あなたとの一杯を
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『月光くん、お団子出来たよ』
「ああ、縁側に運ぼう」
『鴨居に頭ぶつけないでね〜』
「大丈夫だ。もう慣れた」
月光くんと同棲しだして早1年。
最初の頃は、この古い趣のある家の鴨居に
彼は何度も頭をぶつけていた。
2mをも超える身長の彼にとって
この家の天井は低すぎるのだけど
二人の住まいを探している時に
何故かふたりとも、この古い家が気に入ったのだ。
中でもお気に入りは、庭と縁側。
季節によって色んな顔を見せてくれるこの庭は
私達にとって癒しのひとつ。
『こういうのって、準備するのも楽しいね』
「そうだな。あとは何を手伝えば良い?」
『あとはお酒を持っていくだけだから大丈夫だよ』
そう伝えると月光くんは冷蔵庫から
冷えた酒瓶を持って行ってくれた。
今日はお団子を作ってお酒を準備して
ふたりでお月見をするのだ。
本当は去年したかったのだけど
まだ引っ越ししたばかりで出来ず
月光くんが少し落ち込んでいたことを思い出す。
あまり感情を出さない彼が落ち込むなんて
珍しいことだったから
今年は実現出来て良かった。
『そういえば何のお酒を買ったの?』
「スパークリングの日本酒だ。これならお前も飲めるだろう」
『そういうのがあるんだね。ありがとう』
私はあまり飲めないし、正直なところ
そこまでお酒は好きではない。
月光くんも普段あまりお酒は飲まないから
がっつり日本酒じゃないほうが私達には合いそうで
彼らしいチョイスに思わずほっこりとした。
「酒をつぐ。グラスを」
『あ!ダメダメ!私がしたい!』
「?そうか。なら頼もう」
月光くんからお酒を奪い、お酌をする。
実はこういうのに、憧れていたのだ。
本当はお猪口に徳利が様になるんだろうけど
いつかもうちょっとお酒が飲めるようになったら
一式そろえて、月光くんに和服を着せて
またリベンジしよう。
「「乾杯」」
カチン、とグラスを合わせると
月夜に反射してキラリと炭酸が光る。
どんな味なんだろうと、恐る恐る口にしてみると
優しい甘みがして日本酒よりクドくなくて美味しい。
「飲みやすいな」
『うん!これなら飲めるよ!美味しい』
「そうか。良かった」
月光くんが、静かに笑った。
優しい気持ちになれる彼の笑顔が好きで
じっと見つめていると
少し照れたのかふいっと顔を背けられてしまう。
こういう風に笑うことも
照れたら顔を背けることも
付き合いだして知った彼の好きなところ。
ああ、幸せだなって思っていたら
月光くんはすくっと立ち上がって
また冷蔵庫に何か取りに行った。
持ってきたのは小さめのペットボトル。
『それは?』
「遠野が送ってきた」
『遠野さんって、確かテニスの?』
「そうだ。りんご酒を作ったらしい」
『手作りで?すごいね!』
月光くん曰く、彼女さんと一緒に手作りしたらしく
それをわざわざ当時のテニス仲間達に
送ってくれたとのこと。
ペットボトルの表には“おち!”って書かれていて
全員に名前入りで送ってくれたのかなと思うと
面白い人なのかなと思った。
それを伝えたら月光くんは微妙な顔をしていたけど。
「炭酸で割って飲むと良いそうだ」
『じゃあ作ってくるよ』
遠野さんのりんご酒を受け取り台所へと向かう。
炭酸水を探していたら
月光くんが後ろに立っていた。
『どうしたの?待ってて良いのに』
「……俺が、一緒にしたいんだ。
お前との時間を大切にしたい」
ただお酒を作るだけなのに
月光くんは私を何かから守るかのように、傍にいてくれる。
ちょっとしたことでも
大切にしてくれていることが感じられて
その優しさがすごく嬉しい。
りんご酒の炭酸割りを作ったら
またふたりで乾杯した。
遠野さんのお酒は売り物みたいに美味しくて
私達は買ってきたお酒より
そっちばかりを飲んでしまった。
「今年は、月見酒が出来て良かった」
『去年、出来なくてショック受けてたよね。
何か思い入れでもあったの?』
何気なく聞いたのだけど
月光くんは少し黙って、言葉を考えているようだった。
「思い入れがあるわけではない。
…この家で四季を味わい
穏やかな時間を千波と過ごしたいと思った。
そう考えたときに、真っ先に一緒に月を眺めたいと思ったんだ」
彼は言い終わると同時に
私の肩を引き寄せて、自分の方へと寄り掛からせた。
飲み慣れないアルコールのせいか
いつも体温の低い彼の身体が熱く感じる。
『月光くん、私幸せ』
「あぁ。俺もだ」
飲みきれなかったグラスの水面には
月の姿がゆらりと浮かぶ。
儚げで、だけど凛としている今日の月は
まるで月光くんそのもののように感じたのだった。
(私たちもお酒作ってみない?梅酒とか)
(そうだな。来年作ってみよう)
(出来たら遠野さんにお返ししようね)
(フッ…そうだな)
(蕎麦も作ってみたいね)
(なら蕎麦打ちセットを買ってこよう)
(やりたいこと、たくさんあるね)
(ふたりで全部叶えていこう)
(うん!)
「ああ、縁側に運ぼう」
『鴨居に頭ぶつけないでね〜』
「大丈夫だ。もう慣れた」
月光くんと同棲しだして早1年。
最初の頃は、この古い趣のある家の鴨居に
彼は何度も頭をぶつけていた。
2mをも超える身長の彼にとって
この家の天井は低すぎるのだけど
二人の住まいを探している時に
何故かふたりとも、この古い家が気に入ったのだ。
中でもお気に入りは、庭と縁側。
季節によって色んな顔を見せてくれるこの庭は
私達にとって癒しのひとつ。
『こういうのって、準備するのも楽しいね』
「そうだな。あとは何を手伝えば良い?」
『あとはお酒を持っていくだけだから大丈夫だよ』
そう伝えると月光くんは冷蔵庫から
冷えた酒瓶を持って行ってくれた。
今日はお団子を作ってお酒を準備して
ふたりでお月見をするのだ。
本当は去年したかったのだけど
まだ引っ越ししたばかりで出来ず
月光くんが少し落ち込んでいたことを思い出す。
あまり感情を出さない彼が落ち込むなんて
珍しいことだったから
今年は実現出来て良かった。
『そういえば何のお酒を買ったの?』
「スパークリングの日本酒だ。これならお前も飲めるだろう」
『そういうのがあるんだね。ありがとう』
私はあまり飲めないし、正直なところ
そこまでお酒は好きではない。
月光くんも普段あまりお酒は飲まないから
がっつり日本酒じゃないほうが私達には合いそうで
彼らしいチョイスに思わずほっこりとした。
「酒をつぐ。グラスを」
『あ!ダメダメ!私がしたい!』
「?そうか。なら頼もう」
月光くんからお酒を奪い、お酌をする。
実はこういうのに、憧れていたのだ。
本当はお猪口に徳利が様になるんだろうけど
いつかもうちょっとお酒が飲めるようになったら
一式そろえて、月光くんに和服を着せて
またリベンジしよう。
「「乾杯」」
カチン、とグラスを合わせると
月夜に反射してキラリと炭酸が光る。
どんな味なんだろうと、恐る恐る口にしてみると
優しい甘みがして日本酒よりクドくなくて美味しい。
「飲みやすいな」
『うん!これなら飲めるよ!美味しい』
「そうか。良かった」
月光くんが、静かに笑った。
優しい気持ちになれる彼の笑顔が好きで
じっと見つめていると
少し照れたのかふいっと顔を背けられてしまう。
こういう風に笑うことも
照れたら顔を背けることも
付き合いだして知った彼の好きなところ。
ああ、幸せだなって思っていたら
月光くんはすくっと立ち上がって
また冷蔵庫に何か取りに行った。
持ってきたのは小さめのペットボトル。
『それは?』
「遠野が送ってきた」
『遠野さんって、確かテニスの?』
「そうだ。りんご酒を作ったらしい」
『手作りで?すごいね!』
月光くん曰く、彼女さんと一緒に手作りしたらしく
それをわざわざ当時のテニス仲間達に
送ってくれたとのこと。
ペットボトルの表には“おち!”って書かれていて
全員に名前入りで送ってくれたのかなと思うと
面白い人なのかなと思った。
それを伝えたら月光くんは微妙な顔をしていたけど。
「炭酸で割って飲むと良いそうだ」
『じゃあ作ってくるよ』
遠野さんのりんご酒を受け取り台所へと向かう。
炭酸水を探していたら
月光くんが後ろに立っていた。
『どうしたの?待ってて良いのに』
「……俺が、一緒にしたいんだ。
お前との時間を大切にしたい」
ただお酒を作るだけなのに
月光くんは私を何かから守るかのように、傍にいてくれる。
ちょっとしたことでも
大切にしてくれていることが感じられて
その優しさがすごく嬉しい。
りんご酒の炭酸割りを作ったら
またふたりで乾杯した。
遠野さんのお酒は売り物みたいに美味しくて
私達は買ってきたお酒より
そっちばかりを飲んでしまった。
「今年は、月見酒が出来て良かった」
『去年、出来なくてショック受けてたよね。
何か思い入れでもあったの?』
何気なく聞いたのだけど
月光くんは少し黙って、言葉を考えているようだった。
「思い入れがあるわけではない。
…この家で四季を味わい
穏やかな時間を千波と過ごしたいと思った。
そう考えたときに、真っ先に一緒に月を眺めたいと思ったんだ」
彼は言い終わると同時に
私の肩を引き寄せて、自分の方へと寄り掛からせた。
飲み慣れないアルコールのせいか
いつも体温の低い彼の身体が熱く感じる。
『月光くん、私幸せ』
「あぁ。俺もだ」
飲みきれなかったグラスの水面には
月の姿がゆらりと浮かぶ。
儚げで、だけど凛としている今日の月は
まるで月光くんそのもののように感じたのだった。
(私たちもお酒作ってみない?梅酒とか)
(そうだな。来年作ってみよう)
(出来たら遠野さんにお返ししようね)
(フッ…そうだな)
(蕎麦も作ってみたいね)
(なら蕎麦打ちセットを買ってこよう)
(やりたいこと、たくさんあるね)
(ふたりで全部叶えていこう)
(うん!)