残業と戦う君へ
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“21時に迎えに行きます“
大好きな彼が会社まで迎えに来てくれる。
それだけを糧に、私はこの膨大な業務をなんとか片付ける。
一緒にペアで仕事をしていた子が寿退社してしまい
後任もなかなか決まらないので
2人分の仕事をすることになった。
おめでとう、という気持ちはあるのだけど
寿退社すると決まった後
彼女はやる気をなくしたのか休みがちになったし
引き継ぎもちゃんとできていないまま辞めてしまったので
本当に毎日慌ただしく、残業続きだ。
引き継ぎ書くらい作ってから辞めてよ、と
文句を言いたいところだけど
独身の僻みと言われてしまいそうで我慢するしかない。
ふぅ、と一息ついてトイレに駆け込みメイクを直す。
綺麗が12時間続く、という触れ込みを見て
買ったファンデーションももう崩れている。
『ひどい顔…』
鏡に写る姿は、化粧はよれて、クマも隠せていないし
艶も張りもなくとにかく疲れた顔をしている。
髪だってボサボサで、こんなんじゃ彼に呆れられてしまう。
それでも、今は自分を取り繕う余裕なく
とりあえず“今から会社出るね“と連絡して
私はトイレをあとにした。
会社から出ると、正面玄関には黒いスポーツカー。
周囲を確認して、素早く車に乗り込んだ。
『遅くなって、ごめんなさい』
「いえ。麻衣さんも遅くまでお疲れ様です」
マスクで顔を隠していてもオーラのある育斗さんは
キラキラして見える。
低いエンジン音が響いて、車はゆっくりと走り出した。
『明日はせっかくのお休みなのに、良かったんですか?』
「ええ。お休みだからこそ、あなたと一緒にいたいんですよ」
『でも、一人でゆっくりしたかったんじゃ…』
「二人で、ゆっくりしたかったんです」
甘い言葉に心が溶かされて
顔も、涙腺も緩んでしまいそうになる。
『育斗さん、仕事大変なのに…』
芸能人として、以前よりもドラマ、CM、バラエティーと
引っ張りだこの彼は多忙極まりない。
今回の休みだって、久しぶりのはず。
それなのに私に合わせてくれて
今日だって迎えに来てくれて。
…私なんて、ただのOLなのに。
くたびれたスーツを着て、よれよれの化粧で
お世辞にも綺麗とは言えない容姿なのに。
こんな高級車も、 優しくて完璧な芸能人の彼氏も
私には不釣り合いすぎて悲しくなってくる。
「今日は笑ってはくれないのですね。
…私は麻衣さんの笑顔を見るために
生きているようなものですよ」
『…君島抒情詩?』
「ええ。あなたのためだけの抒情詩です」
そう言うと、育斗さんはマスクを外して
ゆっくりと微笑んでくれた。
『だ、だめですって、マスク外しちゃ…!
私なんかとスキャンダルとかなったら大変…!』
「麻衣さんとなら、スキャンダルも大歓迎です。
ですが、私なんかと、という言葉は聞き捨てなりませんねぇ」
『だって…住む世界が違いすぎて私は不釣り合いだよ。
今日だって、私の残業のために待っててくれて…
OLの仕事なんてたかが知れてる。
育斗さんの方が大変なのに…』
マイナスな発言すぎて、我ながら面倒な女だと思うけど
彼の隣にいたら、自分の存在がちっぽけでならない。
静かに涙が流れ
泣いているのがバレないように窓の外を眺めていたら
育斗さんは無言で近くのコインパーキングに車を停めた。
「内容は違えど、仕事に対する姿勢は
私も麻衣さんも同じです。
芸能人だろうが、スポーツ選手だろうが
会社員だろうが関係ありませんよ。
自分の仕事を、否定しないでください」
ポロポロと涙を溢す私を見て
育斗さんは、私の手をそっと握ってくれた。
優しい体温が、じわっと胸に広がっていく。
「それと、住む世界が違うというのはきっと
テレビの中の“君島育斗“だけです。
本来の私は、今、目の前にいます。
可愛い彼女を溺愛して止まない、ただの男ですよ」
テレビの中とは違う
優しくてあったかい笑顔を向けてくれる彼に
大好き、と告げれば
それに答えるように手の甲にキスを落としてくれた。
彼の真似をしてキスのお返しをすれば
予想外に照れてくれたので私の涙は
すぐに渇いてしまったのだった。
大好きな彼が会社まで迎えに来てくれる。
それだけを糧に、私はこの膨大な業務をなんとか片付ける。
一緒にペアで仕事をしていた子が寿退社してしまい
後任もなかなか決まらないので
2人分の仕事をすることになった。
おめでとう、という気持ちはあるのだけど
寿退社すると決まった後
彼女はやる気をなくしたのか休みがちになったし
引き継ぎもちゃんとできていないまま辞めてしまったので
本当に毎日慌ただしく、残業続きだ。
引き継ぎ書くらい作ってから辞めてよ、と
文句を言いたいところだけど
独身の僻みと言われてしまいそうで我慢するしかない。
ふぅ、と一息ついてトイレに駆け込みメイクを直す。
綺麗が12時間続く、という触れ込みを見て
買ったファンデーションももう崩れている。
『ひどい顔…』
鏡に写る姿は、化粧はよれて、クマも隠せていないし
艶も張りもなくとにかく疲れた顔をしている。
髪だってボサボサで、こんなんじゃ彼に呆れられてしまう。
それでも、今は自分を取り繕う余裕なく
とりあえず“今から会社出るね“と連絡して
私はトイレをあとにした。
会社から出ると、正面玄関には黒いスポーツカー。
周囲を確認して、素早く車に乗り込んだ。
『遅くなって、ごめんなさい』
「いえ。麻衣さんも遅くまでお疲れ様です」
マスクで顔を隠していてもオーラのある育斗さんは
キラキラして見える。
低いエンジン音が響いて、車はゆっくりと走り出した。
『明日はせっかくのお休みなのに、良かったんですか?』
「ええ。お休みだからこそ、あなたと一緒にいたいんですよ」
『でも、一人でゆっくりしたかったんじゃ…』
「二人で、ゆっくりしたかったんです」
甘い言葉に心が溶かされて
顔も、涙腺も緩んでしまいそうになる。
『育斗さん、仕事大変なのに…』
芸能人として、以前よりもドラマ、CM、バラエティーと
引っ張りだこの彼は多忙極まりない。
今回の休みだって、久しぶりのはず。
それなのに私に合わせてくれて
今日だって迎えに来てくれて。
…私なんて、ただのOLなのに。
くたびれたスーツを着て、よれよれの化粧で
お世辞にも綺麗とは言えない容姿なのに。
こんな高級車も、 優しくて完璧な芸能人の彼氏も
私には不釣り合いすぎて悲しくなってくる。
「今日は笑ってはくれないのですね。
…私は麻衣さんの笑顔を見るために
生きているようなものですよ」
『…君島抒情詩?』
「ええ。あなたのためだけの抒情詩です」
そう言うと、育斗さんはマスクを外して
ゆっくりと微笑んでくれた。
『だ、だめですって、マスク外しちゃ…!
私なんかとスキャンダルとかなったら大変…!』
「麻衣さんとなら、スキャンダルも大歓迎です。
ですが、私なんかと、という言葉は聞き捨てなりませんねぇ」
『だって…住む世界が違いすぎて私は不釣り合いだよ。
今日だって、私の残業のために待っててくれて…
OLの仕事なんてたかが知れてる。
育斗さんの方が大変なのに…』
マイナスな発言すぎて、我ながら面倒な女だと思うけど
彼の隣にいたら、自分の存在がちっぽけでならない。
静かに涙が流れ
泣いているのがバレないように窓の外を眺めていたら
育斗さんは無言で近くのコインパーキングに車を停めた。
「内容は違えど、仕事に対する姿勢は
私も麻衣さんも同じです。
芸能人だろうが、スポーツ選手だろうが
会社員だろうが関係ありませんよ。
自分の仕事を、否定しないでください」
ポロポロと涙を溢す私を見て
育斗さんは、私の手をそっと握ってくれた。
優しい体温が、じわっと胸に広がっていく。
「それと、住む世界が違うというのはきっと
テレビの中の“君島育斗“だけです。
本来の私は、今、目の前にいます。
可愛い彼女を溺愛して止まない、ただの男ですよ」
テレビの中とは違う
優しくてあったかい笑顔を向けてくれる彼に
大好き、と告げれば
それに答えるように手の甲にキスを落としてくれた。
彼の真似をしてキスのお返しをすれば
予想外に照れてくれたので私の涙は
すぐに渇いてしまったのだった。