『では、よろしくお願いします』

「こちらこそ、よろしくお願いします」




大きな見た目と反して
物腰の柔らかい雰囲気のデュークくんは
丁寧に頭を下げてくれた。
彼の取材は何も心配がいらなさそうだ。
平等院くんと種ヶ島くんの取材のギャップに
もう既に少しだけ疲れてしまっていたので
今回、デュークくんの取材には安心感がある。




『出生を聞くのは失礼かもしれないのですが
お名前からしてハーフ…なんですか？』

「日本人顔ですが、フランスと日本のハーフなのですよ。
逆に妹はフランス人にしか見えないのですがね」

『妹さんがいらっしゃるんですね。私も妹がいるんですよ』



妹の年齢が同じだということもあって
そこからは妹の話で盛り上がった。
話しやすくて穏やかな彼からは
“破壊神”のイメージはつかず
ただの妹思いの優しい兄にしか見えない。



「お頭について行くようになったのも
妹が…クロエがきっかけです」



彼のプロフィールを見た時に
どうしてフランスからわざわざ日本のチームへ？と
疑問に思っていたのだけど
話してくれた出来事を聞くと、納得した。



「お頭には恩義がありましてな。
一見厳しいお方ですが、義を持った真っ直ぐな方です」



No.3の立場からすると
自分より上の人間には勝ちたい、追いつきたいという気持ちが
せり出してきそうなものだけど
デュークくんからはそれを感じられない。
それだけデュークくんが本当に
平等院くんを尊敬しているということなのだろう。
こういう関係は、すごく素敵だと思う。




『先程少しだけ話した程度ですが
平等院くんの厳しさの中には
優しさが感じられましたから
デュークくんが彼を慕う気持ちはわかります』

「…この話をすると、大抵の方は
あのお頭が？と驚かれるのですが
貴女はそうではないのですな」

『外側だけで判断しない。
色んな角度で見て、感じたことを信じる…
そういう風に思っていますので』



あれ、なんで自分のことを語っているのだ？と
笑うと、デュークくんは柔らかく微笑んでくれた。
なんだか照れくさくなってきた。



『ちょ、ちょっと質問の系統を変えましょうか。
そうですね…趣味は料理だと聞いていますが
得意料理はなんですか？』

「これと言ってはないのですが
魚の３枚おろしが特技ではありますなあ」

『え！すごい…！私できませんよ…』

「コツさえ掴めば簡単にできます。
今度教えてさしあげましょう」



冗談で言ったのだろうけど
デュークくんと一緒に魚を捌くのを想像してくすりと笑う。
きっと彼のことだから
優しく笑顔で丁寧に教えてくれるのだろう。





(えらく楽しんでるみたいだな)
(ええ。楽しい取材でしたよ)
(取材なんて面倒くせぇと思ってたんだが)
(彼女は非常に聡明な方で、お話も楽しかったですよ)
(へぇ〜。ただの女子大生ってわけじゃなさそうだな)
(ですなぁ。
それにとても魅力的で可愛らしいお方でもありますよ)
(ちょっとからかってみるのもアリか)
(失礼のないよう、お願いしますね)
(へいへい。わかったよ)