家庭菜園
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『毛利くーん!こっちは終わったよ!』
「手際ええですね!
ほんならこっち手伝ってもろてもええですか?」
『うん!』
私は今、片思い中の毛利くんと
初めての共同作業をしている。
心地よい春風の吹く陽だまりの中で
一緒に野菜を植えているのだ。
事の発端は、毛利くんの趣味である家庭菜園の話で
家庭菜園って楽しそうだねって
言ったことから始まった。
本当に楽しそうだとは思ったけど
まさか「じゃあ一緒にやってみませんか?」と
言われるなんて予想もしてなくて
なんの知識もないけど、うんって頷いてしまった。
きっと社交辞令だろうって思っていたのだけど
次の日にはコーチ達に直談判し
合宿所に野菜を作る許可を得て
彼はこれで準備できますねって
ピースしながら言って来たのだ。
「こっちの土をならしてもろて、整え終わったら
いよいよ種たちの出番やね」
『まだ植えてもないのにここまで長かったね〜』
「家庭菜園は土作りで野菜の育ちも味も変わるんでっせ」
『基礎が大事ってことだね』
「その通りです!」
家庭菜園初心者の私は、ちょっと土を耕して
植えればいいってくらいにしか思ってなかったけど
肥料を撒いて、耕して、ならして
それからしばらく時間をあけてからでないと
良い土は出来ないって知って
なんて高度な趣味なんだろうって感心してしまった。
『どれから植えたが良いとかある?』
「順番はないですけど、ここにはじゃがいも。
こっちはトマト、ほんでそっちはナスで頼んます」
『了解!じゃか苗用の穴から掘ったが良いのかな?』
「あ、そうですね!
最初は明菜さんに掘ってもろて俺が植えていくんで
あとから交代しましょか」
『うん!』
スコップで土を掘り
毛利くんが慣れた手つきで苗を植える。
さくっ、さくって音がし心地よくて
なんだから子どもの頃に砂場で遊んだことを
思い出して楽しくなる。
ちらりと毛利くんを見てみると
彼も楽しいのか、にこにこと笑っている。
ずっとテニス漬けで趣味を楽しむ時間がなかったから
嬉しいのかもしれない。
『毛利くん、楽しそうだね』
「ん?顔に出てました?」
『うん。鼻歌歌ってるし』
「ホンマ!?自覚なかったわ…」
『ふふっ…ごめん、嘘』
「えぇっ!もう、びっくりしたやんけ…!」
鼻歌を歌いたいのは私の方。
楽しげな毛利くんを見てみると
胸がほわっとして、あったかくなる。
一緒にやらないかって誘われた時
やるって言って本当に良かった。
「よーし!終わりましたね!」
『ちょっと、腰が痛いかも…』
背伸びをしていると、毛利くんが
あっと、声を上げた。
「明菜さん、顔に土がついてまっせ」
『えっ、どこ?』
「大人しくしんせーね」
私の顔を覗き込むために
屈んだ毛利くんとの距離は近くて
パッと、下を向いてしまった。
「あ、コラ、明菜さん顔上げな見えへんやんけ」
『いや、ちょっと、あの…!』
毛利くんは私が顔を上げないから
しゃがみ込んで下から覗き込んできた。
しかも後ろに逃げないように
両の手は彼に握られてしまって動けない。
なにこれ、恥ずかしすぎるし
ドキドキしすぎて頭がパンクしそう。
ぎゅっと目を瞑れば片手が離され
フワフワした感触が頬を撫でた。
「ん。これで取れましたよ。
ちゃーんと、綺麗なタオルで拭いたんで大丈夫でっせ」
『あ、ありがとう…』
すくっと、立った毛利くんはいつも通りで
私だけがドキドキしていて、なんだか悔しい。
「あとは、定期的に野菜たちの様子見ましょね」
『育つの楽しみだね』
「でもこっからも大変でっせ〜。
育てやすいの選びましたけど
美味しいの作るには手間暇かけんとねえ」
『今度支柱とかも買いに行かなきゃだね』
虫対策も必要だったなぁと考えていたら
毛利くんが楽しそうに笑った。
何か変なことを言っただろうか。
「明菜さん、ちゃんと色々調べてくれはったんやなって。
それに、土触るのも、虫とか出やるのも嫌がらんで
楽しんでくれはって
俺、むっちゃ嬉しいです」
『やるなら、ちゃんとしたいしね。
自分一人でだったら
なかなかやろうって思わないことだったから
毛利くんが誘ってくれて
……その、二人で出来て、嬉しかったよ』
「俺もです。
これからもしばらく明菜さん独り占めできますし
ホンマ、誘って良かったです!」
『えっ、えっ?それ、どういう…』
「えへへ〜。内緒でっせ!
あ、せや!水汲んで来ようと思ってたんやった!」
『ちょ、ちょっと待ってよ!』
彼の言葉と行動一つ一つに翻弄されながらも
このやりとりがすごく、すごく、幸せだと感じた。
ふたりだけのこの場所で
私もまだしばらく、彼を独り占めさせてもらおう。
いつか気持ちを伝える日が来るまで。
(明日から練習始まる前に水やりと
雑草取りしましょね!)
(交代でしなくて大丈夫?毛利くん練習大変なのに…)
(二人でやりたいんです!
明菜さん、忙しいでっか…?)
(ううん!私も毎日一緒にするよ!
………って、私これ実はもて遊ばれてる…?
毛利くん、確信犯…?)
(どないしたんです?)
(な、なんでもないよ!)
「手際ええですね!
ほんならこっち手伝ってもろてもええですか?」
『うん!』
私は今、片思い中の毛利くんと
初めての共同作業をしている。
心地よい春風の吹く陽だまりの中で
一緒に野菜を植えているのだ。
事の発端は、毛利くんの趣味である家庭菜園の話で
家庭菜園って楽しそうだねって
言ったことから始まった。
本当に楽しそうだとは思ったけど
まさか「じゃあ一緒にやってみませんか?」と
言われるなんて予想もしてなくて
なんの知識もないけど、うんって頷いてしまった。
きっと社交辞令だろうって思っていたのだけど
次の日にはコーチ達に直談判し
合宿所に野菜を作る許可を得て
彼はこれで準備できますねって
ピースしながら言って来たのだ。
「こっちの土をならしてもろて、整え終わったら
いよいよ種たちの出番やね」
『まだ植えてもないのにここまで長かったね〜』
「家庭菜園は土作りで野菜の育ちも味も変わるんでっせ」
『基礎が大事ってことだね』
「その通りです!」
家庭菜園初心者の私は、ちょっと土を耕して
植えればいいってくらいにしか思ってなかったけど
肥料を撒いて、耕して、ならして
それからしばらく時間をあけてからでないと
良い土は出来ないって知って
なんて高度な趣味なんだろうって感心してしまった。
『どれから植えたが良いとかある?』
「順番はないですけど、ここにはじゃがいも。
こっちはトマト、ほんでそっちはナスで頼んます」
『了解!じゃか苗用の穴から掘ったが良いのかな?』
「あ、そうですね!
最初は明菜さんに掘ってもろて俺が植えていくんで
あとから交代しましょか」
『うん!』
スコップで土を掘り
毛利くんが慣れた手つきで苗を植える。
さくっ、さくって音がし心地よくて
なんだから子どもの頃に砂場で遊んだことを
思い出して楽しくなる。
ちらりと毛利くんを見てみると
彼も楽しいのか、にこにこと笑っている。
ずっとテニス漬けで趣味を楽しむ時間がなかったから
嬉しいのかもしれない。
『毛利くん、楽しそうだね』
「ん?顔に出てました?」
『うん。鼻歌歌ってるし』
「ホンマ!?自覚なかったわ…」
『ふふっ…ごめん、嘘』
「えぇっ!もう、びっくりしたやんけ…!」
鼻歌を歌いたいのは私の方。
楽しげな毛利くんを見てみると
胸がほわっとして、あったかくなる。
一緒にやらないかって誘われた時
やるって言って本当に良かった。
「よーし!終わりましたね!」
『ちょっと、腰が痛いかも…』
背伸びをしていると、毛利くんが
あっと、声を上げた。
「明菜さん、顔に土がついてまっせ」
『えっ、どこ?』
「大人しくしんせーね」
私の顔を覗き込むために
屈んだ毛利くんとの距離は近くて
パッと、下を向いてしまった。
「あ、コラ、明菜さん顔上げな見えへんやんけ」
『いや、ちょっと、あの…!』
毛利くんは私が顔を上げないから
しゃがみ込んで下から覗き込んできた。
しかも後ろに逃げないように
両の手は彼に握られてしまって動けない。
なにこれ、恥ずかしすぎるし
ドキドキしすぎて頭がパンクしそう。
ぎゅっと目を瞑れば片手が離され
フワフワした感触が頬を撫でた。
「ん。これで取れましたよ。
ちゃーんと、綺麗なタオルで拭いたんで大丈夫でっせ」
『あ、ありがとう…』
すくっと、立った毛利くんはいつも通りで
私だけがドキドキしていて、なんだか悔しい。
「あとは、定期的に野菜たちの様子見ましょね」
『育つの楽しみだね』
「でもこっからも大変でっせ〜。
育てやすいの選びましたけど
美味しいの作るには手間暇かけんとねえ」
『今度支柱とかも買いに行かなきゃだね』
虫対策も必要だったなぁと考えていたら
毛利くんが楽しそうに笑った。
何か変なことを言っただろうか。
「明菜さん、ちゃんと色々調べてくれはったんやなって。
それに、土触るのも、虫とか出やるのも嫌がらんで
楽しんでくれはって
俺、むっちゃ嬉しいです」
『やるなら、ちゃんとしたいしね。
自分一人でだったら
なかなかやろうって思わないことだったから
毛利くんが誘ってくれて
……その、二人で出来て、嬉しかったよ』
「俺もです。
これからもしばらく明菜さん独り占めできますし
ホンマ、誘って良かったです!」
『えっ、えっ?それ、どういう…』
「えへへ〜。内緒でっせ!
あ、せや!水汲んで来ようと思ってたんやった!」
『ちょ、ちょっと待ってよ!』
彼の言葉と行動一つ一つに翻弄されながらも
このやりとりがすごく、すごく、幸せだと感じた。
ふたりだけのこの場所で
私もまだしばらく、彼を独り占めさせてもらおう。
いつか気持ちを伝える日が来るまで。
(明日から練習始まる前に水やりと
雑草取りしましょね!)
(交代でしなくて大丈夫?毛利くん練習大変なのに…)
(二人でやりたいんです!
明菜さん、忙しいでっか…?)
(ううん!私も毎日一緒にするよ!
………って、私これ実はもて遊ばれてる…?
毛利くん、確信犯…?)
(どないしたんです?)
(な、なんでもないよ!)