卒業の日
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こんなにすぐ、自分の番がやってくるとは思ってなかった。
送る側から、送られる側になってみて思うのは
3年間はあっという間だったということ。
今日は、卒業式。
高校生ともなれば
流石に式典中に泣くことはなかったのだけど
HRのときはちょっとうるっときた。
担任の先生が新任だったので先生は泣くし
遠方の大学に進学する友達も泣いていて
つられそうになってしまった。
こういうのは、できれば笑って別れたい。
これから頑張ろうね、元気でね、で終わりたい。
だから友達が皆で思い出話に花を咲かせて一緒に帰った中
私は一人校舎に残り、ぼんやりと過ごしていた。
思い返してみれば
男子テニス部のマネージャーとして過ごしていたから
バタバタとした、慌ただしい高校生生活だった。
周りの友達は放課後遊びに行ったり
彼氏とデートしたりしていたけど
私はほぼ部活漬けの日々。
3年生になって引退したあとも
呼ばれたりしたらすぐ部活に顔を出していたし
私もそれが居心地が良かった。
友達と会えなくなるより
彼らと会えなくなることが寂しいと思うのは薄情だろうか。
立海ビッグスリーと称される彼らとも
そんな彼らを慕う部員たちとも
いつも笑顔で駆けてきてくれた背の高い彼とも
会えなくなることが、つらい。
物思いに耽っていたら
ドタドタと慌ただしく廊下を走る音がして
いきなり教室のドアが開いた。
「文香さん!良かった!まだおんさった…!」
勢いよく入ってきたのは1つ年下の毛利くんだ。
『毛利くん、そんなに慌ててどうしたの?』
「全然部活んとこ来ぉへんから帰ってもうたんかと…」
『明日の送別会で皆には会うから、今日は良いかと思って』
明日テニス部の皆が
卒業生を送る送別会をしてくれることになっている。
今日会うとしんみりしてしまいそうだったから
私はあえて部室に行かなかったのだけど
毛利くんの口ぶりからすると
後輩たちは部室で待機してくれていたのだろう。
毛利くんは教室の入口で立ったままでいたので
私はちょいちょいと、手招きして私がいる窓側の席に促した。
「ここが、文香さんの席なん?」
『うん、そう。最後の席替えで得た特等席よ』
「ホンマ、1番後ろの窓側なんて特等席やね」
この特等席のおかげで
私は好きな人が一緒懸命
体育の授業を受けている姿を見ることができた。
残り少ない学校生活でそんな姿を見られて
私はそれだけで満足だった。
だから目の前の彼には
あなたを見ていたなんてことは内緒のままでいたい。
気持ちを言ったら、困ってしまうだろうから。
「今日、ここにおんさって良かったです。
俺、一度でええから文香さんと同じ教室で
過ごしてみたかったんでっせ」
『……そうなの?』
「同い年やったらできることも
たった1歳の年の差でできへんくて、悔しかったんです。
今日だって……見送ることしかできんで」
私だって、何度も何度も
毛利くんと同じ歳だったらって思った。
同じクラスになれたかもしれないし
修学旅行も一緒に行けたし
あと1年、一緒にいられたのに。
だけど、彼の言う通り
最後で最後の今日、一緒に教室で過ごせて良かった。
会話が途切れてしまったので
なんとなく毛利くんを見ると
彼はなにやら険しい顔をしている。
『毛利くん?』
「好きって言ったら、困りますやろか」
一瞬聞き間違いかと思った。
私の都合の良いように聞こえてしまったんだと。
だけど、真っ赤な顔をして
眉を下げてじっとこちらを窺う彼を見たら
聞き間違いではないのだと実感した。
『こ、困らない……』
「え!?ホンマに!?じゃ、じゃあ…!」
『ちょ、ちょっと待って!』
毛利くんは一気に笑顔になり
前のめりになって私の両手を握ってきたのだけど
思わず待ったをかける。
私は、今日卒業したのだ。
想いが通じ合ったとしても、問題だらけだ。
『毛利くん、あの、私卒業しちゃったんだよ?
これから毎日一緒にいられないし
会う時間もあんまりないし
遠距離に、なっちゃうし…』
そこまで言って
喉がぎゅっと締め付けられるような感じがした。
どうしてもっと早く言わなかったんだろう。
勇気を出して想いを伝えていたら
もしかしたら
一緒に学生生活を過ごせたかもしれないのに。
「遠距離でも、なんも問題ないでっせ」
『でも…』
「離れても好きな気持ちは変わらへんよ。
ずっと好きやったんやもん。
ちょっと離れたくらいで
気持ち変わるような男とちゃいまっせ!
せやから、俺と付き合ってください」
正直なところまだ不安もあるけれど
どうしでだろう、毛利くんの言葉は頼もしくて
私を安心させてくれる。
この先また不安になったら
毛利くんが不安なんて吹き飛ばしてくれる
そんな気がして私は彼の手をぎゅっと握って
ずっと伝えたかった気持ちを伝える。
『うん、よろしくお願いします。
毛利くんの、彼女になりたい。
私も、ずっと好きだったから』
部活漬けの3年間だったけど
最初で最後のこの日に、信じられない奇跡が起きた。
旅立つことは寂しいけれど
この先も彼の笑顔が傍にあると思えば大丈夫。
卒業の日、私達二人にとっては
先輩後輩今までの関係を卒業する日でもあったのだった。
(あのさ、せっかくだから…教室で写真撮らない?
制服だってもう着られなくなっちゃうし…)
(大賛成!撮りましょ!いっぱい撮りましょ!
まだ時間あるなら、放課後デートもしましょ!)
(うん!ずっと憧れだったからやってみたい)
(あ、俺もやってみたいことっちゅーか
お願いがあるんですけど…)
(なに?)
(制服のボタン…卒業ボタンってやつ、もらえますやろか?)
(私の?)
(俺のはまだあげられへんから
代わりに文香さんの欲しいなって…アカンです?)
(いいよ。じゃあ来年、毛利くんが卒業するときは
毛利くんのボタンちょうだいね)
(もちろんでっせ!えへへ、明日柳達に自慢しよ)
(それは恥ずかしいからやめて…!)
送る側から、送られる側になってみて思うのは
3年間はあっという間だったということ。
今日は、卒業式。
高校生ともなれば
流石に式典中に泣くことはなかったのだけど
HRのときはちょっとうるっときた。
担任の先生が新任だったので先生は泣くし
遠方の大学に進学する友達も泣いていて
つられそうになってしまった。
こういうのは、できれば笑って別れたい。
これから頑張ろうね、元気でね、で終わりたい。
だから友達が皆で思い出話に花を咲かせて一緒に帰った中
私は一人校舎に残り、ぼんやりと過ごしていた。
思い返してみれば
男子テニス部のマネージャーとして過ごしていたから
バタバタとした、慌ただしい高校生生活だった。
周りの友達は放課後遊びに行ったり
彼氏とデートしたりしていたけど
私はほぼ部活漬けの日々。
3年生になって引退したあとも
呼ばれたりしたらすぐ部活に顔を出していたし
私もそれが居心地が良かった。
友達と会えなくなるより
彼らと会えなくなることが寂しいと思うのは薄情だろうか。
立海ビッグスリーと称される彼らとも
そんな彼らを慕う部員たちとも
いつも笑顔で駆けてきてくれた背の高い彼とも
会えなくなることが、つらい。
物思いに耽っていたら
ドタドタと慌ただしく廊下を走る音がして
いきなり教室のドアが開いた。
「文香さん!良かった!まだおんさった…!」
勢いよく入ってきたのは1つ年下の毛利くんだ。
『毛利くん、そんなに慌ててどうしたの?』
「全然部活んとこ来ぉへんから帰ってもうたんかと…」
『明日の送別会で皆には会うから、今日は良いかと思って』
明日テニス部の皆が
卒業生を送る送別会をしてくれることになっている。
今日会うとしんみりしてしまいそうだったから
私はあえて部室に行かなかったのだけど
毛利くんの口ぶりからすると
後輩たちは部室で待機してくれていたのだろう。
毛利くんは教室の入口で立ったままでいたので
私はちょいちょいと、手招きして私がいる窓側の席に促した。
「ここが、文香さんの席なん?」
『うん、そう。最後の席替えで得た特等席よ』
「ホンマ、1番後ろの窓側なんて特等席やね」
この特等席のおかげで
私は好きな人が一緒懸命
体育の授業を受けている姿を見ることができた。
残り少ない学校生活でそんな姿を見られて
私はそれだけで満足だった。
だから目の前の彼には
あなたを見ていたなんてことは内緒のままでいたい。
気持ちを言ったら、困ってしまうだろうから。
「今日、ここにおんさって良かったです。
俺、一度でええから文香さんと同じ教室で
過ごしてみたかったんでっせ」
『……そうなの?』
「同い年やったらできることも
たった1歳の年の差でできへんくて、悔しかったんです。
今日だって……見送ることしかできんで」
私だって、何度も何度も
毛利くんと同じ歳だったらって思った。
同じクラスになれたかもしれないし
修学旅行も一緒に行けたし
あと1年、一緒にいられたのに。
だけど、彼の言う通り
最後で最後の今日、一緒に教室で過ごせて良かった。
会話が途切れてしまったので
なんとなく毛利くんを見ると
彼はなにやら険しい顔をしている。
『毛利くん?』
「好きって言ったら、困りますやろか」
一瞬聞き間違いかと思った。
私の都合の良いように聞こえてしまったんだと。
だけど、真っ赤な顔をして
眉を下げてじっとこちらを窺う彼を見たら
聞き間違いではないのだと実感した。
『こ、困らない……』
「え!?ホンマに!?じゃ、じゃあ…!」
『ちょ、ちょっと待って!』
毛利くんは一気に笑顔になり
前のめりになって私の両手を握ってきたのだけど
思わず待ったをかける。
私は、今日卒業したのだ。
想いが通じ合ったとしても、問題だらけだ。
『毛利くん、あの、私卒業しちゃったんだよ?
これから毎日一緒にいられないし
会う時間もあんまりないし
遠距離に、なっちゃうし…』
そこまで言って
喉がぎゅっと締め付けられるような感じがした。
どうしてもっと早く言わなかったんだろう。
勇気を出して想いを伝えていたら
もしかしたら
一緒に学生生活を過ごせたかもしれないのに。
「遠距離でも、なんも問題ないでっせ」
『でも…』
「離れても好きな気持ちは変わらへんよ。
ずっと好きやったんやもん。
ちょっと離れたくらいで
気持ち変わるような男とちゃいまっせ!
せやから、俺と付き合ってください」
正直なところまだ不安もあるけれど
どうしでだろう、毛利くんの言葉は頼もしくて
私を安心させてくれる。
この先また不安になったら
毛利くんが不安なんて吹き飛ばしてくれる
そんな気がして私は彼の手をぎゅっと握って
ずっと伝えたかった気持ちを伝える。
『うん、よろしくお願いします。
毛利くんの、彼女になりたい。
私も、ずっと好きだったから』
部活漬けの3年間だったけど
最初で最後のこの日に、信じられない奇跡が起きた。
旅立つことは寂しいけれど
この先も彼の笑顔が傍にあると思えば大丈夫。
卒業の日、私達二人にとっては
先輩後輩今までの関係を卒業する日でもあったのだった。
(あのさ、せっかくだから…教室で写真撮らない?
制服だってもう着られなくなっちゃうし…)
(大賛成!撮りましょ!いっぱい撮りましょ!
まだ時間あるなら、放課後デートもしましょ!)
(うん!ずっと憧れだったからやってみたい)
(あ、俺もやってみたいことっちゅーか
お願いがあるんですけど…)
(なに?)
(制服のボタン…卒業ボタンってやつ、もらえますやろか?)
(私の?)
(俺のはまだあげられへんから
代わりに文香さんの欲しいなって…アカンです?)
(いいよ。じゃあ来年、毛利くんが卒業するときは
毛利くんのボタンちょうだいね)
(もちろんでっせ!えへへ、明日柳達に自慢しよ)
(それは恥ずかしいからやめて…!)