コタツにみかん
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『お邪魔しまーす』
「座っといて。お茶持ってくるわ」
今日は寿三郎と一緒にテスト勉強をするために
毛利家にお邪魔することになった。
同じクラスだし、出席番号は近いし
保健委員だし、元は地方の出身であったり
何かと共通点が多くて私達は仲が良いので
たまに図書室とかで一緒に勉強をしていた。
ただ、冬休み中で学校の利用ができなかったので
今回は毛利家に来ることになったのだ。
『あ、お茶ありがとう〜』
「どういたしまして。
俺の部屋やと寒いと思ってここにしたんやけど…」
こことは、リビングでも寿三郎の部屋でもなく
コタツとテレビだけがある和室だ。
客間なのだろうか、生活感はあまりない。
『お家の人の迷惑にならなきゃどこでも大丈夫だよ。
それにコタツ嬉しい〜』
「前に双葉がコタツ恋しい〜って言うてたから
喜んでもらえて良かったわ」
そう言えばそんなことを言ったっけ。
寒さへの配慮と
そんな些細なことを覚えてくれていることに
密かに感激する。
寿三郎は、とても優しい。
でもその優しさを押し付けないところが
すごく好ましくて
実はこっそり尊敬している部分でもある。
本人には恥ずかしくて言えないけど。
さてやりますか、と
ふたり揃って教科書を開く。
寿三郎は勉強が出来ないわけではないが
授業中やる気が起きないらしく
こうやって一緒に勉強すれば
きちんとテストで点が採れる。
ここ教えて、と言われて教えれば割とすぐに理解するので
テスト期間だけ頑張れば良いという
なんとも羨ましい頭脳の持ち主だ。
「なぁ〜、ここはどうやって解くん?」
『ん?どこ?あぁ、えっとねここは…』
「げ、ここ苦手やなあ……」
『あぁ、そこ私も苦手〜。計算式長いよね』
「あっ、せや、これ見てや。
こん前描いてみたんやけど似てへん?」
『あははっ!これ、数学の先生?めっちゃ似てる…!』
って、飽きてきたのか
寿三郎の話しかける頻度が増えてきた。
休憩する?と聞いてみたら満面の笑みで頷かれたので
一旦教科書を閉じることにした。
寿三郎は食べるもの持ってくると言って
部屋から出て行ったので
とりあえずテレビをつけて待つことにした。
あ、海外の旅番組やってる。
寿三郎好きそう。
流行りのアイドルがレポートしているのは
どうやらオーストラリアのよう。
そういういえば
寿三郎は試合や遠征でちょくちょく海外に行っているけど
この前はオーストラリアって言ってなかったっけ?
「やっぱりコタツにはこれやな」
そう言って彼が持ってきたのはカゴに入ったみかん。
『わっ!最高の組み合わせ!』
「へへっ、せやろ〜。
これなんか甘そうや。食べんせーね」
『ありがとう!』
コタツにみかんって、ほんと最強。
アイスでも良いけどやっぱりみかんだよね〜と
高校生らしからぬ会話にくすりと笑う。
「お、ここ、こん前の試合ん時泊まったとこやね」
ここ、と指差すのはメルボルンの高級そうなホテルだった。
え。こんなところに泊まったのかと唖然としていると
他にもここの前も通ったなあとか
何が美味しかったとか教えてくれた。
「ん?なんやのその顔?」
『・・・なにが?』
「元気ないっちゅーか、辛気臭いっちゅーか・・・
双葉らしくないなあって」
『・・・さっきまで、コタツにみかんではしゃいでたくせに
メルボルンの話されてもなあって』
寿三郎は大きなくりっとした目を開いてきょとん、としている。
そりゃいきなり拗ねられても困るよね、というか
私だって自分のことがわけわかんない。
「いきなりの嫌味やんけ」
『違う。嫌味じゃない。
・・・なんか、今、目の前にいる寿三郎が
寿三郎じゃないみたいだなって』
テニスで活躍している彼は
きっと今みかんを食べているような
おっとりとした、柔らかい雰囲気なんてなくて
全然知らない姿をしているのだろう。
忘れかけていたけれど、日本代表なのだ。
日本全国から選び抜かれて
しかも周りが3年生ばかりの中唯一1年生で
日本を背負う、期待の存在。
『目の前にいるのに、遠くにいるみたい・・・』
ぼそっと呟くと、寿三郎は何言うてるん、と笑う。
「双葉といる俺も、テニスしてる俺も何一つ変わらんやんけ。
それに、双葉こそたまに
遠くにいるみたいに思える時あるんやけど」
『え?私が?』
「どんどん可愛く、綺麗になってきんさって
話しやすい友達やったのに
最近は魅力的な女性って感じでドキドキしやる。
・・・せやから、お互い様やね」
そんなことを言われたら意識してしまって
徐々に顔が熱を帯びてきた。
普段の寿三郎と、テニスをしている寿三郎だけじゃなくて
もうひとつ、魅力的な男性としての寿三郎の顔は
今初めて、知ることになったのだった。
(なあ、今度試合見らんせーね。
テニスしよる俺を知らんなら、見に来ればええやんけ)
(そ、そうなんだけど・・・)
(なんで嫌そうなんよ)
(見に行くのが嫌なわけではなくて・・・
なんというか、その、意識しそうで嫌というか)
(ええやんけ。意識しんせーね。
誰もおらん家にふたりきりってシチュエーションにすら
意識せぇへんのやから
どないしよかって思うてたとこでっせ)
(えっ、今ふたりきり?お家の人いないの・・・?)
(せやね。ふたりきり。って、あらら固まってもーた)
「座っといて。お茶持ってくるわ」
今日は寿三郎と一緒にテスト勉強をするために
毛利家にお邪魔することになった。
同じクラスだし、出席番号は近いし
保健委員だし、元は地方の出身であったり
何かと共通点が多くて私達は仲が良いので
たまに図書室とかで一緒に勉強をしていた。
ただ、冬休み中で学校の利用ができなかったので
今回は毛利家に来ることになったのだ。
『あ、お茶ありがとう〜』
「どういたしまして。
俺の部屋やと寒いと思ってここにしたんやけど…」
こことは、リビングでも寿三郎の部屋でもなく
コタツとテレビだけがある和室だ。
客間なのだろうか、生活感はあまりない。
『お家の人の迷惑にならなきゃどこでも大丈夫だよ。
それにコタツ嬉しい〜』
「前に双葉がコタツ恋しい〜って言うてたから
喜んでもらえて良かったわ」
そう言えばそんなことを言ったっけ。
寒さへの配慮と
そんな些細なことを覚えてくれていることに
密かに感激する。
寿三郎は、とても優しい。
でもその優しさを押し付けないところが
すごく好ましくて
実はこっそり尊敬している部分でもある。
本人には恥ずかしくて言えないけど。
さてやりますか、と
ふたり揃って教科書を開く。
寿三郎は勉強が出来ないわけではないが
授業中やる気が起きないらしく
こうやって一緒に勉強すれば
きちんとテストで点が採れる。
ここ教えて、と言われて教えれば割とすぐに理解するので
テスト期間だけ頑張れば良いという
なんとも羨ましい頭脳の持ち主だ。
「なぁ〜、ここはどうやって解くん?」
『ん?どこ?あぁ、えっとねここは…』
「げ、ここ苦手やなあ……」
『あぁ、そこ私も苦手〜。計算式長いよね』
「あっ、せや、これ見てや。
こん前描いてみたんやけど似てへん?」
『あははっ!これ、数学の先生?めっちゃ似てる…!』
って、飽きてきたのか
寿三郎の話しかける頻度が増えてきた。
休憩する?と聞いてみたら満面の笑みで頷かれたので
一旦教科書を閉じることにした。
寿三郎は食べるもの持ってくると言って
部屋から出て行ったので
とりあえずテレビをつけて待つことにした。
あ、海外の旅番組やってる。
寿三郎好きそう。
流行りのアイドルがレポートしているのは
どうやらオーストラリアのよう。
そういういえば
寿三郎は試合や遠征でちょくちょく海外に行っているけど
この前はオーストラリアって言ってなかったっけ?
「やっぱりコタツにはこれやな」
そう言って彼が持ってきたのはカゴに入ったみかん。
『わっ!最高の組み合わせ!』
「へへっ、せやろ〜。
これなんか甘そうや。食べんせーね」
『ありがとう!』
コタツにみかんって、ほんと最強。
アイスでも良いけどやっぱりみかんだよね〜と
高校生らしからぬ会話にくすりと笑う。
「お、ここ、こん前の試合ん時泊まったとこやね」
ここ、と指差すのはメルボルンの高級そうなホテルだった。
え。こんなところに泊まったのかと唖然としていると
他にもここの前も通ったなあとか
何が美味しかったとか教えてくれた。
「ん?なんやのその顔?」
『・・・なにが?』
「元気ないっちゅーか、辛気臭いっちゅーか・・・
双葉らしくないなあって」
『・・・さっきまで、コタツにみかんではしゃいでたくせに
メルボルンの話されてもなあって』
寿三郎は大きなくりっとした目を開いてきょとん、としている。
そりゃいきなり拗ねられても困るよね、というか
私だって自分のことがわけわかんない。
「いきなりの嫌味やんけ」
『違う。嫌味じゃない。
・・・なんか、今、目の前にいる寿三郎が
寿三郎じゃないみたいだなって』
テニスで活躍している彼は
きっと今みかんを食べているような
おっとりとした、柔らかい雰囲気なんてなくて
全然知らない姿をしているのだろう。
忘れかけていたけれど、日本代表なのだ。
日本全国から選び抜かれて
しかも周りが3年生ばかりの中唯一1年生で
日本を背負う、期待の存在。
『目の前にいるのに、遠くにいるみたい・・・』
ぼそっと呟くと、寿三郎は何言うてるん、と笑う。
「双葉といる俺も、テニスしてる俺も何一つ変わらんやんけ。
それに、双葉こそたまに
遠くにいるみたいに思える時あるんやけど」
『え?私が?』
「どんどん可愛く、綺麗になってきんさって
話しやすい友達やったのに
最近は魅力的な女性って感じでドキドキしやる。
・・・せやから、お互い様やね」
そんなことを言われたら意識してしまって
徐々に顔が熱を帯びてきた。
普段の寿三郎と、テニスをしている寿三郎だけじゃなくて
もうひとつ、魅力的な男性としての寿三郎の顔は
今初めて、知ることになったのだった。
(なあ、今度試合見らんせーね。
テニスしよる俺を知らんなら、見に来ればええやんけ)
(そ、そうなんだけど・・・)
(なんで嫌そうなんよ)
(見に行くのが嫌なわけではなくて・・・
なんというか、その、意識しそうで嫌というか)
(ええやんけ。意識しんせーね。
誰もおらん家にふたりきりってシチュエーションにすら
意識せぇへんのやから
どないしよかって思うてたとこでっせ)
(えっ、今ふたりきり?お家の人いないの・・・?)
(せやね。ふたりきり。って、あらら固まってもーた)