甘えてみても良いですか?
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『疲れた……』
今日も朝から怒濤の始まりで
あっちに行きこっちに行き
バタバタと動いてばかりいたのだけど、やっと一息、休憩できる。
とは言っても、洗濯物を畳みながらだから
休憩ではないのだけれど
毎日慌ただしいマネージャーの私にとっては
こういう作業が少しだけほっとできる
案外貴重な時間だったりするのだ。
さて、どこで作業をしようかと周りを見渡す。
一人になりたいというのもあるが
こうやって荷物を抱えていたり、何かしようとしていると
必ずと言っていいほど誰かが手伝ってくれる。
だから誰にも見つからないよう
私は女子更衣室や倉庫の陰でひっそりと
仕事をすることが多い。
申し訳なくて、仕方がないのだ。
皆だって練習で疲れているのに
サポートする立場の私を、逆にサポートさせてしまって
マネージャー失格なのではないだろうか。
毎回そんなことを考えてしまうから
誰にも見つからないよう、最新の注意を払って
今日は女子更衣室に向かうことにした。
『よし。じゃあやりますか』
洗濯物をドサッと置いていざ取り掛かろうとしたとき
ふと、窓越しになにかが動いた気がした。
すりガラスになっているのでぼやけていてわからないが
シルエット的に動物のようだ。
そろりと近づいてゆっくり窓を開けてみるとそこには
室外機の上に乗った猫がいた。
『こんなとこに……ふふっ。可愛いねぇ』
私を見ても驚かない猫にゆっくりと手を伸ばすと
喉を鳴らして甘えてきた。
そういえば前に海堂くんが
猫の話をしていたのを聞いたことがあったけど
この子のことだったのかな。
“にゃあ〜”
『…ねえ、ちょっとだけ疲れちゃったから
私も少しだけ、君みたいにゆっくりしても良いかな…』
マネージャーの仕事は好き。
だけどちょっとだけ、疲れていた。
皆が手伝ってくれている状態なのに
何を甘いことを、と我ながら呆れるが
なぜか、気持ちが疲れているようだった。
甘えるように猫に問いかけてみて
自分の独り言に自嘲しかけた時、猫が私の目をじっと見つめてきた。
「そうそう。ゆっくりしんせーね」
猫が喋ったのかと思うくらいのタイミングで声がして
ガサガサと茂みから大きな身体が現れた。
『毛利くん…!』
彼は茂みの中にいたせいか
頭や肩に、いくつか葉っぱをつけたままでいる。
「サボってたんとちゃいまっせ!
その子探してたんですけど、ここにおったんやね」
その子、と指を指したのは
優雅に眠っているこの猫だった。
どうやら以前怪我をしていたのを見かけて
ずっと気になっていたらしい。
見たところは何も異常はないようなので
毛利くんは安堵した表情をしている。
『優しいね』
「え?そうですか?普通のことやと思いますけど」
『猫のことだけじゃなくて。
誰にでも、いつでも、優しいなって思うよ』
そう、毛利くんは優しい。
彼のおかげで越知くんの雰囲気も変わったし
場の空気が和むのだから、天性の才能なのだろう。
あぁ、疲れているせいか
なんか心が卑しくて
いつもだったら毛利くんを見たらすごいって思えるのに
今日は羨ましいとか思ったり
勝手に自分と比べて卑屈になっている。
やだなあ、こんなマイナスの感情。
「何言うてはるん?綾乃さんだって優しいやないですか」
『優しくなんてないよ…』
思わず俯いて、毛利くんから目を反らした。
普段なら、ほんと?ありがとう!って
言えるのに今の私にはそんな元気がない。
視線の先には、私達のことなんて興味なさそうに
すやすやと眠っている猫がいて
この場から逃げてしまいたくなってきた。
「優しいですし、努力家やし、気配り上手で
俺はホンマに尊敬してるんでっせ」
『え……』
「せやけど、頑張りすぎとちゃいまっか?
息抜きちゃんとしやらんと、窮屈になってまうよ」
だけど、と口を開こうとしたら
人差し指を口元に当てて、話すことを止められた。
「さっきも言いましたけど、ゆっくりしんせーね。
休むことも大事です。
ゆっくりの仕方がわからんのやったら
俺と、この猫が教えたりますから」
にっと笑う毛利くんの笑顔が眩しくて
さっきまでの心のモヤモヤがスッと晴れてきた。
やっぱり、毛利くんはすごい。
『じゃあ、どうすれば良いかな…?』
「まずは、猫撫でながら俺とおしゃべりして〜
15時くらいになったらお茶しましょ!
ほんで、夜は一緒にご飯食べて…
せや、夜は他の人らも呼んでトランプして遊ばへん?」
『ふふっ、いいね。最高!』
気持ちがゆっくりと、解れていく。
やらなきゃ、頑張らなきゃって
自分で自分を追い込めすぎていたのだ。
毛利くんの言うように
たまには休んで気持ちを休めてあげよう。
大好きな皆を、支えられるように。
(あ!洗濯物、こないなところでしてはったんですか?)
(あ、バレた…)
(もしかして、隠れてやってたんです?)
(だって、荷物とか抱えてたら
皆手伝ってくれるから申し訳なくて…)
(綾乃さんたまにおらんくなるって思ってたら
ここは流石に思いつかへんかった…)
(ここなら皆に見つからないでしょ?)
(今度から、ここでするんやめんせーね)
(え〜)
(皆に手伝ってもらうのが申し訳ないなら
俺が専属でお手伝いしやるから)
(えっ!それも申し訳ないよ!)
(好きでやるからええんです。約束でっせ!)
今日も朝から怒濤の始まりで
あっちに行きこっちに行き
バタバタと動いてばかりいたのだけど、やっと一息、休憩できる。
とは言っても、洗濯物を畳みながらだから
休憩ではないのだけれど
毎日慌ただしいマネージャーの私にとっては
こういう作業が少しだけほっとできる
案外貴重な時間だったりするのだ。
さて、どこで作業をしようかと周りを見渡す。
一人になりたいというのもあるが
こうやって荷物を抱えていたり、何かしようとしていると
必ずと言っていいほど誰かが手伝ってくれる。
だから誰にも見つからないよう
私は女子更衣室や倉庫の陰でひっそりと
仕事をすることが多い。
申し訳なくて、仕方がないのだ。
皆だって練習で疲れているのに
サポートする立場の私を、逆にサポートさせてしまって
マネージャー失格なのではないだろうか。
毎回そんなことを考えてしまうから
誰にも見つからないよう、最新の注意を払って
今日は女子更衣室に向かうことにした。
『よし。じゃあやりますか』
洗濯物をドサッと置いていざ取り掛かろうとしたとき
ふと、窓越しになにかが動いた気がした。
すりガラスになっているのでぼやけていてわからないが
シルエット的に動物のようだ。
そろりと近づいてゆっくり窓を開けてみるとそこには
室外機の上に乗った猫がいた。
『こんなとこに……ふふっ。可愛いねぇ』
私を見ても驚かない猫にゆっくりと手を伸ばすと
喉を鳴らして甘えてきた。
そういえば前に海堂くんが
猫の話をしていたのを聞いたことがあったけど
この子のことだったのかな。
“にゃあ〜”
『…ねえ、ちょっとだけ疲れちゃったから
私も少しだけ、君みたいにゆっくりしても良いかな…』
マネージャーの仕事は好き。
だけどちょっとだけ、疲れていた。
皆が手伝ってくれている状態なのに
何を甘いことを、と我ながら呆れるが
なぜか、気持ちが疲れているようだった。
甘えるように猫に問いかけてみて
自分の独り言に自嘲しかけた時、猫が私の目をじっと見つめてきた。
「そうそう。ゆっくりしんせーね」
猫が喋ったのかと思うくらいのタイミングで声がして
ガサガサと茂みから大きな身体が現れた。
『毛利くん…!』
彼は茂みの中にいたせいか
頭や肩に、いくつか葉っぱをつけたままでいる。
「サボってたんとちゃいまっせ!
その子探してたんですけど、ここにおったんやね」
その子、と指を指したのは
優雅に眠っているこの猫だった。
どうやら以前怪我をしていたのを見かけて
ずっと気になっていたらしい。
見たところは何も異常はないようなので
毛利くんは安堵した表情をしている。
『優しいね』
「え?そうですか?普通のことやと思いますけど」
『猫のことだけじゃなくて。
誰にでも、いつでも、優しいなって思うよ』
そう、毛利くんは優しい。
彼のおかげで越知くんの雰囲気も変わったし
場の空気が和むのだから、天性の才能なのだろう。
あぁ、疲れているせいか
なんか心が卑しくて
いつもだったら毛利くんを見たらすごいって思えるのに
今日は羨ましいとか思ったり
勝手に自分と比べて卑屈になっている。
やだなあ、こんなマイナスの感情。
「何言うてはるん?綾乃さんだって優しいやないですか」
『優しくなんてないよ…』
思わず俯いて、毛利くんから目を反らした。
普段なら、ほんと?ありがとう!って
言えるのに今の私にはそんな元気がない。
視線の先には、私達のことなんて興味なさそうに
すやすやと眠っている猫がいて
この場から逃げてしまいたくなってきた。
「優しいですし、努力家やし、気配り上手で
俺はホンマに尊敬してるんでっせ」
『え……』
「せやけど、頑張りすぎとちゃいまっか?
息抜きちゃんとしやらんと、窮屈になってまうよ」
だけど、と口を開こうとしたら
人差し指を口元に当てて、話すことを止められた。
「さっきも言いましたけど、ゆっくりしんせーね。
休むことも大事です。
ゆっくりの仕方がわからんのやったら
俺と、この猫が教えたりますから」
にっと笑う毛利くんの笑顔が眩しくて
さっきまでの心のモヤモヤがスッと晴れてきた。
やっぱり、毛利くんはすごい。
『じゃあ、どうすれば良いかな…?』
「まずは、猫撫でながら俺とおしゃべりして〜
15時くらいになったらお茶しましょ!
ほんで、夜は一緒にご飯食べて…
せや、夜は他の人らも呼んでトランプして遊ばへん?」
『ふふっ、いいね。最高!』
気持ちがゆっくりと、解れていく。
やらなきゃ、頑張らなきゃって
自分で自分を追い込めすぎていたのだ。
毛利くんの言うように
たまには休んで気持ちを休めてあげよう。
大好きな皆を、支えられるように。
(あ!洗濯物、こないなところでしてはったんですか?)
(あ、バレた…)
(もしかして、隠れてやってたんです?)
(だって、荷物とか抱えてたら
皆手伝ってくれるから申し訳なくて…)
(綾乃さんたまにおらんくなるって思ってたら
ここは流石に思いつかへんかった…)
(ここなら皆に見つからないでしょ?)
(今度から、ここでするんやめんせーね)
(え〜)
(皆に手伝ってもらうのが申し訳ないなら
俺が専属でお手伝いしやるから)
(えっ!それも申し訳ないよ!)
(好きでやるからええんです。約束でっせ!)