白檀の香り
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「ふわぁ〜」
起床時間になったものの
眠くて眠くて、たまらへん。
思わず出てもうたあくびを聞いて
同じ部屋の月光さんが動きを止めんさった。
「また眠れなかったのか?」
「月光さん、あくびしてすんません。
何や眠りが浅いっちゅうか、寝た感じがしやらんのです」
「最近続いているようだが、それは一度コーチに相談を…」
「いやいや!大丈夫でっせ!
そのうち寝れますって!ほら、準備して練習行きましょ!」
ここんところ、眠りが浅くて眠れへん日が続いてる。
原因は全くわからへんのやけど
やっぱり睡眠時間が足りひんのはきつい。
月光さんにも心配掛けてもうて申し訳ないし
集中力も散漫になりがちになってて
そろそろ練習にも支障をきたすレベル。
自分なりに色々試してみた。
ベタに羊を数えてみたり
寝る前に白湯飲んでみたり
夜スマホとかいじらんようにしてみたり
試せる範囲のことはやってみたものの効果はない。
ただ、最近気づいたことやけど
昼寝やったらけっこう眠れるみたいやから
休憩時間にちょっとだけ寝て
なんとか保ってるような感じ。
それでも、すぐに起きてもうて熟睡感はないから
身体はだるくてそろそろホンマに限界。
「あ〜……もう、なんでなんやろ…」
風呂上がり、部屋に戻りながら一人で呟く。
月光さんが心配しやるから
今日はあんまり一緒におらんように
風呂のタイミングもズラしたんやけど
一人になったらそれはそれで
あれこれ考えもうてアカンかったかもしれへん。
今日も眠れへんのかなって思ったら
眠るのが怖くなってくる。
なんでなんやろ、って言いながら
心の中でもしかしてって思ってることがある。
レム睡眠、俺のレム状態が
普段の睡眠を邪魔してるんやないかって。
調べたわけでもあらへんけど
関係ないとも言い切れん。
月光さんの言う通りコーチに相談したほうが
ええんやろうけど
レムが原因って言われたら
俺はどないすればええかわからへん。
『あれ?毛利くん、今日は一人なんだね』
「ん?あ、真矢ちゃん!」
ソファーのある休憩室の一画に
マネージャーで1つ歳上の真矢ちゃんがいた。
彼女は雑誌を読んでいたよう。
『って、また髪の毛乾かしてないでしょ?』
「すぐ乾くから大丈夫でっせ」
『だめ。風邪引いたら大変。こっち来て』
真矢ちゃんは俺をソファーに座らせると
持っていたタオルで俺の髪を乾かし始めた。
彼女の手付きは優しくて気持ちが良くて
触れられたことでさっきまで悩んでいたことが
すっと頭から消えていくような気がした。
「人にしてもらうん、気持ちええわ」
『乾かしてあげるのは良いけど
ちゃんと自分でしなさいね。今度からは有料制にするから』
「真矢ちゃんのケチ〜」
軽口を叩きながら
ふと、何かの香りがすることに気がついた。
なんやろ、花でもない食べ物でもない
でも嗅いだことのある香り。
優しくて、ほっとする香りに身体の力が
ふっと、抜けていくのがわかる。
『えっ?ちょ、毛利くん?』
遠くで、わぁ!と驚く声がした。
多分真矢ちゃんの声なのはわかったけど
どうにも意識が遠のいて
俺はそのまま瞼を閉じたのだった。
「ん…あ、あれ…?」
カーテンの隙間から朝の眩しい日差しを浴び
目を覚ますと自室のベッドにいた。
真矢ちゃんに髪を乾かしてもろてたとこまでは
覚えてるんやけどその後の記憶がない。
「起きたか」
「あ、月光さん!あの、俺…」
「昨日真矢に髪を乾かしてもらっている途中に
気絶するように眠ったそうだ」
月光さんに言われて思い出す。
そうや。真矢ちゃんが髪をタオルで
乾かしてくれているとき
ふっと、良い香りがして心地よいなあと思ったところで
俺は寝てしもうたんや。
って、あのまま倒れたってことは…
「月光さん…
俺、もしかして真矢ちゃん押し倒してもうた…?」
「…あとで謝っておくんだな」
「うは…俺最低やんけ…」
真矢ちゃんと俺はソファーに
向かい合った状態で座っていた。
彼女の手が届くように頭を下げていたから
真矢ちゃんからは俺の表情は見えへんし
いきなり倒れ込んできた俺を受け止めるのは
しんどかったと思う。
何より、女の子になんてことしてもうたんや。
「真矢はただお前のことを心配していた。
理由をきちんと説明してやれ。
それと…眠れて良かったな」
月光さんにそう言われて自分が熟睡していたことに気がついた。
なぜ眠れたのかはわからへんけど
おかげで頭はすっきりしてたし、身体も怠くはなく
俺はサッと身支度をして
真矢ちゃんに謝ることにした。
「真矢ちゃん!」
朝練に行く途中、コートに向かう彼女を捕まえ
真矢ちゃんが振り向くと同時に
俺は思い切り頭を下げて謝罪した。
『え!いやいや、気にしてないよ!
びっくりはしたけど
すぐ越知先輩が通りかかって助けてくれたから。
それより先輩からちょっと聞いたけど眠れてなかったの?』
「そうなんです。でも真矢ちゃんとおるとき
なんかええ香りするなって思った瞬間…」
『あ!もしかして香りでリラックスできたのかもね』
真矢ちゃんはそう言うと
自分のポケットからタオルハンカチを差し出して
嗅いでみて、と渡された。
「あ!!これや!この香りでっせ!」
彼女のタオルハンカチからは昨日と同じ
優しく甘く、そしてどこか懐かしいような香りがした。
『これ、白檀のお香の香りだよ』
「びゃくだん?」
『お線香の香りって言ったほうがわかりやすいかな?』
「ホンマ!線香や!」
せやから嗅いだことあったんかいな、と納得した。
『私お香が好きなの。
寝る前に焚いて寝たり、こうやってハンカチに
香りを染み込ませて持ち歩いたりしてるんだ』
「そういう使い方があるんやね。
香水とか匂いきつくて好きやないんですけど
お香って優しくてええですね」
『そうなの。
白檀の香りはね、リラックス効果と鎮静作用があるの。
だから眠れない毛利くんにはピッタリだったんだろうね』
「俺、もう眠れへんかと思ってもうた…」
あんなに色んなことを試してみても眠れなかったのに
と呟くと、真矢ちゃんは俺の腕を掴んで屈ませ
俺の頭に手を伸ばした。
『大丈夫。もう眠れるよ。
何か不安なこととか、心配なこととかあっても大丈夫。
私も、越知先輩も、皆いるから』
話してへんのに、俺の不安を感じ取ってくれた真矢ちゃんは
ずっと頭を撫でてくれた。
白檀の香りのする彼女は香りと同じように
俺のことを優しく包んでくれたのだった。
(良い香りがするな)
(これ、真矢ちゃんがくれたんです。
寝るときに持ってたらええって。
匂い袋って言って、ええ香りがするんでっせ)
(良かったな)
(えへへ。
でも、真矢ちゃんがそばにおるような気ぃしやって
別の意味で眠れへんような気も…)
(毛利、やはりコーチに…)
(コーチはええです!)
起床時間になったものの
眠くて眠くて、たまらへん。
思わず出てもうたあくびを聞いて
同じ部屋の月光さんが動きを止めんさった。
「また眠れなかったのか?」
「月光さん、あくびしてすんません。
何や眠りが浅いっちゅうか、寝た感じがしやらんのです」
「最近続いているようだが、それは一度コーチに相談を…」
「いやいや!大丈夫でっせ!
そのうち寝れますって!ほら、準備して練習行きましょ!」
ここんところ、眠りが浅くて眠れへん日が続いてる。
原因は全くわからへんのやけど
やっぱり睡眠時間が足りひんのはきつい。
月光さんにも心配掛けてもうて申し訳ないし
集中力も散漫になりがちになってて
そろそろ練習にも支障をきたすレベル。
自分なりに色々試してみた。
ベタに羊を数えてみたり
寝る前に白湯飲んでみたり
夜スマホとかいじらんようにしてみたり
試せる範囲のことはやってみたものの効果はない。
ただ、最近気づいたことやけど
昼寝やったらけっこう眠れるみたいやから
休憩時間にちょっとだけ寝て
なんとか保ってるような感じ。
それでも、すぐに起きてもうて熟睡感はないから
身体はだるくてそろそろホンマに限界。
「あ〜……もう、なんでなんやろ…」
風呂上がり、部屋に戻りながら一人で呟く。
月光さんが心配しやるから
今日はあんまり一緒におらんように
風呂のタイミングもズラしたんやけど
一人になったらそれはそれで
あれこれ考えもうてアカンかったかもしれへん。
今日も眠れへんのかなって思ったら
眠るのが怖くなってくる。
なんでなんやろ、って言いながら
心の中でもしかしてって思ってることがある。
レム睡眠、俺のレム状態が
普段の睡眠を邪魔してるんやないかって。
調べたわけでもあらへんけど
関係ないとも言い切れん。
月光さんの言う通りコーチに相談したほうが
ええんやろうけど
レムが原因って言われたら
俺はどないすればええかわからへん。
『あれ?毛利くん、今日は一人なんだね』
「ん?あ、真矢ちゃん!」
ソファーのある休憩室の一画に
マネージャーで1つ歳上の真矢ちゃんがいた。
彼女は雑誌を読んでいたよう。
『って、また髪の毛乾かしてないでしょ?』
「すぐ乾くから大丈夫でっせ」
『だめ。風邪引いたら大変。こっち来て』
真矢ちゃんは俺をソファーに座らせると
持っていたタオルで俺の髪を乾かし始めた。
彼女の手付きは優しくて気持ちが良くて
触れられたことでさっきまで悩んでいたことが
すっと頭から消えていくような気がした。
「人にしてもらうん、気持ちええわ」
『乾かしてあげるのは良いけど
ちゃんと自分でしなさいね。今度からは有料制にするから』
「真矢ちゃんのケチ〜」
軽口を叩きながら
ふと、何かの香りがすることに気がついた。
なんやろ、花でもない食べ物でもない
でも嗅いだことのある香り。
優しくて、ほっとする香りに身体の力が
ふっと、抜けていくのがわかる。
『えっ?ちょ、毛利くん?』
遠くで、わぁ!と驚く声がした。
多分真矢ちゃんの声なのはわかったけど
どうにも意識が遠のいて
俺はそのまま瞼を閉じたのだった。
「ん…あ、あれ…?」
カーテンの隙間から朝の眩しい日差しを浴び
目を覚ますと自室のベッドにいた。
真矢ちゃんに髪を乾かしてもろてたとこまでは
覚えてるんやけどその後の記憶がない。
「起きたか」
「あ、月光さん!あの、俺…」
「昨日真矢に髪を乾かしてもらっている途中に
気絶するように眠ったそうだ」
月光さんに言われて思い出す。
そうや。真矢ちゃんが髪をタオルで
乾かしてくれているとき
ふっと、良い香りがして心地よいなあと思ったところで
俺は寝てしもうたんや。
って、あのまま倒れたってことは…
「月光さん…
俺、もしかして真矢ちゃん押し倒してもうた…?」
「…あとで謝っておくんだな」
「うは…俺最低やんけ…」
真矢ちゃんと俺はソファーに
向かい合った状態で座っていた。
彼女の手が届くように頭を下げていたから
真矢ちゃんからは俺の表情は見えへんし
いきなり倒れ込んできた俺を受け止めるのは
しんどかったと思う。
何より、女の子になんてことしてもうたんや。
「真矢はただお前のことを心配していた。
理由をきちんと説明してやれ。
それと…眠れて良かったな」
月光さんにそう言われて自分が熟睡していたことに気がついた。
なぜ眠れたのかはわからへんけど
おかげで頭はすっきりしてたし、身体も怠くはなく
俺はサッと身支度をして
真矢ちゃんに謝ることにした。
「真矢ちゃん!」
朝練に行く途中、コートに向かう彼女を捕まえ
真矢ちゃんが振り向くと同時に
俺は思い切り頭を下げて謝罪した。
『え!いやいや、気にしてないよ!
びっくりはしたけど
すぐ越知先輩が通りかかって助けてくれたから。
それより先輩からちょっと聞いたけど眠れてなかったの?』
「そうなんです。でも真矢ちゃんとおるとき
なんかええ香りするなって思った瞬間…」
『あ!もしかして香りでリラックスできたのかもね』
真矢ちゃんはそう言うと
自分のポケットからタオルハンカチを差し出して
嗅いでみて、と渡された。
「あ!!これや!この香りでっせ!」
彼女のタオルハンカチからは昨日と同じ
優しく甘く、そしてどこか懐かしいような香りがした。
『これ、白檀のお香の香りだよ』
「びゃくだん?」
『お線香の香りって言ったほうがわかりやすいかな?』
「ホンマ!線香や!」
せやから嗅いだことあったんかいな、と納得した。
『私お香が好きなの。
寝る前に焚いて寝たり、こうやってハンカチに
香りを染み込ませて持ち歩いたりしてるんだ』
「そういう使い方があるんやね。
香水とか匂いきつくて好きやないんですけど
お香って優しくてええですね」
『そうなの。
白檀の香りはね、リラックス効果と鎮静作用があるの。
だから眠れない毛利くんにはピッタリだったんだろうね』
「俺、もう眠れへんかと思ってもうた…」
あんなに色んなことを試してみても眠れなかったのに
と呟くと、真矢ちゃんは俺の腕を掴んで屈ませ
俺の頭に手を伸ばした。
『大丈夫。もう眠れるよ。
何か不安なこととか、心配なこととかあっても大丈夫。
私も、越知先輩も、皆いるから』
話してへんのに、俺の不安を感じ取ってくれた真矢ちゃんは
ずっと頭を撫でてくれた。
白檀の香りのする彼女は香りと同じように
俺のことを優しく包んでくれたのだった。
(良い香りがするな)
(これ、真矢ちゃんがくれたんです。
寝るときに持ってたらええって。
匂い袋って言って、ええ香りがするんでっせ)
(良かったな)
(えへへ。
でも、真矢ちゃんがそばにおるような気ぃしやって
別の意味で眠れへんような気も…)
(毛利、やはりコーチに…)
(コーチはええです!)