あなたとの一杯を
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会社の飲み会のあと
静かに過ごしたくて、一人で飲む場所を探していた。
滅多にしない一人飲みも
今は良い感じの酔いが後押ししてくれている。
ふと、目にしたお店の前で足を止める。
店内はよく見えないが
壁に小さなステンドグラスが飾られていて
その青さに目を奪われた。
ここ、入ってみたい。
ドアを少しだけ開けて覗くと
どうやらそこはバーのようだった。
バーカウンターには初老の男性がいて
私と目が合うと、どうぞ、と手で案内してくれた。
店内には数人の客がいて
皆静かにおしゃべりしつつカクテルを楽しむ様は
なんだか神聖な場に来たような感じがした。
恐る恐るカウンターに座りメニューを開くも
聞いたことない名前のカクテルばかりで
どれが良いのかわからない。
ここは正直に初めて飲むって言ったほうが、と
マスターに話しかけようとした瞬間
隣に誰かが座ってきた。
「おすすめ、教えたろか?」
『えっ、あの…って、種ヶ島さん!?』
「ちゃい☆」
ナンパかと思ったら、なんと同じ会社の先輩である
種ヶ島さんだった。
昨年まで同じ部署だったのだけど
今年から異動になって話したのは半年振りくらいだ。
「見たことある後ろ姿やなって思ったら
千波さんやったなんてすごい偶然やなあ」
『ほんとですね。
さっきまで、会社の飲み会だったんです。
でも一人でゆっくり飲みたくなって…
なんとなくここのお店の前通ったら
入ってみたくなって入ったんですが…』
「その様子やとバー自体初めてなんとちゃう?」
『おっしゃる通りで…』
もう少し砕けた感じのところなら
友達数人と来たことがあったけど
ここまで本格的なお店は初めてで
私がここにいて良いのか、場違いなのではないかと
不安になってくる。
「どんな感じのお酒が好きなん?
甘いのとか、爽やかなのとか…あ、お酒は強いん?」
『どちらかというと、柑橘系が好きです。
お酒には弱くはないかと思います』
「ん〜…ならチャイナブルーとかどないやろ?」
『チャイナブルー?』
私達の会話を聞いたマスターが軽く説明をしてくれた。
チャイナブルーとはライチベースのお酒で
グレープフルーツで割っているので
口当たりが爽やかなお酒らしい。
聞いているだけで、美味しそうだなって思って
私は種ヶ島さんのオススメ通り注文することにした。
『種ヶ島さんは何にするんですか?』
マスターとのやり取りを見るからに
恐らく常連なのだろうから
何か決まった物を頼むのかもしれない
そう思っていたら、彼は私にメニューを差し出してきた。
「選んでくれへん?
俺何でも飲めるからどれ選んでも大丈夫やで」
『え!?私が選ぶんですか?』
そういえばこの人はいきなりあっち向いてホイをしてきたり
遊び心のある人だったと思い出す。
とはいえ、カクテルのことなんて無知だから
何をベースにしたお酒なのかもわからない。
ウォッカとかジンとか聞き覚えのあるものもあるが
ここは思い切って、全く聞いたことないやつを選んでみよう。
『じゃあこの、アルファベットの“XYZ”を』
「…わぉ。そう来たか〜…ええで。それにしよか」
種ヶ島さんの反応はこの選択が正解なのかどうか読めず
何かミスったのかなと不安になる。
アルコール度数めっちゃ高いとか、飲みにくいとか
心配してソワソワしてしまったけど
何やらマスターはご機嫌そうで
とりあえずお酒が出てくるのを待つ。
軽やかなシェイカーの音が心地よく
お酒を注ぐ手つきも所作も綺麗で思わず見惚れる。
バーの魅力は、カクテルを味わうだけではないんだなって
今初めてわかった。
「お待たせ致しました」
スッと、出されたチャイナブルーは
ロンググラスに注がれ鮮やかな水色で美しい。
XYZはカクテルグラスに薄っすらと白く輝いていて
種ヶ島さんの髪のようだと思った。
「じゃあ、乾杯」
『あ、はい。乾杯』
ゆっくりと一口飲んでみて驚いた。
説明してもらった通りに爽やかなライチの味が広がり
今までサワーとか飲んでいたせいか
深みのある味わいにこんなお酒があるのかと
少し感動してしまった。
「気に入った?」
『はい!とっても美味しいです…!』
良かったわ、と微笑み
グラスを傾ける種ヶ島さんは色っぽくて
お酒も、お店の雰囲気も、この空間が全て
この人のためにあるように思えるほどよく似合っている。
「ん?俺に見惚れてもーた?」
『えっ!?あ、すみません…見すぎでした。
色々と似合うなって思って』
「…ハハッ!けっこう天然ちゃんねんなあ。
あ、そや。これ味見してみる?」
『良いんですか?』
グラスを受け取り一口飲んでぎょっとした。
種ヶ島さんは軽く飲んでたように見えたけど
喉の奥がカッと熱くなるほど、アルコールが強い。
『これ…!こんなに強いお酒だったんですね…!
すみません、だからちょっと微妙な反応だったんですね…』
「ん?ちゃうちゃう。カクテルにもな花言葉みたいな
カクテル言葉っていうんがあるんやで。
それでまさかXYZ選ばれるとは思わんで」
『えっと、どんな意味だったんですか?』
そんなの全く知らなかったから
先輩に失礼なものを選んだのでは?とヒヤヒヤしたいたら
種ヶ島さんが膝に置いていた私の手に
自分の手を重ねて身を寄せた。
「“永遠にあなたのもの”」
耳元で言われた言葉に、ゾクッとして
どうしようもないほど、胸が早る。
「知ってて言うたん?」
『……ど、どうでしょうね』
「悪い子やなあ…。この俺を試すなんてええ度胸してるわ」
本当は知らなかったくせに
誤魔化すように答えれば
種ヶ島さんは楽しそうに笑った。
色っぽい仕草から、子どもみたいな笑顔。
この人にハマったらきっと抜け出せなくなるって
頭ではわかっているのに
どんどん惹かれていく自分の気持ちを
私は止められそうになかった。
(チャイナブルーには、どんな意味があるんですか?)
(“自分自身を宝物だと思える自信家”)
(えぇ!?それ、私がそう見えてるって…)
(ちゃうちゃう。
色んなことに、もっと自信持ったらええのにって意味やで。
仕事においてもいつもしっかりやってるんやから
胸張って堂々としいや)
(種ヶ島さんって、女性関係はちょっと危ういですが
仕事に関してはけっこうちゃんとしてますよね)
(全部ちゃんとしとるって!)
静かに過ごしたくて、一人で飲む場所を探していた。
滅多にしない一人飲みも
今は良い感じの酔いが後押ししてくれている。
ふと、目にしたお店の前で足を止める。
店内はよく見えないが
壁に小さなステンドグラスが飾られていて
その青さに目を奪われた。
ここ、入ってみたい。
ドアを少しだけ開けて覗くと
どうやらそこはバーのようだった。
バーカウンターには初老の男性がいて
私と目が合うと、どうぞ、と手で案内してくれた。
店内には数人の客がいて
皆静かにおしゃべりしつつカクテルを楽しむ様は
なんだか神聖な場に来たような感じがした。
恐る恐るカウンターに座りメニューを開くも
聞いたことない名前のカクテルばかりで
どれが良いのかわからない。
ここは正直に初めて飲むって言ったほうが、と
マスターに話しかけようとした瞬間
隣に誰かが座ってきた。
「おすすめ、教えたろか?」
『えっ、あの…って、種ヶ島さん!?』
「ちゃい☆」
ナンパかと思ったら、なんと同じ会社の先輩である
種ヶ島さんだった。
昨年まで同じ部署だったのだけど
今年から異動になって話したのは半年振りくらいだ。
「見たことある後ろ姿やなって思ったら
千波さんやったなんてすごい偶然やなあ」
『ほんとですね。
さっきまで、会社の飲み会だったんです。
でも一人でゆっくり飲みたくなって…
なんとなくここのお店の前通ったら
入ってみたくなって入ったんですが…』
「その様子やとバー自体初めてなんとちゃう?」
『おっしゃる通りで…』
もう少し砕けた感じのところなら
友達数人と来たことがあったけど
ここまで本格的なお店は初めてで
私がここにいて良いのか、場違いなのではないかと
不安になってくる。
「どんな感じのお酒が好きなん?
甘いのとか、爽やかなのとか…あ、お酒は強いん?」
『どちらかというと、柑橘系が好きです。
お酒には弱くはないかと思います』
「ん〜…ならチャイナブルーとかどないやろ?」
『チャイナブルー?』
私達の会話を聞いたマスターが軽く説明をしてくれた。
チャイナブルーとはライチベースのお酒で
グレープフルーツで割っているので
口当たりが爽やかなお酒らしい。
聞いているだけで、美味しそうだなって思って
私は種ヶ島さんのオススメ通り注文することにした。
『種ヶ島さんは何にするんですか?』
マスターとのやり取りを見るからに
恐らく常連なのだろうから
何か決まった物を頼むのかもしれない
そう思っていたら、彼は私にメニューを差し出してきた。
「選んでくれへん?
俺何でも飲めるからどれ選んでも大丈夫やで」
『え!?私が選ぶんですか?』
そういえばこの人はいきなりあっち向いてホイをしてきたり
遊び心のある人だったと思い出す。
とはいえ、カクテルのことなんて無知だから
何をベースにしたお酒なのかもわからない。
ウォッカとかジンとか聞き覚えのあるものもあるが
ここは思い切って、全く聞いたことないやつを選んでみよう。
『じゃあこの、アルファベットの“XYZ”を』
「…わぉ。そう来たか〜…ええで。それにしよか」
種ヶ島さんの反応はこの選択が正解なのかどうか読めず
何かミスったのかなと不安になる。
アルコール度数めっちゃ高いとか、飲みにくいとか
心配してソワソワしてしまったけど
何やらマスターはご機嫌そうで
とりあえずお酒が出てくるのを待つ。
軽やかなシェイカーの音が心地よく
お酒を注ぐ手つきも所作も綺麗で思わず見惚れる。
バーの魅力は、カクテルを味わうだけではないんだなって
今初めてわかった。
「お待たせ致しました」
スッと、出されたチャイナブルーは
ロンググラスに注がれ鮮やかな水色で美しい。
XYZはカクテルグラスに薄っすらと白く輝いていて
種ヶ島さんの髪のようだと思った。
「じゃあ、乾杯」
『あ、はい。乾杯』
ゆっくりと一口飲んでみて驚いた。
説明してもらった通りに爽やかなライチの味が広がり
今までサワーとか飲んでいたせいか
深みのある味わいにこんなお酒があるのかと
少し感動してしまった。
「気に入った?」
『はい!とっても美味しいです…!』
良かったわ、と微笑み
グラスを傾ける種ヶ島さんは色っぽくて
お酒も、お店の雰囲気も、この空間が全て
この人のためにあるように思えるほどよく似合っている。
「ん?俺に見惚れてもーた?」
『えっ!?あ、すみません…見すぎでした。
色々と似合うなって思って』
「…ハハッ!けっこう天然ちゃんねんなあ。
あ、そや。これ味見してみる?」
『良いんですか?』
グラスを受け取り一口飲んでぎょっとした。
種ヶ島さんは軽く飲んでたように見えたけど
喉の奥がカッと熱くなるほど、アルコールが強い。
『これ…!こんなに強いお酒だったんですね…!
すみません、だからちょっと微妙な反応だったんですね…』
「ん?ちゃうちゃう。カクテルにもな花言葉みたいな
カクテル言葉っていうんがあるんやで。
それでまさかXYZ選ばれるとは思わんで」
『えっと、どんな意味だったんですか?』
そんなの全く知らなかったから
先輩に失礼なものを選んだのでは?とヒヤヒヤしたいたら
種ヶ島さんが膝に置いていた私の手に
自分の手を重ねて身を寄せた。
「“永遠にあなたのもの”」
耳元で言われた言葉に、ゾクッとして
どうしようもないほど、胸が早る。
「知ってて言うたん?」
『……ど、どうでしょうね』
「悪い子やなあ…。この俺を試すなんてええ度胸してるわ」
本当は知らなかったくせに
誤魔化すように答えれば
種ヶ島さんは楽しそうに笑った。
色っぽい仕草から、子どもみたいな笑顔。
この人にハマったらきっと抜け出せなくなるって
頭ではわかっているのに
どんどん惹かれていく自分の気持ちを
私は止められそうになかった。
(チャイナブルーには、どんな意味があるんですか?)
(“自分自身を宝物だと思える自信家”)
(えぇ!?それ、私がそう見えてるって…)
(ちゃうちゃう。
色んなことに、もっと自信持ったらええのにって意味やで。
仕事においてもいつもしっかりやってるんやから
胸張って堂々としいや)
(種ヶ島さんって、女性関係はちょっと危ういですが
仕事に関してはけっこうちゃんとしてますよね)
(全部ちゃんとしとるって!)