あの子の素顔
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分厚い眼鏡に、長めの前髪。
せっかく背が高くて、スラリとしてはるのに
なんかアンバランスやなー、っていうのが第一印象。
オシャレとかようわからへんのやけど
俺でも、野暮ったいなあって感じてるから
ファッションにこだわりのある君さんとか
遠野さんはいつも声掛けてはる。
それでも我らがマネージャーの菜津さんは
『興味がないから』
の一言。
仕事はできる人やから
皆からの信頼は厚くて
別に見た目なんて、そこまで気にならへんかったんやけど
ある出来事で
俺は彼女の素顔に釘付けになってしもうた。
「今日の練習はバッチリやったなぁ~」
一人で風呂に向かいながら、盛大な独り言を呟く。
ホンマは風呂に入りながら月光さんと
今日の練習の話でもしよって思うてたら
柳と碁を打つ言うてフラれてしもた。
せやけど、自分の尊敬する先輩と
可愛い後輩が仲良くしてるんは
俺としては嬉しいところ。
ふんふんと、鼻歌交じりで曲がり角を歩いてたら
出会い頭に誰かと思い切りぶつかった。
「おわっ!」
『わっ!』
俺の胸元っちゅーか腹に顔をぶつけた小柄な人は
反動で倒れそうになってはったから
なんとか肩を抱き止める。
同時にどこかでカシャン、と乾いた音が聞こえた。
『毛利くん…!ご、ごめん! 』
「菜津さん!」
随分肩が細っこいなあ、なんて思うてたら
ぶつかったのは菜津さん。
この人、思い切り顔ぶつけてはったけど大丈夫かいな。
「菜津さん、顔大丈夫でっか?
思い切りぶつかりましたけど…」
『う、うん、だいじょ…痛っ…』
「え!?どっか怪我しはったん!?顔!?
ちょっと、こっち見らんせーね!」
彼女の小さく痛い、という呟きにハッとする。
もしかしたら、ジャージのチャックの部分で
顔を傷つけたのかもしれない。
目とかに入ったりしたのであれば一大事だ。
俯いて目元を抑える菜津さんの
小さな顔に手を当てて上を向かせる。
傷を確認しようと思うてたのに
初めて彼女の瞳と目が合うと
ピタリ、と俺は動けなくなってしもた。
『どうしたの?』
長い前髪から覗く素顔は
驚くほど整った顔立ちをしていて
目ぇが外らされへんくらいに澄んだ、綺麗な瞳。
いや、こんなんズルない?
こないな顔してはるなんて、知らんかった。
『あ、あの…けっこう恥ずかしいんだけど…』
指摘されて自分がどれだけ恥ずかしいことしてるか
やっと気づいた。
これ、前に学校で女子が言うてた
”あごクイ“状態やんけ。
「す、すんませんっ!!
セクハラみたいなことしてしもた!!」
『あはは、大丈夫だよ』
「怪我、見ようかと思うてたんやけど…」
『ここが痛いんだけど、どうなってる?』
うわ、肌きめ細かくて綺麗やな…
ちゃう。ちゃんと見らな。
菜津さんの顔をもう一度覗くと
左の涙袋の下らへんに引掻き傷ができてはった。
チャックでこないな傷になるやろかと
そこまで見やっていつも顔を隠していた
眼鏡の存在を思い出す。
「もしかして眼鏡のせいやろか?
さっきの衝撃でどこかに……あ』
そういえば、カシャンと聞こえたあの音は
眼鏡が落ちた音かと合点がいく。
足元を見渡すと
ちょうど菜津さんの後足のところに
柄の折れた眼鏡が落ちていた。
「あらら、壊れてもうてる…」
『本当だ。これ、もう古かったからね』
「ぶっかって、怪我させて、眼鏡も壊してしもて…
俺最低ですやん…」
『ぶつかったのはお互い様。怪我は不可抗力。
眼鏡は古かった。
毛利くんは何一つ悪くないよ』
項垂れる俺の頭をよしよしよと撫でて
笑いかけてくれはる菜津さんを見てたら
心臓がグッと掴まれるような感じがした。
「せやけど顔に傷残ってしもたら…
それに眼鏡もないと、困るんとちゃいまっか?」
『こんなの傷なんて残らないよ。
眼鏡はそうねえ……。なんとかテープで補修して
しばらく使おうかな』
俺を励ますように話してくれてはるのに
どんどん申し訳なさが募ってくる。
そんな俺の様子を見て
菜津さんはよし、と手を叩いた。
『なら、今度の毛利くんのお休み、私にくれない?
新しい眼鏡を買いに行くのに付き合ってほしい』
「俺でええんです?」
『毛利くんがいいの。毛利くんに選んでほしいな』
“毛利くんがいいの”の一言がむっちゃ嬉しい。
しかも眼鏡選びに行くって
二人で出掛けるってことやんけ。
「それ、償いになりまっか?」
『なるよー!だって見えない私の手を引いて
連れて行くって重労働よ?
ある意味介護みたいなものよ?
償いにちょうど良いでしょ?』
「手ぇ繋いで出掛けるて
俺にとってはご褒美でっせ…」
『え?いまなんて…』
「あー!いや、なんもちゃいます!
ちゃんと眼鏡屋さん案内しやります!」
『うん、お願いね』
もとからええ人やなって思うてたんやけど
ここまで話したんは初めてで
こないに明るくて
楽しい人やなんて思うてへんかった。
見た目だけじゃない、隠された素顔に
一気に虜にさせられてしもうた俺は
次の休みが来るのが待ち遠しくてたまらなかった。
(なんで顔隠してはったんです?)
(眼鏡かけると
目がちっちゃくなって不格好なのよね。
それが嫌で前髪で隠してたの)
(コンタクトにはしやらんの?)
(なんか怖くって。
でもコンタクトのほうが便利よね。
コンタクトにしようかな…)
(え!?いや、すすめたわけとちゃいます!)
(ん?毛利くんは眼鏡が好きなの?)
(え、いや……)
(そっか、眼鏡フェチってやつね。
ならこのまま眼鏡でいようかな)
(フェチやないんやけど……
素顔バレたらライバル増えてまうやろうし
菜津さんの素顔知ってるの
俺だけやったらええなって…って
そないなこと言えへんやんけ)
(……どうしよう、全部聞こえてるわ)
せっかく背が高くて、スラリとしてはるのに
なんかアンバランスやなー、っていうのが第一印象。
オシャレとかようわからへんのやけど
俺でも、野暮ったいなあって感じてるから
ファッションにこだわりのある君さんとか
遠野さんはいつも声掛けてはる。
それでも我らがマネージャーの菜津さんは
『興味がないから』
の一言。
仕事はできる人やから
皆からの信頼は厚くて
別に見た目なんて、そこまで気にならへんかったんやけど
ある出来事で
俺は彼女の素顔に釘付けになってしもうた。
「今日の練習はバッチリやったなぁ~」
一人で風呂に向かいながら、盛大な独り言を呟く。
ホンマは風呂に入りながら月光さんと
今日の練習の話でもしよって思うてたら
柳と碁を打つ言うてフラれてしもた。
せやけど、自分の尊敬する先輩と
可愛い後輩が仲良くしてるんは
俺としては嬉しいところ。
ふんふんと、鼻歌交じりで曲がり角を歩いてたら
出会い頭に誰かと思い切りぶつかった。
「おわっ!」
『わっ!』
俺の胸元っちゅーか腹に顔をぶつけた小柄な人は
反動で倒れそうになってはったから
なんとか肩を抱き止める。
同時にどこかでカシャン、と乾いた音が聞こえた。
『毛利くん…!ご、ごめん! 』
「菜津さん!」
随分肩が細っこいなあ、なんて思うてたら
ぶつかったのは菜津さん。
この人、思い切り顔ぶつけてはったけど大丈夫かいな。
「菜津さん、顔大丈夫でっか?
思い切りぶつかりましたけど…」
『う、うん、だいじょ…痛っ…』
「え!?どっか怪我しはったん!?顔!?
ちょっと、こっち見らんせーね!」
彼女の小さく痛い、という呟きにハッとする。
もしかしたら、ジャージのチャックの部分で
顔を傷つけたのかもしれない。
目とかに入ったりしたのであれば一大事だ。
俯いて目元を抑える菜津さんの
小さな顔に手を当てて上を向かせる。
傷を確認しようと思うてたのに
初めて彼女の瞳と目が合うと
ピタリ、と俺は動けなくなってしもた。
『どうしたの?』
長い前髪から覗く素顔は
驚くほど整った顔立ちをしていて
目ぇが外らされへんくらいに澄んだ、綺麗な瞳。
いや、こんなんズルない?
こないな顔してはるなんて、知らんかった。
『あ、あの…けっこう恥ずかしいんだけど…』
指摘されて自分がどれだけ恥ずかしいことしてるか
やっと気づいた。
これ、前に学校で女子が言うてた
”あごクイ“状態やんけ。
「す、すんませんっ!!
セクハラみたいなことしてしもた!!」
『あはは、大丈夫だよ』
「怪我、見ようかと思うてたんやけど…」
『ここが痛いんだけど、どうなってる?』
うわ、肌きめ細かくて綺麗やな…
ちゃう。ちゃんと見らな。
菜津さんの顔をもう一度覗くと
左の涙袋の下らへんに引掻き傷ができてはった。
チャックでこないな傷になるやろかと
そこまで見やっていつも顔を隠していた
眼鏡の存在を思い出す。
「もしかして眼鏡のせいやろか?
さっきの衝撃でどこかに……あ』
そういえば、カシャンと聞こえたあの音は
眼鏡が落ちた音かと合点がいく。
足元を見渡すと
ちょうど菜津さんの後足のところに
柄の折れた眼鏡が落ちていた。
「あらら、壊れてもうてる…」
『本当だ。これ、もう古かったからね』
「ぶっかって、怪我させて、眼鏡も壊してしもて…
俺最低ですやん…」
『ぶつかったのはお互い様。怪我は不可抗力。
眼鏡は古かった。
毛利くんは何一つ悪くないよ』
項垂れる俺の頭をよしよしよと撫でて
笑いかけてくれはる菜津さんを見てたら
心臓がグッと掴まれるような感じがした。
「せやけど顔に傷残ってしもたら…
それに眼鏡もないと、困るんとちゃいまっか?」
『こんなの傷なんて残らないよ。
眼鏡はそうねえ……。なんとかテープで補修して
しばらく使おうかな』
俺を励ますように話してくれてはるのに
どんどん申し訳なさが募ってくる。
そんな俺の様子を見て
菜津さんはよし、と手を叩いた。
『なら、今度の毛利くんのお休み、私にくれない?
新しい眼鏡を買いに行くのに付き合ってほしい』
「俺でええんです?」
『毛利くんがいいの。毛利くんに選んでほしいな』
“毛利くんがいいの”の一言がむっちゃ嬉しい。
しかも眼鏡選びに行くって
二人で出掛けるってことやんけ。
「それ、償いになりまっか?」
『なるよー!だって見えない私の手を引いて
連れて行くって重労働よ?
ある意味介護みたいなものよ?
償いにちょうど良いでしょ?』
「手ぇ繋いで出掛けるて
俺にとってはご褒美でっせ…」
『え?いまなんて…』
「あー!いや、なんもちゃいます!
ちゃんと眼鏡屋さん案内しやります!」
『うん、お願いね』
もとからええ人やなって思うてたんやけど
ここまで話したんは初めてで
こないに明るくて
楽しい人やなんて思うてへんかった。
見た目だけじゃない、隠された素顔に
一気に虜にさせられてしもうた俺は
次の休みが来るのが待ち遠しくてたまらなかった。
(なんで顔隠してはったんです?)
(眼鏡かけると
目がちっちゃくなって不格好なのよね。
それが嫌で前髪で隠してたの)
(コンタクトにはしやらんの?)
(なんか怖くって。
でもコンタクトのほうが便利よね。
コンタクトにしようかな…)
(え!?いや、すすめたわけとちゃいます!)
(ん?毛利くんは眼鏡が好きなの?)
(え、いや……)
(そっか、眼鏡フェチってやつね。
ならこのまま眼鏡でいようかな)
(フェチやないんやけど……
素顔バレたらライバル増えてまうやろうし
菜津さんの素顔知ってるの
俺だけやったらええなって…って
そないなこと言えへんやんけ)
(……どうしよう、全部聞こえてるわ)