お菓子のように、甘い君へ
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皆簡単にやってのけるけど
どうしてそんなに上手に出来るのだろうか。
昼休み、友達が作った完璧なお菓子たちを見て気後れし
鞄に入れた手作りのマフィンを
結局出すことは出来ずにいた。
ごめん、失敗しちゃった、と笑って誤魔化したら
皆笑ってくれたから良かったけど
一人だけやってないって思われないか心配になる。
一週間前、誰が言い始めたのか忘れたけど
お菓子作って持ってこようよ、と言い出して
それぞれクッキー、プリン、マフィン、ガトーショコラを
作って来ることになっていた。
一人はお菓子作りが得意な子だから
絶対に美味しいやつ作ってくるだろうなって思ってたけど
他のみんなは初心者だからって言ってたから油断した。
初心者って、嘘じゃない?っていうくらい見た目も完璧。
可愛らしいラッピングに包まれたお菓子たちは
どれも美味しそう。
しかも食べてみたら、絶対お菓子作り初心者じゃないじゃん!
っていうくらい美味しかったから
私のマフィンは、鞄の底に沈んだままでよかったのだ。
『はぁ〜』
放課後の教室で帰る準備をしつつ
今日の出来事を思い返していた。
今度は成功させるね!と言ったものの
なんか微妙な空気になってしまって
失敗した不格好なマフィンを見せて
笑いに持っていくべきだったか?と反省する。
そもそも、なんで皆あんなに器用にできるのだろう。
もとより私は不器用だけど
今回ここまで自分が下手くそだとは思っていなかった分
けっこうショックだ。
「ん?直子さんやんけ」
『あ、毛利くん』
教室を出たところで同じ委員会の後輩である
毛利くんと出くわした。
今日は部活はないのか、お馴染みのテニスバッグは持っていない。
「今から帰りはるん?」
『うん。毛利くんは?部活ないの?』
「今日は休みなんでっせ。
ちょうどよかったわ、一緒に帰りません?
直子さんに家庭菜園の話したいなあって思ってたんです」
『うん。聞きたい。一緒に帰ろう』
毛利くんは家庭菜園が趣味。
私はガーデニングが趣味。
委員会のときにひょんなことからお互いの趣味を知って
育てるものは違えど親しいものを感じて
意気投合したのだった。
それから、たまにこうやって
今育てているものの話や肥料の話に花を咲かせている。
「そんで、今度は大っきいトマトに挑戦したいんやけど
けっこう手間がかかるんですよ〜。
水やりも、日光も、剪定も…他のと違って
色々気ぃ遣わなアカンくて」
『でもその手間が楽しいよね。
その分うまくできたときとか、すっごく嬉しいし』
「そう!むっちゃ嬉しいですよね!
やっぱトマトにしよかや〜…って、直子さんなんか
お菓子持ってはります?ええ匂いしやるんやけど」
くんくんと鼻を鳴らす毛利くんはさながら大型犬のようで
可愛い顔して彼はお腹すいてもーた、と
甘えるような視線を向けてきた。
『いや、これはダメ!失敗作!
本当に人様にあげられるものじゃないから』
「てことはやっぱり持ってはるんやね!
しかも手作りとか食べたいです!頼んます!」
『ダメダメ!絶対美味しくないもの!』
「直子さ〜ん」
すがりつく彼をあしらうも
毛利くんはなかなかしつこくて引き下がってくれない。
押し問答を繰り返し、私はついに根負けしてしまった。
『言っておくけど、見た目からもうダメなヤツだから。
笑わないで…いや、笑ってくれていいからね!』
もういいや、とやけくそ気味で鞄から出して
毛利くんに見せた。
「おぉ!マフィンでっか?」
『良くわかったね…』
私の作ったマフィンは
焦げてるし、うまく膨らんでいないかと思えば
カップから溢れるみたいにもなっていてて
とにかく、美味しくなさそう。
「食べてもええです?」
『な、何言ってるの!?』
「も〜らいっ」
ひょい、と私の手からマフィンを取って
毛利くんは私に届かないような位置で袋を開けて
まさかのまさか、彼はパクっと一口食べてしまった。
『ちょっ!お腹壊したら大変…!ぺってしなさいっ』
「大丈夫ですって。確かに焦げっぽい味はしやるけど
ちゃんと美味しいでっせ。食べんせーね」
『そんなことないでしょ。だってこんなに…むぐっ』
毛利くんは慌てる私の口にマフィンを運び食べさせた。
食べる前も食べた瞬間も、ふわっと香る焦げた香り。
苦いじゃん、と思いかけたけど
なんの偶然かプリンのカラメルのような感じで 思っていたよりも苦くない。
あれ?しかもなんかちょっと美味しいかもしれない。
「ね!美味しいですって!」
『き、奇跡的ね…』
「確かに見た目は悪いですけど
食べてみらんとわからへんもんです。
にしてもなんでお菓子作りしたんです?」
はっきりと見た目が悪いと言われてグサッと来たけど
毛利くんの言葉には嫌味がなくて
すんなり受け入れられる。まあ事実だし。
『友達同士で作って持ってこようってなったんだけど
出すのが恥ずかしくなっちゃって。
だから捨てようと思って…』
「なんや、友達か…良かった…」
『え?』
「い、いや!なんでも…!
捨てられる前で良かったでっせ。
直子さんが作ったもん、食べられて嬉しいですやん」
100%美味しいってわけではないと思う。
それでも、今は彼のお世辞がすごく嬉しい。
『毛利くん、食べてくれてありがとう。
なんか、友達皆上手でね。
私下手くそなんだってちょっと悲しくなっちゃってたし
それに私だけ作ってないって変に思われないか
心配で・・・色々落ち込んでたの』
後輩の男の子に
愚痴のような不安のような
よくわからないどうでも良いようなことを言ってしまって
先輩としてどうなんだろうって思ったけど
不思議なことに彼には何でも話したくなってしまう。
「落ち込むようなことやないですよ。
普段の直子さん見てたら友達の人らだって
ただ失敗したんやなあって思いますって。
それに、お菓子作りは・・・・あ、せや。
ええこと思いついた。一緒に練習しません?
ほんで見た目も完璧なやつ作って、友達に持っていきましょ!」
『えっ?毛利くんお菓子作れるの?』
「お菓子作りはしたことあらへんのですけど
料理は割と得意な方でっせ。
それに俺の後輩にお菓子作り得意なやつおるんです。
コツとか教えてもろて一緒にしましょ」
思わぬ提案に驚いたけれど
毛利くんと一緒にお菓子作り、と想像してみて
きっと楽しいだろうなって思わず笑った。
『うん!じゃあお願いしようかな』
「はい!美味しいの作りまっせ!」
にかっと笑う笑顔は明るい太陽のようで
さっきまでのモヤモヤも落ち込んでいた気持ちも
どこかへ行ってしまった。
マフィンにリベンジしたら
お菓子のように甘くて優しい彼に
まず一番最初に食べてもらいたいなと思ったのだった。
(お菓子作りが得意な後輩って、家庭部の子・・・?)
(ちゃいます、テニス部でっせ)
(えっ、テニス部?)
(そいつもお菓子好きやし
弟とかに作ってあげたりしたりしてるらしいです)
(毛利くんとも、仲良いんだね・・・)
(前に差し入れでもらったことあったんやけど
ホンマ売りモンみたいでした!)
(そ、そうなんだ・・・)
(あんな兄ちゃんおったら自慢できるやろな~)
(ん?兄ちゃん??)
(弟思いの兄ちゃんでっせ。丸井ブン太って言うんやけど
ってどないしました?)
(な、なんでもない・・・)
」
どうしてそんなに上手に出来るのだろうか。
昼休み、友達が作った完璧なお菓子たちを見て気後れし
鞄に入れた手作りのマフィンを
結局出すことは出来ずにいた。
ごめん、失敗しちゃった、と笑って誤魔化したら
皆笑ってくれたから良かったけど
一人だけやってないって思われないか心配になる。
一週間前、誰が言い始めたのか忘れたけど
お菓子作って持ってこようよ、と言い出して
それぞれクッキー、プリン、マフィン、ガトーショコラを
作って来ることになっていた。
一人はお菓子作りが得意な子だから
絶対に美味しいやつ作ってくるだろうなって思ってたけど
他のみんなは初心者だからって言ってたから油断した。
初心者って、嘘じゃない?っていうくらい見た目も完璧。
可愛らしいラッピングに包まれたお菓子たちは
どれも美味しそう。
しかも食べてみたら、絶対お菓子作り初心者じゃないじゃん!
っていうくらい美味しかったから
私のマフィンは、鞄の底に沈んだままでよかったのだ。
『はぁ〜』
放課後の教室で帰る準備をしつつ
今日の出来事を思い返していた。
今度は成功させるね!と言ったものの
なんか微妙な空気になってしまって
失敗した不格好なマフィンを見せて
笑いに持っていくべきだったか?と反省する。
そもそも、なんで皆あんなに器用にできるのだろう。
もとより私は不器用だけど
今回ここまで自分が下手くそだとは思っていなかった分
けっこうショックだ。
「ん?直子さんやんけ」
『あ、毛利くん』
教室を出たところで同じ委員会の後輩である
毛利くんと出くわした。
今日は部活はないのか、お馴染みのテニスバッグは持っていない。
「今から帰りはるん?」
『うん。毛利くんは?部活ないの?』
「今日は休みなんでっせ。
ちょうどよかったわ、一緒に帰りません?
直子さんに家庭菜園の話したいなあって思ってたんです」
『うん。聞きたい。一緒に帰ろう』
毛利くんは家庭菜園が趣味。
私はガーデニングが趣味。
委員会のときにひょんなことからお互いの趣味を知って
育てるものは違えど親しいものを感じて
意気投合したのだった。
それから、たまにこうやって
今育てているものの話や肥料の話に花を咲かせている。
「そんで、今度は大っきいトマトに挑戦したいんやけど
けっこう手間がかかるんですよ〜。
水やりも、日光も、剪定も…他のと違って
色々気ぃ遣わなアカンくて」
『でもその手間が楽しいよね。
その分うまくできたときとか、すっごく嬉しいし』
「そう!むっちゃ嬉しいですよね!
やっぱトマトにしよかや〜…って、直子さんなんか
お菓子持ってはります?ええ匂いしやるんやけど」
くんくんと鼻を鳴らす毛利くんはさながら大型犬のようで
可愛い顔して彼はお腹すいてもーた、と
甘えるような視線を向けてきた。
『いや、これはダメ!失敗作!
本当に人様にあげられるものじゃないから』
「てことはやっぱり持ってはるんやね!
しかも手作りとか食べたいです!頼んます!」
『ダメダメ!絶対美味しくないもの!』
「直子さ〜ん」
すがりつく彼をあしらうも
毛利くんはなかなかしつこくて引き下がってくれない。
押し問答を繰り返し、私はついに根負けしてしまった。
『言っておくけど、見た目からもうダメなヤツだから。
笑わないで…いや、笑ってくれていいからね!』
もういいや、とやけくそ気味で鞄から出して
毛利くんに見せた。
「おぉ!マフィンでっか?」
『良くわかったね…』
私の作ったマフィンは
焦げてるし、うまく膨らんでいないかと思えば
カップから溢れるみたいにもなっていてて
とにかく、美味しくなさそう。
「食べてもええです?」
『な、何言ってるの!?』
「も〜らいっ」
ひょい、と私の手からマフィンを取って
毛利くんは私に届かないような位置で袋を開けて
まさかのまさか、彼はパクっと一口食べてしまった。
『ちょっ!お腹壊したら大変…!ぺってしなさいっ』
「大丈夫ですって。確かに焦げっぽい味はしやるけど
ちゃんと美味しいでっせ。食べんせーね」
『そんなことないでしょ。だってこんなに…むぐっ』
毛利くんは慌てる私の口にマフィンを運び食べさせた。
食べる前も食べた瞬間も、ふわっと香る焦げた香り。
苦いじゃん、と思いかけたけど
なんの偶然かプリンのカラメルのような感じで 思っていたよりも苦くない。
あれ?しかもなんかちょっと美味しいかもしれない。
「ね!美味しいですって!」
『き、奇跡的ね…』
「確かに見た目は悪いですけど
食べてみらんとわからへんもんです。
にしてもなんでお菓子作りしたんです?」
はっきりと見た目が悪いと言われてグサッと来たけど
毛利くんの言葉には嫌味がなくて
すんなり受け入れられる。まあ事実だし。
『友達同士で作って持ってこようってなったんだけど
出すのが恥ずかしくなっちゃって。
だから捨てようと思って…』
「なんや、友達か…良かった…」
『え?』
「い、いや!なんでも…!
捨てられる前で良かったでっせ。
直子さんが作ったもん、食べられて嬉しいですやん」
100%美味しいってわけではないと思う。
それでも、今は彼のお世辞がすごく嬉しい。
『毛利くん、食べてくれてありがとう。
なんか、友達皆上手でね。
私下手くそなんだってちょっと悲しくなっちゃってたし
それに私だけ作ってないって変に思われないか
心配で・・・色々落ち込んでたの』
後輩の男の子に
愚痴のような不安のような
よくわからないどうでも良いようなことを言ってしまって
先輩としてどうなんだろうって思ったけど
不思議なことに彼には何でも話したくなってしまう。
「落ち込むようなことやないですよ。
普段の直子さん見てたら友達の人らだって
ただ失敗したんやなあって思いますって。
それに、お菓子作りは・・・・あ、せや。
ええこと思いついた。一緒に練習しません?
ほんで見た目も完璧なやつ作って、友達に持っていきましょ!」
『えっ?毛利くんお菓子作れるの?』
「お菓子作りはしたことあらへんのですけど
料理は割と得意な方でっせ。
それに俺の後輩にお菓子作り得意なやつおるんです。
コツとか教えてもろて一緒にしましょ」
思わぬ提案に驚いたけれど
毛利くんと一緒にお菓子作り、と想像してみて
きっと楽しいだろうなって思わず笑った。
『うん!じゃあお願いしようかな』
「はい!美味しいの作りまっせ!」
にかっと笑う笑顔は明るい太陽のようで
さっきまでのモヤモヤも落ち込んでいた気持ちも
どこかへ行ってしまった。
マフィンにリベンジしたら
お菓子のように甘くて優しい彼に
まず一番最初に食べてもらいたいなと思ったのだった。
(お菓子作りが得意な後輩って、家庭部の子・・・?)
(ちゃいます、テニス部でっせ)
(えっ、テニス部?)
(そいつもお菓子好きやし
弟とかに作ってあげたりしたりしてるらしいです)
(毛利くんとも、仲良いんだね・・・)
(前に差し入れでもらったことあったんやけど
ホンマ売りモンみたいでした!)
(そ、そうなんだ・・・)
(あんな兄ちゃんおったら自慢できるやろな~)
(ん?兄ちゃん??)
(弟思いの兄ちゃんでっせ。丸井ブン太って言うんやけど
ってどないしました?)
(な、なんでもない・・・)
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