そばにいるのは、いつも君だった
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鋭い衝撃が背中にあって
気がついたときには、目の前には地面があり
手首に電気が走ったかのような痛みが生じた。
持っていたカゴからボールがこぼれ落ち
辺り一面テニスボール。
倒れた私を見て
すぐに周りにいた人達が駆け寄って来てくれたのだけど
ボールを踏んで皆が転けないかのほうが気がかりだった。
コートの一番遠くに
毛利くんがラケットを持ったまま立ちすくんでいた。
ここからでは表情が見えないが
固まったまま動かない彼と
なんとなく目が合っているような気がした。
「ホンマに、すみません」
救急室で手当を受けたあと
そのままベッドに横になっていたら
毛利くんがやってきた。
『えっと……どうしたの?』
「俺が、明里さんを怪我させてもうたんです…」
毛利くんの話によると
サーブの練習をしていたときに
手元が誤り、私にボールをぶつけてしまったらしい。
背中に当たったボールの威力に私の身体は押されて
そのまま倒れ、とっさに手を着いたものの
手の置き方がまずかったのだろう
利き手手首にヒビが入ってしまっていた。
『そうなんだ。わざわざ言いに来てくれてありがとう』
「えっ…それだけ、ですか?」
『それだけだけど…』
「俺、怪我させてもうたんよ?」
彼は私が怒ったり、責めたりすると思っていたのだろうか
的が外れてきょとんとした顔をしている。
『わざとじゃないんだから、怒らないし責めないよ』
「でも俺……」
『生活やマネージャー業務は少し不便になるけど
動けるから大丈夫』
利き手だから食べたり書いたりが出来ない。
こういう時、大曲みたいに両手が使えたら
便利なのにと思っていたら
毛利くんがいきなり身を乗り出してきた。
「俺!明里さんの手が治るまでサポートします!」
『えぇ?いや、大丈夫だよ』
「させてください!頼んます!」
彼の勢いに負けて承諾してしまったけど
サポートって、何をしようと思っているのだろう。
どうなることかはわからないけど
とりあえず彼の出方に合わせようと思った。
翌朝になると、私の怪我は皆に知れ渡っていて
朝食に行く際、すれ違う人達が口々に
大丈夫かと声を掛けてくれた。
大丈夫、とは答えたものの
利き手が使えないということが
いかに不便かを朝の身支度で味わった。
顔を洗うにも着替えるにも片手では難しく
髪は結べないからそのままだ。
こんな時、他に女の子がいたら
色々と頼みやすいのだけど。
「あ!明里さん!おはようございます!」
『おはよう』
レストランに入るとすぐに毛利くんがやってきた。
どうやら私が来るのを待っていてくれたようだ。
「ご飯、一緒に食べましょ!
何食べたいか言うて下さい。取りまっせ!」
大丈夫だよ、と言おうと思ったけど
バイキング形式だから両手を使う。
トレーを持ちながら料理を取るってことが
できないことに気が付き
素直に彼の言葉に甘えることにした。
毛利くんは私のために食事をよそってくれて
席へと案内してくれた。
席には越知くんがいて、先に食べている様子から
毛利くんが私を待っていたことが伺える。
「俺も自分の取って来ます!」
元気良くトレーを持って行った毛利くんの背中を見ていたら
越知くんの視線を感じた。
『あ、ごめんねお邪魔して。
毛利くん、責任感じちゃってるみたいで…。
私のサポートをしてくれることになったんだけど
練習に支障がないようにはするから』
「さして問題はない。
毛利は責任を感じてはいるが…
お前のサポートをすると張り切っていた」
『そんなに張り切らなくても良いのに…申し訳ない』
「嬉しいのだろう。お前の近くにいられて」
え?と聞き返そうとしたとき、毛利くんが戻ってきた。
「明里さん!
食べにくいと思ってスプーンとフォーク持ってきました!」
『ありがとう。食べよっか』
「はい!』
越知くんの言葉が気にはなったけど
また後で聞けば良いか。
毛利くんの持ってきてくれたスプーンを受け取り
いただきます、と食事に手を付けるも
やっぱり利き手じゃないから一口一口すくうのが遅い。
この生活がしばらく続くのだから
慣れなければならない、と思うものの
元々不器用だからか上達する気がしない。
「あ、ええこと思いついた。あーん、てしやればええね」
『?』
「スプーン借りまっせ。
はい、明里さん。あーん」
『えぇ!?』
ずいっとスプーンを顔に近づけられるも
どうして良いかわからなくて
スプーンと毛利くんを見比べても
彼は楽しそうに笑っていて断れそうにない。
助けを求めるように越知くんを見ても
“微笑ましいな”的な顔をしていて
助けてくれてないのは明確だったので
私は意を決して、あーん、と口を開けた。
恥ずかしさと緊張とであんまり喉を通らず
毛利くんに心配そうな顔を
させてしまったのは申し訳ないけど
私は朝食を残してしまったのだった。
気がついたときには、目の前には地面があり
手首に電気が走ったかのような痛みが生じた。
持っていたカゴからボールがこぼれ落ち
辺り一面テニスボール。
倒れた私を見て
すぐに周りにいた人達が駆け寄って来てくれたのだけど
ボールを踏んで皆が転けないかのほうが気がかりだった。
コートの一番遠くに
毛利くんがラケットを持ったまま立ちすくんでいた。
ここからでは表情が見えないが
固まったまま動かない彼と
なんとなく目が合っているような気がした。
「ホンマに、すみません」
救急室で手当を受けたあと
そのままベッドに横になっていたら
毛利くんがやってきた。
『えっと……どうしたの?』
「俺が、明里さんを怪我させてもうたんです…」
毛利くんの話によると
サーブの練習をしていたときに
手元が誤り、私にボールをぶつけてしまったらしい。
背中に当たったボールの威力に私の身体は押されて
そのまま倒れ、とっさに手を着いたものの
手の置き方がまずかったのだろう
利き手手首にヒビが入ってしまっていた。
『そうなんだ。わざわざ言いに来てくれてありがとう』
「えっ…それだけ、ですか?」
『それだけだけど…』
「俺、怪我させてもうたんよ?」
彼は私が怒ったり、責めたりすると思っていたのだろうか
的が外れてきょとんとした顔をしている。
『わざとじゃないんだから、怒らないし責めないよ』
「でも俺……」
『生活やマネージャー業務は少し不便になるけど
動けるから大丈夫』
利き手だから食べたり書いたりが出来ない。
こういう時、大曲みたいに両手が使えたら
便利なのにと思っていたら
毛利くんがいきなり身を乗り出してきた。
「俺!明里さんの手が治るまでサポートします!」
『えぇ?いや、大丈夫だよ』
「させてください!頼んます!」
彼の勢いに負けて承諾してしまったけど
サポートって、何をしようと思っているのだろう。
どうなることかはわからないけど
とりあえず彼の出方に合わせようと思った。
翌朝になると、私の怪我は皆に知れ渡っていて
朝食に行く際、すれ違う人達が口々に
大丈夫かと声を掛けてくれた。
大丈夫、とは答えたものの
利き手が使えないということが
いかに不便かを朝の身支度で味わった。
顔を洗うにも着替えるにも片手では難しく
髪は結べないからそのままだ。
こんな時、他に女の子がいたら
色々と頼みやすいのだけど。
「あ!明里さん!おはようございます!」
『おはよう』
レストランに入るとすぐに毛利くんがやってきた。
どうやら私が来るのを待っていてくれたようだ。
「ご飯、一緒に食べましょ!
何食べたいか言うて下さい。取りまっせ!」
大丈夫だよ、と言おうと思ったけど
バイキング形式だから両手を使う。
トレーを持ちながら料理を取るってことが
できないことに気が付き
素直に彼の言葉に甘えることにした。
毛利くんは私のために食事をよそってくれて
席へと案内してくれた。
席には越知くんがいて、先に食べている様子から
毛利くんが私を待っていたことが伺える。
「俺も自分の取って来ます!」
元気良くトレーを持って行った毛利くんの背中を見ていたら
越知くんの視線を感じた。
『あ、ごめんねお邪魔して。
毛利くん、責任感じちゃってるみたいで…。
私のサポートをしてくれることになったんだけど
練習に支障がないようにはするから』
「さして問題はない。
毛利は責任を感じてはいるが…
お前のサポートをすると張り切っていた」
『そんなに張り切らなくても良いのに…申し訳ない』
「嬉しいのだろう。お前の近くにいられて」
え?と聞き返そうとしたとき、毛利くんが戻ってきた。
「明里さん!
食べにくいと思ってスプーンとフォーク持ってきました!」
『ありがとう。食べよっか』
「はい!』
越知くんの言葉が気にはなったけど
また後で聞けば良いか。
毛利くんの持ってきてくれたスプーンを受け取り
いただきます、と食事に手を付けるも
やっぱり利き手じゃないから一口一口すくうのが遅い。
この生活がしばらく続くのだから
慣れなければならない、と思うものの
元々不器用だからか上達する気がしない。
「あ、ええこと思いついた。あーん、てしやればええね」
『?』
「スプーン借りまっせ。
はい、明里さん。あーん」
『えぇ!?』
ずいっとスプーンを顔に近づけられるも
どうして良いかわからなくて
スプーンと毛利くんを見比べても
彼は楽しそうに笑っていて断れそうにない。
助けを求めるように越知くんを見ても
“微笑ましいな”的な顔をしていて
助けてくれてないのは明確だったので
私は意を決して、あーん、と口を開けた。
恥ずかしさと緊張とであんまり喉を通らず
毛利くんに心配そうな顔を
させてしまったのは申し訳ないけど
私は朝食を残してしまったのだった。