風花
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『すごい!積もってる!』
カーテンを開けると一面真っ白。白銀の世界。
一週間前から天気予報を見て、そわそわしていたのだけど
まさかこんなに見事に積もってくれるなんて。
私は雪の降らない地域出身なので
密かに雪に憧れていて
一度で良いから雪遊びをしたかった。
この雪ならコートは使えないから
きっと自主練になるだろう。
選手の皆が練習できないのは忍びないけど
はやる気持ちを抑えて、自分の部屋から飛び出した。
『わあ……』
合宿所は山だからこれまでも寒くはあったけど
昨日までの寒さより格段に寒い。
吸い込む空気までも凍っているかのように冷たくて
身体が寒さに馴れていないせいか
吸い込んだ冷気にぶるりと身震いをした。
さく、さく、と耳障りの良い音を噛み締めながら
まだ誰も歩いていない道を歩く。
誰もいない雪景色は
張り詰めているようで、どこか優しく神秘的。
この景色を独り占めできるなんて
ひどく贅沢に思えてきた。
「あれ?雪菜さん?」
振り向くと、寒そうに身を縮めた寿三郎がいた。
『おはよう!』
「何してますのん?散歩でっか?」
『雪遊びしようと思って!』
私の返事が予想外だったのか
寿三郎は一瞬驚いた顔をしていたけど
すぐに笑顔になって
俺も一緒してもええですか?と大きな身体を弾ませた。
「うわ、こっちむっちゃ積もっとるやん!」
『すごい!寿三郎、雪だるま作ろう!』
「えぇですね!」
芝生のある場所へと移動した私達は
小さな雪玉を作ってコロコロと転がしていく。
芝生のおかげで泥が混ざることなく
するすると、綺麗な丸ができあがり
私の作った顔と、寿三郎の作った胴体を重ねた。
「顔はどうしやります?」
『普通に作っても面白くないから…
あ、そうだ!お頭の顔作ろうよ!』
「うわ、むっちゃオモロイけど怒られへんかいな」
ヒゲはどうするだの、目つきを怖くしようだの
ふたりで試行錯誤するのが楽しい。
『よし!できた!』
完成したお頭雪だるまを見たら
案外似ていてふたりで笑う。
一人で雪遊びしようと思っていたけど
寿三郎がいてくれてよかった。
お頭雪だるまの写真を撮る寿三郎を見ていたら
穏やかで、あったかい気持ちになれるから
一緒に笑ってくれる人がいるっていいなあって思う。
「にしても雪遊びしよかやなんて、意外でしたわ」
『私の地元って暖かいから、雪降らないんだよね。
修学旅行もスキーじゃなかったし…
だから一度で良いから雪遊びしてみたかったの』
「ほなら、初雪遊びなんですの?」
『そうだよ』
「そうなんや…」
寿三郎はそれきり黙ってしまったけど
なにか変なことでも言っただろうか。
『あ、わかった。今子供っぽいって思ったでしょ?』
「へ?」
『だから黙ったんでしょー』
「ちゃいますって。
……嬉しいなあて、思ったんです」
嬉しいってなにがだろう、と思っていたら
ふいにきゅっと、手を握られた。
氷のように冷たくなってしまった手が
寿三郎の手に包まれてなんだかほっとした。
「雪菜さんが初めてしはることに
俺も一緒にできて、嬉しいんです。
なんか、特別感あるっちゅーか…」
特別感、という言葉にドキッとする。
さっきまで無邪気にはしゃいでいた寿三郎は
少し照れているような顔をしているし
手は握られているし、なんだこの状況。
『じゅ、寿三郎…手、離して?ちょっと恥ずかしいよ』
「アカンです。こないに冷たくなってしもて。
しもやけなってまうよ?
温めたりますから大人しくしんせーね」
にぎにぎと両手を揉まれ
はぁーっと、寿三郎の吐息をかけられる。
白い息越しに見える彼の顔は
穏やかで、優しくて、キラキラして見えた。
すると突然、後ろからブワッと強い風が吹いて
寿三郎があっ、と声を上げる。
振り返って見ると、風によって雪が巻き上げられて
花びらが舞うように輝いて見えた。
『すごい…綺麗…』
「こんなん初めて見ましたわ…ホンマにむっちゃ綺麗」
初めて、と聞いて嬉しくなる。
あぁ、寿三郎もさっきこんな気持ちだったのかな。
隣に立つ彼に少しだけ寄り添うと
同じように身体を預けてくれて
私達はそのまましばらく雪を眺めていた。
(雪菜さん、さっきの現象
なんて言うか知ってはります?)
(ううん。あれって名前があるの?)
(大曲さんが前に言うてたんやけど
”風花“って言うんやって)
(綺麗な名前ね!にしても、三津谷くんならわかるけど
大曲が知ってるのは意外だね)
(意外で悪かったし。群馬じゃよく見られるんだよ)
((うわっ!))
(お二人さん、オモロイもん作っとったなあ!
最高やでアレ☆)
(お頭に滅ぼされてねぇといいけどよ)
(やばい!滅ぼさないで!)
(え、これ、雪だるまやなくて
俺ら滅ぼされるんとちゃいまっか…?)
カーテンを開けると一面真っ白。白銀の世界。
一週間前から天気予報を見て、そわそわしていたのだけど
まさかこんなに見事に積もってくれるなんて。
私は雪の降らない地域出身なので
密かに雪に憧れていて
一度で良いから雪遊びをしたかった。
この雪ならコートは使えないから
きっと自主練になるだろう。
選手の皆が練習できないのは忍びないけど
はやる気持ちを抑えて、自分の部屋から飛び出した。
『わあ……』
合宿所は山だからこれまでも寒くはあったけど
昨日までの寒さより格段に寒い。
吸い込む空気までも凍っているかのように冷たくて
身体が寒さに馴れていないせいか
吸い込んだ冷気にぶるりと身震いをした。
さく、さく、と耳障りの良い音を噛み締めながら
まだ誰も歩いていない道を歩く。
誰もいない雪景色は
張り詰めているようで、どこか優しく神秘的。
この景色を独り占めできるなんて
ひどく贅沢に思えてきた。
「あれ?雪菜さん?」
振り向くと、寒そうに身を縮めた寿三郎がいた。
『おはよう!』
「何してますのん?散歩でっか?」
『雪遊びしようと思って!』
私の返事が予想外だったのか
寿三郎は一瞬驚いた顔をしていたけど
すぐに笑顔になって
俺も一緒してもええですか?と大きな身体を弾ませた。
「うわ、こっちむっちゃ積もっとるやん!」
『すごい!寿三郎、雪だるま作ろう!』
「えぇですね!」
芝生のある場所へと移動した私達は
小さな雪玉を作ってコロコロと転がしていく。
芝生のおかげで泥が混ざることなく
するすると、綺麗な丸ができあがり
私の作った顔と、寿三郎の作った胴体を重ねた。
「顔はどうしやります?」
『普通に作っても面白くないから…
あ、そうだ!お頭の顔作ろうよ!』
「うわ、むっちゃオモロイけど怒られへんかいな」
ヒゲはどうするだの、目つきを怖くしようだの
ふたりで試行錯誤するのが楽しい。
『よし!できた!』
完成したお頭雪だるまを見たら
案外似ていてふたりで笑う。
一人で雪遊びしようと思っていたけど
寿三郎がいてくれてよかった。
お頭雪だるまの写真を撮る寿三郎を見ていたら
穏やかで、あったかい気持ちになれるから
一緒に笑ってくれる人がいるっていいなあって思う。
「にしても雪遊びしよかやなんて、意外でしたわ」
『私の地元って暖かいから、雪降らないんだよね。
修学旅行もスキーじゃなかったし…
だから一度で良いから雪遊びしてみたかったの』
「ほなら、初雪遊びなんですの?」
『そうだよ』
「そうなんや…」
寿三郎はそれきり黙ってしまったけど
なにか変なことでも言っただろうか。
『あ、わかった。今子供っぽいって思ったでしょ?』
「へ?」
『だから黙ったんでしょー』
「ちゃいますって。
……嬉しいなあて、思ったんです」
嬉しいってなにがだろう、と思っていたら
ふいにきゅっと、手を握られた。
氷のように冷たくなってしまった手が
寿三郎の手に包まれてなんだかほっとした。
「雪菜さんが初めてしはることに
俺も一緒にできて、嬉しいんです。
なんか、特別感あるっちゅーか…」
特別感、という言葉にドキッとする。
さっきまで無邪気にはしゃいでいた寿三郎は
少し照れているような顔をしているし
手は握られているし、なんだこの状況。
『じゅ、寿三郎…手、離して?ちょっと恥ずかしいよ』
「アカンです。こないに冷たくなってしもて。
しもやけなってまうよ?
温めたりますから大人しくしんせーね」
にぎにぎと両手を揉まれ
はぁーっと、寿三郎の吐息をかけられる。
白い息越しに見える彼の顔は
穏やかで、優しくて、キラキラして見えた。
すると突然、後ろからブワッと強い風が吹いて
寿三郎があっ、と声を上げる。
振り返って見ると、風によって雪が巻き上げられて
花びらが舞うように輝いて見えた。
『すごい…綺麗…』
「こんなん初めて見ましたわ…ホンマにむっちゃ綺麗」
初めて、と聞いて嬉しくなる。
あぁ、寿三郎もさっきこんな気持ちだったのかな。
隣に立つ彼に少しだけ寄り添うと
同じように身体を預けてくれて
私達はそのまましばらく雪を眺めていた。
(雪菜さん、さっきの現象
なんて言うか知ってはります?)
(ううん。あれって名前があるの?)
(大曲さんが前に言うてたんやけど
”風花“って言うんやって)
(綺麗な名前ね!にしても、三津谷くんならわかるけど
大曲が知ってるのは意外だね)
(意外で悪かったし。群馬じゃよく見られるんだよ)
((うわっ!))
(お二人さん、オモロイもん作っとったなあ!
最高やでアレ☆)
(お頭に滅ぼされてねぇといいけどよ)
(やばい!滅ぼさないで!)
(え、これ、雪だるまやなくて
俺ら滅ぼされるんとちゃいまっか…?)