あなたがいないとダメなのです
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”やっぱり凜がおらんとアカンわぁ“
そう言ったあなたは、頭の後ろで手を組んで
私の大好きな笑顔を見せてくれた。
その言葉に、どれだけ私が舞い上がっていたか
知らないでしょう?
鈍感すぎる脳天気な幼馴染は
そうやっていつも私を振り回す。
本人には、全く自覚がないのだけれども。
『寿三郎!寝癖ついてる。
またギリギリまで寝てたんでしょ?』
「えっ!どこ?」
『ほら、しゃがんで。
あ、また昨日夜ドライヤーしなかったな』
「なんでバレるん?エスパー?」
『髪のごわつきでわかるよ、もう』
朝食に行こうとしていた寿三郎を見て
ぎょっとした。
頭のあちこちには寝癖がついたままで
シャツは半分出て
大きな欠伸をしながら歩いていた。
越知さんがいないということは
きっと散歩か朝練でおいて行かれたのだろう。
越知さんがいるときは
案外ちゃんとしているのだけれど
一人のときはズボラさが垣間見える。
私の手が届くように腰を低くする寿三郎は
素直に髪を触らせてくれて
気持ちが良いのか目を細めている。
『よし。髪は大丈夫。ほら、シャツも入れて。
欠伸もしながら歩かない』
「欠伸はしゃあないやんけ。生理現象でっせ」
『手で口元隠すくらいしなさい』
「オカンかいな」
『誰がオカンだ』
ビシッと脇腹にツッコむと
楽しそうにケラケラと笑う。
あぁ、もう、なんでこんなにも
笑顔が輝いて見えるのだろうか。
なんちゃらフィルターが掛かってるのかな。
「ちゃい☆朝から夫婦漫才?自分らホンマに仲ええなあ」
『あ、種ヶ島さん。おはようございます』
「おはようございます〜。
夫婦っちゅーよりオカンなんですよお」
種ヶ島さんの仲ええなあの発言はまんざらでもない。
むしろ嬉しい。
そのまま話しながら三人でレストランに入ると
種ヶ島さんはそれじゃ、と言って去って行った。
あの人は感が鋭いから
きっと私の気持ちをわかっていて
退散してくれたんだろうなあ。
どこに座ろうかと
寿三郎の背中に触れようとしたその時
彼はトレーを持った越知さんを見つけて
月光さん!と叫んで走って行ってしまった。
私の手は空を切って
手の中から、大切なものがするりと
消えてしまったかのような感覚に陥る。
あーぁ。せっかく今日は寿三郎と一緒に
朝ご飯が食べられると思ったのに。
ガヤガヤと楽しげな喧騒の中
ポツンと、一人ぼっちになってしまって
ふいに悲しくなる。
寿三郎のばーか。
心で悪態をついていたら
ぐいっと、腕を引っ張られた。
「何してるん?はよ来んせーね」
『え?私も良いの?』
「当たり前やんけ。一緒に食べんのん?」
『食べる…』
さっきまで”月光さん“しか見てなかったくせに。
そのまま寿三郎に手を引かれて一緒に朝食を選ぶ。
好きなものばかりを手に取る彼に
ちゃんと栄養バランスを考えるように伝えて
彼のトレーにヨーグルトを乗せた。
するとお返しと言わんばかりに
もうちょっと食べろと
ソーセージを勝手に追加された。
朝はあんまり食べられないって言ってるのに。
『越知さん聞いてください。
寿三郎ってば好きなものばっかり取るんですよ』
静かに食事をする越知さんには申し訳ないけど
今後のためにも告げ口してやった。
寿三郎は、言うなやと言わんばかりの
視線を向けてくるが知らんぷり。
「凜だって、もうちょい食べんせーね。
ちゃーんと食べんと倒れてまうで」
『食べてますー。このくらいで丁度良いの』
「少なっ。ホンマ昔から少食なんやから。
もうちょい肉付けな」
『セクハラ』
「月光さん!聞きました!?ひどないです!?」
心配してくれることはわかってはいるけれど
今更しおらしく、可愛らしくなんてできなくて
ついつい悪態をついてしまう。
「毛利、無理強いは良くない。
山科が自己管理しているなら問題はないだろう。
…お前達は、本当に仲が良いな」
越知さんが珍しく小さく笑った(かのように見えた)から
私と寿三郎は二人で顔を見合わせて
まあ、幼馴染なんでと答えたのだった。
朝食を終えたら練習が始まり
私はマネージャーとしての仕事に取り掛かった。
初夏の兆しを感じる今日は
昨日と比べて気温と湿度が高い。
今日は少し塩分を多めにドリンクを作ったほうが良さそうだ。
今となっては板に付いたマネージャー業も
もとを辿れば寿三郎のために始めたものだった。
まだ大阪に彼がいた時
四天宝寺のテニス部に入部した彼に
マネージャーとして入部してほしいと頼まれたのだ。
家が隣で、学校も部活も一緒で
いつでも一緒にいたあの日々は、本当に楽しかった。
それなのに、寿三郎は立海に転校してしまった。
寂しくてたまらなかったけど
マネージャーを続けていれば
寿三郎との繋がりも感じられる。
そんな不純な動機で今日まで勤しみ
まさかのこの合宿で再会した。
泣きたくなるほど、嬉しかった。
『ふぅ。あと予備に一個作っておこうかな』
汗を拭い、青空を見上げる。
久しぶりに再会したかと思えば
私がいたはずの寿三郎の隣には越知さんがいるし
合宿が終わればまた会えなくなる。
それでも、寿三郎の近くにいられることは
私にとって、かけがえのないものだ。
例え私のことをただの幼馴染としか
見てもらえていなくとも。
「何ボーっとしてるんけ」
空を見ていた私の視界に寿三郎が現れた。
正確には、背の高いの寿三郎が
私の顔を覗き込んでいる状態。
『…ちょっと考え事』
「ふーん」
『どうしたの?』
距離が近くてビックリした。
寿三郎は私との距離がバグっているのか
たまに驚くほど距離が近い時がある。
これ他の女の子にしてないかな、とたまに不安になる。
「これ渡そと思って」
『スポドリ…?』
「休んでへんやろ?」
そのままよく冷えたスポドリを私のオデコに
ポン、と乗せた。
ヒンヤリしていて気持ちがいい。
『ありがと…』
「意地っ張りで強がりで
素直じゃない幼馴染持つと大変やね」
『マイペースでゆるい幼馴染持つのも大変よ』
「ちょうどええやんけ。持ちつ持たれつ、みたいな関係で」
『…いつも一緒にいてくれないくせに』
言ってからしまった、と思った。
口にするつもりはなかったのに
こんなこと言ったら寿三郎を困らせるし
私が、私だけが寂しかったとバレてしまう。
再会したときも何気ない顔を取り繕っていたのに。
「なんや、凜も寂しかったんやね」
『え?』
「大阪おるときはいつも傍に凜がおったのに
転校してからは物足りひんくて。
久しぶりに会えたと思ったら反応薄いし
俺だけが喜んでるみたいやなーって思うてたから」
『…寂しかった。
会えないし、久しぶりに会えたと思ったら
寿三郎には寿三郎の居場所が出来てたから』
「俺の居場所には凜もおらんとアカン。
再会したときも言うたやんけ。
凜がおらんとアカンって」
優しい声色と、優しい言葉が
すぅっと、身体に響き渡る。
泣きそうになるのを堪えて下を向いていたら
寿三郎は何も言わずに何度も、私の頭を撫でてくれた。
『私も、寿三郎がいないとダメみたい』
「今頃気づいたんけ?」
おどけているけど、彼の耳は少しだけ赤く染まっていて
幼馴染という関係が
少し、前に進んだような気がしたのだった。
(それにしても、マネージャー続けてくれてたんは意外やったわ)
(え?なんで?)
(四天宝寺のとき、無理やり誘った感じやったしな)
(そりゃ最初は嫌だったけど…でもテニス好きになったし
それに寿三郎にも会えたから続けてよかった)
(お、おん…せやね)
(そう言えば、ずっと言えなかったんだけど
背も伸びて、男らしくなったよね。格好良い)
(の、伸び盛りやねぇ)
(テニスに対しても真摯に向き合って
今のプレーすごく好きよ)
(ちょっ!ストップ!なんやの!?むっちゃ褒めるやんけ!)
(これからは素直になろうかと思いまして)
(根に持っとる!?心臓持たんからやめんせーね!)
そう言ったあなたは、頭の後ろで手を組んで
私の大好きな笑顔を見せてくれた。
その言葉に、どれだけ私が舞い上がっていたか
知らないでしょう?
鈍感すぎる脳天気な幼馴染は
そうやっていつも私を振り回す。
本人には、全く自覚がないのだけれども。
『寿三郎!寝癖ついてる。
またギリギリまで寝てたんでしょ?』
「えっ!どこ?」
『ほら、しゃがんで。
あ、また昨日夜ドライヤーしなかったな』
「なんでバレるん?エスパー?」
『髪のごわつきでわかるよ、もう』
朝食に行こうとしていた寿三郎を見て
ぎょっとした。
頭のあちこちには寝癖がついたままで
シャツは半分出て
大きな欠伸をしながら歩いていた。
越知さんがいないということは
きっと散歩か朝練でおいて行かれたのだろう。
越知さんがいるときは
案外ちゃんとしているのだけれど
一人のときはズボラさが垣間見える。
私の手が届くように腰を低くする寿三郎は
素直に髪を触らせてくれて
気持ちが良いのか目を細めている。
『よし。髪は大丈夫。ほら、シャツも入れて。
欠伸もしながら歩かない』
「欠伸はしゃあないやんけ。生理現象でっせ」
『手で口元隠すくらいしなさい』
「オカンかいな」
『誰がオカンだ』
ビシッと脇腹にツッコむと
楽しそうにケラケラと笑う。
あぁ、もう、なんでこんなにも
笑顔が輝いて見えるのだろうか。
なんちゃらフィルターが掛かってるのかな。
「ちゃい☆朝から夫婦漫才?自分らホンマに仲ええなあ」
『あ、種ヶ島さん。おはようございます』
「おはようございます〜。
夫婦っちゅーよりオカンなんですよお」
種ヶ島さんの仲ええなあの発言はまんざらでもない。
むしろ嬉しい。
そのまま話しながら三人でレストランに入ると
種ヶ島さんはそれじゃ、と言って去って行った。
あの人は感が鋭いから
きっと私の気持ちをわかっていて
退散してくれたんだろうなあ。
どこに座ろうかと
寿三郎の背中に触れようとしたその時
彼はトレーを持った越知さんを見つけて
月光さん!と叫んで走って行ってしまった。
私の手は空を切って
手の中から、大切なものがするりと
消えてしまったかのような感覚に陥る。
あーぁ。せっかく今日は寿三郎と一緒に
朝ご飯が食べられると思ったのに。
ガヤガヤと楽しげな喧騒の中
ポツンと、一人ぼっちになってしまって
ふいに悲しくなる。
寿三郎のばーか。
心で悪態をついていたら
ぐいっと、腕を引っ張られた。
「何してるん?はよ来んせーね」
『え?私も良いの?』
「当たり前やんけ。一緒に食べんのん?」
『食べる…』
さっきまで”月光さん“しか見てなかったくせに。
そのまま寿三郎に手を引かれて一緒に朝食を選ぶ。
好きなものばかりを手に取る彼に
ちゃんと栄養バランスを考えるように伝えて
彼のトレーにヨーグルトを乗せた。
するとお返しと言わんばかりに
もうちょっと食べろと
ソーセージを勝手に追加された。
朝はあんまり食べられないって言ってるのに。
『越知さん聞いてください。
寿三郎ってば好きなものばっかり取るんですよ』
静かに食事をする越知さんには申し訳ないけど
今後のためにも告げ口してやった。
寿三郎は、言うなやと言わんばかりの
視線を向けてくるが知らんぷり。
「凜だって、もうちょい食べんせーね。
ちゃーんと食べんと倒れてまうで」
『食べてますー。このくらいで丁度良いの』
「少なっ。ホンマ昔から少食なんやから。
もうちょい肉付けな」
『セクハラ』
「月光さん!聞きました!?ひどないです!?」
心配してくれることはわかってはいるけれど
今更しおらしく、可愛らしくなんてできなくて
ついつい悪態をついてしまう。
「毛利、無理強いは良くない。
山科が自己管理しているなら問題はないだろう。
…お前達は、本当に仲が良いな」
越知さんが珍しく小さく笑った(かのように見えた)から
私と寿三郎は二人で顔を見合わせて
まあ、幼馴染なんでと答えたのだった。
朝食を終えたら練習が始まり
私はマネージャーとしての仕事に取り掛かった。
初夏の兆しを感じる今日は
昨日と比べて気温と湿度が高い。
今日は少し塩分を多めにドリンクを作ったほうが良さそうだ。
今となっては板に付いたマネージャー業も
もとを辿れば寿三郎のために始めたものだった。
まだ大阪に彼がいた時
四天宝寺のテニス部に入部した彼に
マネージャーとして入部してほしいと頼まれたのだ。
家が隣で、学校も部活も一緒で
いつでも一緒にいたあの日々は、本当に楽しかった。
それなのに、寿三郎は立海に転校してしまった。
寂しくてたまらなかったけど
マネージャーを続けていれば
寿三郎との繋がりも感じられる。
そんな不純な動機で今日まで勤しみ
まさかのこの合宿で再会した。
泣きたくなるほど、嬉しかった。
『ふぅ。あと予備に一個作っておこうかな』
汗を拭い、青空を見上げる。
久しぶりに再会したかと思えば
私がいたはずの寿三郎の隣には越知さんがいるし
合宿が終わればまた会えなくなる。
それでも、寿三郎の近くにいられることは
私にとって、かけがえのないものだ。
例え私のことをただの幼馴染としか
見てもらえていなくとも。
「何ボーっとしてるんけ」
空を見ていた私の視界に寿三郎が現れた。
正確には、背の高いの寿三郎が
私の顔を覗き込んでいる状態。
『…ちょっと考え事』
「ふーん」
『どうしたの?』
距離が近くてビックリした。
寿三郎は私との距離がバグっているのか
たまに驚くほど距離が近い時がある。
これ他の女の子にしてないかな、とたまに不安になる。
「これ渡そと思って」
『スポドリ…?』
「休んでへんやろ?」
そのままよく冷えたスポドリを私のオデコに
ポン、と乗せた。
ヒンヤリしていて気持ちがいい。
『ありがと…』
「意地っ張りで強がりで
素直じゃない幼馴染持つと大変やね」
『マイペースでゆるい幼馴染持つのも大変よ』
「ちょうどええやんけ。持ちつ持たれつ、みたいな関係で」
『…いつも一緒にいてくれないくせに』
言ってからしまった、と思った。
口にするつもりはなかったのに
こんなこと言ったら寿三郎を困らせるし
私が、私だけが寂しかったとバレてしまう。
再会したときも何気ない顔を取り繕っていたのに。
「なんや、凜も寂しかったんやね」
『え?』
「大阪おるときはいつも傍に凜がおったのに
転校してからは物足りひんくて。
久しぶりに会えたと思ったら反応薄いし
俺だけが喜んでるみたいやなーって思うてたから」
『…寂しかった。
会えないし、久しぶりに会えたと思ったら
寿三郎には寿三郎の居場所が出来てたから』
「俺の居場所には凜もおらんとアカン。
再会したときも言うたやんけ。
凜がおらんとアカンって」
優しい声色と、優しい言葉が
すぅっと、身体に響き渡る。
泣きそうになるのを堪えて下を向いていたら
寿三郎は何も言わずに何度も、私の頭を撫でてくれた。
『私も、寿三郎がいないとダメみたい』
「今頃気づいたんけ?」
おどけているけど、彼の耳は少しだけ赤く染まっていて
幼馴染という関係が
少し、前に進んだような気がしたのだった。
(それにしても、マネージャー続けてくれてたんは意外やったわ)
(え?なんで?)
(四天宝寺のとき、無理やり誘った感じやったしな)
(そりゃ最初は嫌だったけど…でもテニス好きになったし
それに寿三郎にも会えたから続けてよかった)
(お、おん…せやね)
(そう言えば、ずっと言えなかったんだけど
背も伸びて、男らしくなったよね。格好良い)
(の、伸び盛りやねぇ)
(テニスに対しても真摯に向き合って
今のプレーすごく好きよ)
(ちょっ!ストップ!なんやの!?むっちゃ褒めるやんけ!)
(これからは素直になろうかと思いまして)
(根に持っとる!?心臓持たんからやめんせーね!)