あなたとの一杯を
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『失礼します…』
「お邪魔します、で良いですよ」
今日は細心の注意を幾重にも払って
育斗くんとのお家デートの日。
有名人だからスキャンダルはご法度。
本人はバレても良いなんて言ってるけど
そんなわけにはいかないから
私は変装して、存在感を消して
この豪邸と言えるマンションへとやってきた。
やってきたものの…玄関先で既に場違い感を感じて
思わず失礼しますって言ってしまった。
『だって、こんな家入ったことないんだもん…』
「個人的にはもう少し広いほうが良いんですがね。
立地だけで選んでしまいました」
『こんだけ豪華なのに!?』
普通だと嫌味に聞こえる発言も
育斗くんが言うと嫌味に聞こえないから不思議だ。
案内されて部屋に入るとフワッと彼の香水の香りがして
今更だけどドキドキしてきた。
『あ、あの、これ良かったら…。
育斗くんここのパン好きだったよね?』
緊張を誤魔化すように買ってきたパンを渡す。
うちの近所にあるパン屋さんで
育斗くんはえらくここのバケットを気に入っていたのだ。
「ありがとうございます。明日の朝食で頂きましょう。
千波さんの好きなジャムも用意してありますから」
明日の朝食を育斗くんと一緒に、と想像して
また色々意識してしまった。
でもどうしよう、すごく嬉しい。
育斗くんはそんな私を見て微笑み
ちょっと準備があるから
リビングのソファーに座るようにと案内してくれた。
ソワソワしながら座っていたら
彼はワイングラスとボトルを持って私の隣に座った。
『赤ワイン?』
「ええ。最近ハマってしまいまして。飲めますか?」
『多分飲める、かな?実は飲んだことなくて』
「そうでしたか。
初めてのワインを一緒に飲めるなんて光栄です」
ニコッと笑う育斗くんは眩しくて
ワインを注ぐ姿も所作も綺麗で見惚れてしまう。
「では、乾杯」
『乾杯…』
カチン、とグラスを合わせて一口飲む。
ふわっと香るぶどうの香りが一気に広がり
少し感じる渋さも上品で美味しい。
庶民舌の私でも、良いお酒だとわかる。
『育斗くん、これ飲みやすくて美味しいね!
なんか、食べながら飲むにはもったいないような
ワインだけを楽しみたくなる味っていうか…』
「えぇ、そうなんです!
わかって頂けて嬉しいです」
育斗くんはどうやらかなりのワイン好きだったらしく
私の反応が良かったからか
ワインセラーがあることとか
ワインに関することを色々と教えてくれた。
男の子って、得意なことを話すとき
嬉々として話すけれどそれは育斗くんも同じだったようで
新しい一面が見られて少しほっとした。
そんなワイン談笑している最中
彼のプライベートスマホが鳴った。
『電話みたいだけど、出て良いよ?』
「そ、そうですねえ…」
一瞬嫌そうな、不機嫌そうな顔を見せて
スマホ画面とにらめっこをしたあと
育斗くんは電話に出た。
“出るのが遅せぇんだよ、君島ぁっ!”
「ちょっと声のボリューム落として頂けませんか、遠野くん」
甲高い声が聞こえ
一瞬女の人かと思ったけど、どうやら噂に聞く
元ダブルスペアの遠野さんのようだ。
育斗くんは普段見ないような
嫌そうな顔をして、あしらうように返事をしているけど
ちゃんと話を聞いていて
時折笑顔を見せたりツッコんだりしている。
いいなあ、育斗くんにあんな顔をさせるなんて。
「はいはい、もう良いですか?
今大切な人と素敵な一時を過ごしているんですから
これ以上邪魔しないでください…え?
あなたのことじゃないですよ!何言ってるんですか!」
あ、ヤバい。笑う。
遠野さんって天然なのかな。
育斗くんは電話を切るとため息をついて
すみませんと私に頭を下げてきた。
『ううん!それよりちょっと聞こえてきたんだけど…
今日他の人と約束だったんじゃ…?』
「ええ、まあ。
ですが元々スケジュール的に厳しかったので
断っていたんですよ」
確かに夕方まで仕事だったから
スケジュール的に難しかったのかもしれないけど
夜から参加もできたのではないだろうか。
久しぶりの旧友達との時間を
私が奪ってしまったのでは。
「心配することはないですよ。
彼らとはいつでも会えますし
…気兼ねなく会える友人達ですから」
育斗くんはあまり昔の話をしないのだけど
今日はさっきの電話のおかげか
テニス合宿時代の話をしてくれた。
楽しかったことも、悔しかったことも
遠野さんにひどいことをした話も。
「酔ってますかね。こんな話をするなんて」
『もっと酔ってもっと聞かせてよ。
私育斗くんの色んな話が聞きたい。
昔の姿を見られなかったから、話だけでも聞きたいよ』
「では私にも、千波さんの昔の話を聞かせて下さい。
この先の貴女との未来は作れても、過去は作れませんから」
サラリと言われた未来のことに胸が高鳴る。
これは、酔ってるせいにはしてほしくない。
『酔ってるの?』
「ええ。貴女に酔っています」
『ふふっ、なにそれ』
こてん、と彼の肩に頭を預ける。
そんなにたくさん飲んだわけではないのに
胸も、身体も、全部が熱くて、くらくらする。
私のほうこそ、あなたに酔ったに違いないと囁いたら
溺れてしまうほどの熱いキスが、降り注いだのだった。
(今日は色んな表情の育斗くんが見られて良かった!)
(そんなに違いましたか?
まあ家で過ごしますからいつもよりかはリラックスして…)
(ワインの話するときの得意気な顔とか
遠野さんと話すときなんて百面相だったし
ツッコミ入れるのもレアだったよね)
(え…)
(お家デート出来て良かった!)
(ちょっと思惑と違うのですが…)
「お邪魔します、で良いですよ」
今日は細心の注意を幾重にも払って
育斗くんとのお家デートの日。
有名人だからスキャンダルはご法度。
本人はバレても良いなんて言ってるけど
そんなわけにはいかないから
私は変装して、存在感を消して
この豪邸と言えるマンションへとやってきた。
やってきたものの…玄関先で既に場違い感を感じて
思わず失礼しますって言ってしまった。
『だって、こんな家入ったことないんだもん…』
「個人的にはもう少し広いほうが良いんですがね。
立地だけで選んでしまいました」
『こんだけ豪華なのに!?』
普通だと嫌味に聞こえる発言も
育斗くんが言うと嫌味に聞こえないから不思議だ。
案内されて部屋に入るとフワッと彼の香水の香りがして
今更だけどドキドキしてきた。
『あ、あの、これ良かったら…。
育斗くんここのパン好きだったよね?』
緊張を誤魔化すように買ってきたパンを渡す。
うちの近所にあるパン屋さんで
育斗くんはえらくここのバケットを気に入っていたのだ。
「ありがとうございます。明日の朝食で頂きましょう。
千波さんの好きなジャムも用意してありますから」
明日の朝食を育斗くんと一緒に、と想像して
また色々意識してしまった。
でもどうしよう、すごく嬉しい。
育斗くんはそんな私を見て微笑み
ちょっと準備があるから
リビングのソファーに座るようにと案内してくれた。
ソワソワしながら座っていたら
彼はワイングラスとボトルを持って私の隣に座った。
『赤ワイン?』
「ええ。最近ハマってしまいまして。飲めますか?」
『多分飲める、かな?実は飲んだことなくて』
「そうでしたか。
初めてのワインを一緒に飲めるなんて光栄です」
ニコッと笑う育斗くんは眩しくて
ワインを注ぐ姿も所作も綺麗で見惚れてしまう。
「では、乾杯」
『乾杯…』
カチン、とグラスを合わせて一口飲む。
ふわっと香るぶどうの香りが一気に広がり
少し感じる渋さも上品で美味しい。
庶民舌の私でも、良いお酒だとわかる。
『育斗くん、これ飲みやすくて美味しいね!
なんか、食べながら飲むにはもったいないような
ワインだけを楽しみたくなる味っていうか…』
「えぇ、そうなんです!
わかって頂けて嬉しいです」
育斗くんはどうやらかなりのワイン好きだったらしく
私の反応が良かったからか
ワインセラーがあることとか
ワインに関することを色々と教えてくれた。
男の子って、得意なことを話すとき
嬉々として話すけれどそれは育斗くんも同じだったようで
新しい一面が見られて少しほっとした。
そんなワイン談笑している最中
彼のプライベートスマホが鳴った。
『電話みたいだけど、出て良いよ?』
「そ、そうですねえ…」
一瞬嫌そうな、不機嫌そうな顔を見せて
スマホ画面とにらめっこをしたあと
育斗くんは電話に出た。
“出るのが遅せぇんだよ、君島ぁっ!”
「ちょっと声のボリューム落として頂けませんか、遠野くん」
甲高い声が聞こえ
一瞬女の人かと思ったけど、どうやら噂に聞く
元ダブルスペアの遠野さんのようだ。
育斗くんは普段見ないような
嫌そうな顔をして、あしらうように返事をしているけど
ちゃんと話を聞いていて
時折笑顔を見せたりツッコんだりしている。
いいなあ、育斗くんにあんな顔をさせるなんて。
「はいはい、もう良いですか?
今大切な人と素敵な一時を過ごしているんですから
これ以上邪魔しないでください…え?
あなたのことじゃないですよ!何言ってるんですか!」
あ、ヤバい。笑う。
遠野さんって天然なのかな。
育斗くんは電話を切るとため息をついて
すみませんと私に頭を下げてきた。
『ううん!それよりちょっと聞こえてきたんだけど…
今日他の人と約束だったんじゃ…?』
「ええ、まあ。
ですが元々スケジュール的に厳しかったので
断っていたんですよ」
確かに夕方まで仕事だったから
スケジュール的に難しかったのかもしれないけど
夜から参加もできたのではないだろうか。
久しぶりの旧友達との時間を
私が奪ってしまったのでは。
「心配することはないですよ。
彼らとはいつでも会えますし
…気兼ねなく会える友人達ですから」
育斗くんはあまり昔の話をしないのだけど
今日はさっきの電話のおかげか
テニス合宿時代の話をしてくれた。
楽しかったことも、悔しかったことも
遠野さんにひどいことをした話も。
「酔ってますかね。こんな話をするなんて」
『もっと酔ってもっと聞かせてよ。
私育斗くんの色んな話が聞きたい。
昔の姿を見られなかったから、話だけでも聞きたいよ』
「では私にも、千波さんの昔の話を聞かせて下さい。
この先の貴女との未来は作れても、過去は作れませんから」
サラリと言われた未来のことに胸が高鳴る。
これは、酔ってるせいにはしてほしくない。
『酔ってるの?』
「ええ。貴女に酔っています」
『ふふっ、なにそれ』
こてん、と彼の肩に頭を預ける。
そんなにたくさん飲んだわけではないのに
胸も、身体も、全部が熱くて、くらくらする。
私のほうこそ、あなたに酔ったに違いないと囁いたら
溺れてしまうほどの熱いキスが、降り注いだのだった。
(今日は色んな表情の育斗くんが見られて良かった!)
(そんなに違いましたか?
まあ家で過ごしますからいつもよりかはリラックスして…)
(ワインの話するときの得意気な顔とか
遠野さんと話すときなんて百面相だったし
ツッコミ入れるのもレアだったよね)
(え…)
(お家デート出来て良かった!)
(ちょっと思惑と違うのですが…)