ていた。
とっさになんでもないと答えたものの
彼はしきりに私の方を気にしている。
『その……もうちょっと
格好に気を遣えばよかったなと…』
「えぇ?」
『動きやすさ重視で来ちゃったからさ』
「何言うてますのん?
千波ちゃん俺が食べ歩きしましょって言うたから
それに合わせてくれたんとちゃいまっか?」
『そうなんだけど…寿三郎、さっき浴衣の人目で追ってたから』
言ってしまってから、しまった、と思った。
こんなこと言ったらヤキモチを妬いているかのようだし
意識していることが、バレてしまう。
そう一人で焦っていたら
寿三郎が目の前で手を左右に振って
ちゃいまっせ!と否定した。
「確かに見てたんやけど、その…。
あの人が着てはった浴衣
千波ちゃんが着たらむっちゃ似合うやろうなって…。
いや、千波ちゃんどないな格好でも
可愛いし綺麗なんやけど
そう思って目で追ってただけで…」
寿三郎の言葉を聞いて固まる。
彼が考えていたのは、私のことなんだと思うと
嬉しくて、恥ずかしくて、身体が一気に熱を帯びる。
「うは、俺今恥ずかしいこと言うてもうたわ…
お酒の力やね…って、千波ちゃん、顔真っ赤でっせ?」
『…誰のせいよ』
「生ビール?」
『ばか』
「千波ちゃん。
お酒の力借りて言いたいことあるんですけど」
『なに?』
そこまで言うと、寿三郎は手にしていたビールを
一気に全部飲み干した。
「来年こそ、浴衣着て
俺と一緒に夏祭り行ってほしいんです。もちろん、…彼女として」
真っ赤になった顔は可愛らしいけど
寿三郎の目は真剣で、冗談ではないことはわかる。
お酒の力とは言っているけれど
流石にビール一杯では酔わないはずだ。
『それって、来年からで良いの…?』
「へ?」
『彼女として、は…来年からじゃないとダメ?』
「だ、ダメじゃない…!え、てことは…!」
『私もお酒の力を借りるけど…好きだよ。
寿三郎が、好き!』
言い終わると、花火の音がどこからか聞こえてきた。
座る場所が悪かったのか、チラッとしか見えない。
今年は浴衣も着られなくて
花火も見られなかったけど
来年の楽しみにとっておこうかと思う。
来年も、その先も、きっと目の前で
満面の笑みを浮かべている彼氏が隣にいてくれるのだから。
(あの、素面んときに
もっかい仕切り直ししてもええですやろか…?)
(え?そんなに酔ってたの?)
(いや、正直緊張してて全く酔ってないですけど…。
こういうのは、ちゃんとしたいですやん)
(私たちらしくて良いかなとも思ったけど…)
(あ、そっか。思い出上書きするんも勿体ないやんけ。
あれはあれで、俺も良い思い出になったから…
あ!せや!プロポーズはもっとちゃんとしやるから!)
(え!?展開早すぎない!?)
(早すぎひんよ〜。考えて言うてますもん。
せやから考えとってね)
熱気に溢れた神社の鳥居の前で彼を待っていたら
人混みの中からひょっこり頭が抜きん出た彼が
私を見つけて大きく手を振った。
「千波ちゃん!待たせてもーたよね?すんません!」
『ううん。いま来たところだから気にしないで』
寿三郎は私を待たせたことを気にしているのか
何度もごめん、と謝る。
ちょっとしたことでも素直に謝ったり
気遣ってくれたりして優しさが垣間見えて嬉しいから
楽しみすぎて本当はかなり前から来ていたことは
内緒にしておこうかと思う。
「人多いからはぐれんようにせんとね」
『寿三郎は目立つから大丈夫だよ』
「そらそうやね!ほんなら、そろそろ行きまっせ!」
今日は、寿三郎とふたりで
地元の神社で行われる夏祭りに遊びに来た。
目的は屋台の食べ歩きだ。
寿三郎が先輩たちとビアガーデンに行った話や
先輩が蔵開きにいった話とかを聞いていたら
ふたりして外で飲んだりしたいねって話になって
そうだ、お祭りに行こう!となったのだ。
「何食べます?
いくつか食べ物買って、ビールとか飲みたいですよね」
『そうだね!
やっぱり焼き鳥は外せないから焼き鳥と…
ソース系もいいよね』
「たこ焼きと、お好み焼き、焼きそば・・・
うっは~、どれもええですね!」
屋台を覗きながらお腹すいたとふたりでお腹を抱えて笑い
結局どれにするか決められなかったので
寿三郎は大人買いしやる!と言ってはりきって屋台に並んだ。
手に持てないじゃん、という私のツッコミで
泣く泣くたこ焼きだけになったのだけど
ちょっとしたことでも
彼と一緒にいると一喜一憂共有できて、全てが楽しい。
「焼きそばと、お好み焼きは第2ラウンドやね」
『第3ラウンドは何にする?』
「はし巻きってのもありましたよ!
割り箸にお好み焼き巻いてあるみたいなやつでっせ」
『結局粉ものにソースじゃん』
「あ、ホンマやね」
この人の、明るい笑顔が好きで
笑ってばかりの時間がすごく幸せに感じる。
『あっちに座れそうな場所があったからそこで食べる?』
「せやね!千波ちゃん先に座りんせーね。
俺ビール買ってきます」
お願い、っていう前に彼は走ってビールを買いに行った。
ものの数分で、寿三郎はプラスチックのカップに入った
生ビールを持ってきた。
「へいお待ち!」
『わ!生ビールだ!缶だと思ってた!最高!』
「へへっ、ほなかんぱーい!」
同時に飲んで、同時に美味しいと声を上げる。
私たちの息がぴったりだったのが面白かったのか
隣に座っていたおじさま達に、いい飲みっぷりだねと
笑われてしまった。
「ええですね〜。
ビールも焼き鳥も美味しいし、みーんな楽しそうに笑ってて。
俺むっちゃ楽しいです!」
『あはは、私も楽しいよ。
子どものときも、大人になっても
何だか特別な夜って感じがしてわくわくするし』
寿三郎は私の答えを聞いて満足気に笑った。
それに、こんなに楽しい時間を
好きな人と一緒にいられて楽しくないわけがない。
これは、まだ言えない本音だけれども。
寿三郎は顔がほんのり赤くなっている。
お酒にそんなに強くはなかったはずだから
もしかしたら少し酔ってきたのかもしれないなと
思っていたら
彼の視線が何かを追った。
見れば、浴衣を着た綺麗な女の人だった。
あ、彼もやっぱり異性が気になるんだなって思ったら
胸が締め付けられて少し苦しくなる。
今日の私の格好は飲んで食べて遊ぶのがコンセプトだから
動きやすい服装でパンツスタイルだし足元もスニーカー。
浴衣はNGかなと勝手に思ったのだけど
やっぱり気になる相手とのお出かけなのだから
もうちょっとおしゃれすればよかった。
寿三郎が、目を追うくらいに。
「どないしました?酔ってもーた?」
『えっ!あ、ううん。なんでもないの…』
顔に出てしまっていたのか
寿三郎が心配そうな顔をして私を見ていた。
とっさになんでもないと答えたものの
彼はしきりに私の方を気にしている。
『その……もうちょっと
格好に気を遣えばよかったなと…』
「えぇ?」
『動きやすさ重視で来ちゃったからさ』
「何言うてますのん?
千波ちゃん俺が食べ歩きしましょって言うたから
それに合わせてくれたんとちゃいまっか?」
『そうなんだけど…寿三郎、さっき浴衣の人目で追ってたから』
言ってしまってから、しまった、と思った。
こんなこと言ったらヤキモチを妬いているかのようだし
意識していることが、バレてしまう。
そう一人で焦っていたら
寿三郎が目の前で手を左右に振って
ちゃいまっせ!と否定した。
「確かに見てたんやけど、その…。
あの人が着てはった浴衣
千波ちゃんが着たらむっちゃ似合うやろうなって…。
いや、千波ちゃんどないな格好でも
可愛いし綺麗なんやけど
そう思って目で追ってただけで…」
寿三郎の言葉を聞いて固まる。
彼が考えていたのは、私のことなんだと思うと
嬉しくて、恥ずかしくて、身体が一気に熱を帯びる。
「うは、俺今恥ずかしいこと言うてもうたわ…
お酒の力やね…って、千波ちゃん、顔真っ赤でっせ?」
『…誰のせいよ』
「生ビール?」
『ばか』
「千波ちゃん。
お酒の力借りて言いたいことあるんですけど」
『なに?』
そこまで言うと、寿三郎は手にしていたビールを
一気に全部飲み干した。
「来年こそ、浴衣着て
俺と一緒に夏祭り行ってほしいんです。もちろん、…彼女として」
真っ赤になった顔は可愛らしいけど
寿三郎の目は真剣で、冗談ではないことはわかる。
お酒の力とは言っているけれど
流石にビール一杯では酔わないはずだ。
『それって、来年からで良いの…?』
「へ?」
『彼女として、は…来年からじゃないとダメ?』
「だ、ダメじゃない…!え、てことは…!」
『私もお酒の力を借りるけど…好きだよ。
寿三郎が、好き!』
言い終わると、花火の音がどこからか聞こえてきた。
座る場所が悪かったのか、チラッとしか見えない。
今年は浴衣も着られなくて
花火も見られなかったけど
来年の楽しみにとっておこうかと思う。
来年も、その先も、きっと目の前で
満面の笑みを浮かべている彼氏が隣にいてくれるのだから。
(あの、素面んときに
もっかい仕切り直ししてもええですやろか…?)
(え?そんなに酔ってたの?)
(いや、正直緊張してて全く酔ってないですけど…。
こういうのは、ちゃんとしたいですやん)
(私たちらしくて良いかなとも思ったけど…)
(あ、そっか。思い出上書きするんも勿体ないやんけ。
あれはあれで、俺も良い思い出になったから…
あ!せや!プロポーズはもっとちゃんとしやるから!)
(え!?展開早すぎない!?)
(早すぎひんよ〜。考えて言うてますもん。
せやから考えとってね)