読書の秋
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『ふぅ……読み終わった…』
消灯時間の近づく夜
ずっと読みたかった長編小説を読み終えた。
内容は暗くて、悲しくて、ハッピーエンドじゃないお話で
読み終えたあとの疲労感はけっこうなものだった。
秋口になると、なんだかものさみしく感じてしまって
私はいつもこの時期になると
雰囲気につられてか、悲しく暗いお話が読みたくなる。
眠りにつく前に読む話ではないなあと
読み返した内容を思い出しながら自嘲し
図書室から出て自室へ戻る。
「あれ、詩さんどこにおったん?」
部屋に入ろうとした瞬間
後ろから元気な声がして振り返れば
1つ歳下の毛利くんが立っていた。
『お風呂上がってからずっと図書室にいたよ。
もしかして探してた?』
「図書室も覗いたんですけどわからへんかったわ。
先輩らとトランプしやるから
詩さんもどないかなって思って探してました」
『そうだったんだ。わざわざごめんね』
図書室の隅っこにいたから
きっと気づかなかったんだろう。
ひっそりと、片隅にいたから。
「もしかして最近ずっと図書室いてはります?」
『うん、そうだね。ここには読みたい本がたくさんあるから』
「そーなんや。ホンマ読書家ですよね。
なんの本読んでるんでっか?」
まあ聞いてもわからへんか、と苦笑いする彼を見て
自然と口元が緩む。
彼との会話はいつも嫌味がなくて
相手の心にすっと入ってくるようなそんな感じがする。
コミュニケーション能力が高いって
こういう人を言うんだろうな。
自分が毛利くんみたいに人と話すのが得意ではないから
羨ましいなと思うと同時に尊敬してしまう。
『暗くて、悲しいお話…かな』
言ってからしまったと思った。
恋愛小説とか、純文学とか言えば良かったのに
好き好んでこんな暗い話を読んでるとか
どれだけ陰湿な奴だと思われないか。
いや、優しい彼はそんなこと思わないかもしれないけど
明るい性格の彼に
引かれてしまうのではないか、と思ってヒヤヒヤする。
チラリと毛利くんを見れば
彼は面食らったような顔をしていた。
あぁ、やっぱり言わなければよかった。
「それで暗い顔してはったんやね。
良かった、なんかあったんやろかって心配やったんです」
『え…心配…?』
「ここんとこ、なんや元気ないなあって気になってて。
悩み事とかあるんやったら
力になりたいなって思うてたんよ」
『……引かれたのかと、思った…』
「え?引かれるってなんですの?」
きょとん、とする毛利くんに
自分が暗いお話ばかり好んでいるから
引かれたのではないかと思ったと伝えると
彼は顔の前でブンブンと手を振って
引いたりするわけないですやん!と言った。
「人の好きなもん否定したりせぇへんよ。
…せやけど、悲しくて暗い話に引きずられてません?
そこが心配なんでっせ」
毛利くんは眉を下げて
本当に心配そうな顔をした。
どうして彼はそこまで私のことを心配してくれるんだろう。
『どうして、そんなに心配してくれるの?』
「詩さん、けっこう人の気持ちに
引きずられるタイプやんけ。
誰かが注意されてたら自分が注意されとるみたいな顔してはるし。
そんなんやから、つい気になって心配になるんよ」
毛利くんは私の頭にそっと手を置いて頭を撫でた。
ふっ、と向けられた優しい微笑みはいつもと違って
突然の温もりに驚いて呼吸が止まる。
どうしよう、どこを見たら良いかわからない。
「あっ!?す、すんませんっ!つ、つい…!」
毛利くんは勢いよく私の頭から手を離し
何度もすんません、と頭を下げた。
『い、いや、いいよ。その、驚いたけど、嫌じゃなかったから』
嫌じゃなかったから、と答えて
自分の言った言葉に固まる。
確かに嫌じゃなかったけど
この言い方は誤解を招かないだろうか。
そもそも嫌じゃないどころか
嬉しいと感じたのは…と思って毛利くんを見たら
彼は顔を真っ赤にしていて
それを見て私もだんだん顔に熱を感じてきた。
しばらく2人とも言葉を無くし
お互い顔をそむけて熱を冷ます。
「あ、あの、明日も図書室行くんでっか?」
『えっ?あ、そ、そうだね。行くと思う』
「…俺も行ってもええですやろか?」
『え?』
口をきゅっと、結んだ毛利くんの耳はまだ赤くて
視線は熱っぽい。
「邪魔にならんよう過ごします。
大人しく静かにしとくんで、そばに、おってもええですか?」
『私は良いけど…』
「悲しくて暗い話を読んでも、気持ち引きずられへんように
詩さんが悲しい顔しやらんように
そばにいたいんです」
とくん、といつもより一段と自分の鼓動が
高く、大きく感じた。
毛利くんの笑顔を見ながら
私は明日から、恋愛小説でも読んでみようかな
なんて考えたのだった。
(毛利くんは何読むの?)
(旅行雑誌でも読もかなて)
(せっかくだし、何か小説読んでみたら?)
(読んだら寝やるから…)
(ふふっ…寝顔が見られるチャンスね)
(だめでっせ!そんなマヌケなとこ見せられぇへんよ!
詩さんにはカッコええとこしか
見えたくないんよお…)
(レムときカッコいいよ?あの時も寝てるでしょう?)
(えっ!ホンマに!?って、レムと居眠りはちゃうんですー!)
消灯時間の近づく夜
ずっと読みたかった長編小説を読み終えた。
内容は暗くて、悲しくて、ハッピーエンドじゃないお話で
読み終えたあとの疲労感はけっこうなものだった。
秋口になると、なんだかものさみしく感じてしまって
私はいつもこの時期になると
雰囲気につられてか、悲しく暗いお話が読みたくなる。
眠りにつく前に読む話ではないなあと
読み返した内容を思い出しながら自嘲し
図書室から出て自室へ戻る。
「あれ、詩さんどこにおったん?」
部屋に入ろうとした瞬間
後ろから元気な声がして振り返れば
1つ歳下の毛利くんが立っていた。
『お風呂上がってからずっと図書室にいたよ。
もしかして探してた?』
「図書室も覗いたんですけどわからへんかったわ。
先輩らとトランプしやるから
詩さんもどないかなって思って探してました」
『そうだったんだ。わざわざごめんね』
図書室の隅っこにいたから
きっと気づかなかったんだろう。
ひっそりと、片隅にいたから。
「もしかして最近ずっと図書室いてはります?」
『うん、そうだね。ここには読みたい本がたくさんあるから』
「そーなんや。ホンマ読書家ですよね。
なんの本読んでるんでっか?」
まあ聞いてもわからへんか、と苦笑いする彼を見て
自然と口元が緩む。
彼との会話はいつも嫌味がなくて
相手の心にすっと入ってくるようなそんな感じがする。
コミュニケーション能力が高いって
こういう人を言うんだろうな。
自分が毛利くんみたいに人と話すのが得意ではないから
羨ましいなと思うと同時に尊敬してしまう。
『暗くて、悲しいお話…かな』
言ってからしまったと思った。
恋愛小説とか、純文学とか言えば良かったのに
好き好んでこんな暗い話を読んでるとか
どれだけ陰湿な奴だと思われないか。
いや、優しい彼はそんなこと思わないかもしれないけど
明るい性格の彼に
引かれてしまうのではないか、と思ってヒヤヒヤする。
チラリと毛利くんを見れば
彼は面食らったような顔をしていた。
あぁ、やっぱり言わなければよかった。
「それで暗い顔してはったんやね。
良かった、なんかあったんやろかって心配やったんです」
『え…心配…?』
「ここんとこ、なんや元気ないなあって気になってて。
悩み事とかあるんやったら
力になりたいなって思うてたんよ」
『……引かれたのかと、思った…』
「え?引かれるってなんですの?」
きょとん、とする毛利くんに
自分が暗いお話ばかり好んでいるから
引かれたのではないかと思ったと伝えると
彼は顔の前でブンブンと手を振って
引いたりするわけないですやん!と言った。
「人の好きなもん否定したりせぇへんよ。
…せやけど、悲しくて暗い話に引きずられてません?
そこが心配なんでっせ」
毛利くんは眉を下げて
本当に心配そうな顔をした。
どうして彼はそこまで私のことを心配してくれるんだろう。
『どうして、そんなに心配してくれるの?』
「詩さん、けっこう人の気持ちに
引きずられるタイプやんけ。
誰かが注意されてたら自分が注意されとるみたいな顔してはるし。
そんなんやから、つい気になって心配になるんよ」
毛利くんは私の頭にそっと手を置いて頭を撫でた。
ふっ、と向けられた優しい微笑みはいつもと違って
突然の温もりに驚いて呼吸が止まる。
どうしよう、どこを見たら良いかわからない。
「あっ!?す、すんませんっ!つ、つい…!」
毛利くんは勢いよく私の頭から手を離し
何度もすんません、と頭を下げた。
『い、いや、いいよ。その、驚いたけど、嫌じゃなかったから』
嫌じゃなかったから、と答えて
自分の言った言葉に固まる。
確かに嫌じゃなかったけど
この言い方は誤解を招かないだろうか。
そもそも嫌じゃないどころか
嬉しいと感じたのは…と思って毛利くんを見たら
彼は顔を真っ赤にしていて
それを見て私もだんだん顔に熱を感じてきた。
しばらく2人とも言葉を無くし
お互い顔をそむけて熱を冷ます。
「あ、あの、明日も図書室行くんでっか?」
『えっ?あ、そ、そうだね。行くと思う』
「…俺も行ってもええですやろか?」
『え?』
口をきゅっと、結んだ毛利くんの耳はまだ赤くて
視線は熱っぽい。
「邪魔にならんよう過ごします。
大人しく静かにしとくんで、そばに、おってもええですか?」
『私は良いけど…』
「悲しくて暗い話を読んでも、気持ち引きずられへんように
詩さんが悲しい顔しやらんように
そばにいたいんです」
とくん、といつもより一段と自分の鼓動が
高く、大きく感じた。
毛利くんの笑顔を見ながら
私は明日から、恋愛小説でも読んでみようかな
なんて考えたのだった。
(毛利くんは何読むの?)
(旅行雑誌でも読もかなて)
(せっかくだし、何か小説読んでみたら?)
(読んだら寝やるから…)
(ふふっ…寝顔が見られるチャンスね)
(だめでっせ!そんなマヌケなとこ見せられぇへんよ!
詩さんにはカッコええとこしか
見えたくないんよお…)
(レムときカッコいいよ?あの時も寝てるでしょう?)
(えっ!ホンマに!?って、レムと居眠りはちゃうんですー!)