紅の葉
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
皆で紅葉狩りに行こうと、言い出したのは誰やったか。
ほんで、なんで俺はついて来たんやろか。
山道を歩くメンバーを見て
どこか他人事のようにぼんやりと考える。
前を歩くのは、手塚と不二
白石と遠山
そして問題なんが、幸村、真田、柳の立海三強。
あの三人とは一緒に部活をしていた身やけど
当時はまともに練習に行ってへんかったから
正直なところ、むっちゃ気まずい。
帰りたい。
そう思った矢先、後ろからジャージの袖が
くんっと引かれた。
『毛利先輩、大丈夫ですか…?』
声を掛けてくれたのは
同じく立海生でこの合宿にマネージャーとして
参加している唯ちゃん。
俺は密かに彼女に片想いをしていて
今日も彼女に誘われたから、参加したんやった。
「大丈夫なんやけど…俺やっぱ場違いやったかなって」
『そんなことありません!
でも、気まずい思いをさせてしまってすみません。
余計な、お世話でしたかね…』
「ええんよ。もとはといえば俺が悪いんやし
色々気ぃ遣ってくれて、おおきに唯ちゃん」
しゅん、と落ち込む姿も可愛えなあと思うてたら
先頭にいた柳がちらりとこちらを一瞥した。
俺、これは余計に嫌われるんやないやろか。
俺と三強…というより
俺と柳の関係を少しでも良くしようと彼女なりに考えて
きっかけ作りの一貫で、彼女は俺を誘ってくれたのだ。
年下とのわだかまりのために、年下が気を遣ってくれて
ホンマに情けない話やんけ。
『あの、もうこの際
柳たちのはことはお気になさらず
純粋に紅葉狩り、楽しみませんか?』
「あいつらのとこ、行かんでええん?」
『はい。今日は先輩の傍にいます!』
うは、むっちゃ嬉しい。
いつもなら、柳たちの傍にいる唯ちゃんが
俺の隣にいて、一緒に色づく紅葉を見て、笑い掛けてくれる。
あんまり芸術とかはわからへんのやけど
真っ直ぐに伸びた黒髪と、白い肌
そして紅く染まる紅葉との色合いが
一枚の絵画のように思えた。
赤やオレンジに染まる落ち葉を持ってはしゃぐ姿は
いつもの練習中にはなかなか見られへん。
ええなあ、こういうん。
あとでカメラを持って来ている不二に頼んで
唯ちゃんの写真を撮ってもらおうか。
「あ!金ちゃんアカン!」
ほっこりした気分でいた矢先、唐突に白石の声が響いて
唯ちゃんの身体が、ぐらりと傾いた。
「危ないっ!」
山道の斜面に転がってしまいそうになった唯ちゃんを
なんとかギリギリのところで掴んで引き寄せる。
「わー!姉ちゃん、堪忍!!」
前を見てへんかった遠山が
思い切り唯ちゃんにぶつかってもうて
危うく彼女が怪我をするところだった。
「金ちゃん、ちゃんと周り見なアカン言うたやろ!
唯ちゃん、ホンマにごめんな」
『ううん、金ちゃんもちょっとはしゃいだだけでしょ?
そんなに怒らないで。
それに毛利先輩が助けてくれたから』
自分が怪我をしそうになったんに
真っ先に遠山の身を案じるところが優しい彼女らしい。
何度も頭を下げる白石に
ええんよ、と答えていたら
騒ぎを聞いた立海三強がやって来た。
「花村、何を騒いでいる」
「真田くん達、俺が説明するわ」
白石の説明を聞いた真田と幸村は
先輩ありがとうございます、と頭を下げてきた。
律儀にお礼を言われてくすぐったい気持ちになっていたら
二人の後ろにいた柳とバチっと目が合う。
柳は一瞬眉間に皺を寄せたかと思うと
ふいっと顔を背けて、そのまま引き返してしもた。
あそこまで露骨に避けられるとけっこうダメージくる。
唯ちゃんを助けたからといって
このわだかまりがなくなるとは思ってはいなかったけど
一生、わかりあえないんやろか。
柳の背中をただ見ていたら、俺の横を
唯ちゃんが駆けて行った。
『柳、私毛利先輩がいなかったら
きっと、あそこまで落ちていたと思うの』
「………」
『この斜面を、この高さから落ちていったら
どれだけ怪我をするか、柳ならわかるよね?』
「………」
『私が怪我をしたら、ぶつかった金ちゃんも責任を感じるし
先輩である白石くんも
一緒に紅葉狩りをしていた他の皆にも
ましてや、コーチ達にも迷惑を掛けることになる』
「………」
『……ねえ、“過去”だけじゃなくて、“今”にも目を向けてよ』
きっぱりと言い放つ唯ちゃんは凛としていて
引き込まれるような強い姿勢と瞳に
その場にいた全員が釘付けになった。
柳は、唯ちゃんに、すまない、と一言呟き
下を向いたまま俺の前へとやって来た。
「…毛利先輩
花村を助けて頂いて…ありがとうございます」
「えっ!?い、いや!ええんよ!そないに改まらんでも…」
「……ただ、俺の中ではまだあなたのことを
容認できてはいません。
それだけは、覚えておいて下さい」
柳はそれだけ言うと、またすたすたと歩いて行ってしまった。
満足げな顔をした唯ちゃんは
俺に向かってVサインしている。
彼女のおかげで
少しだけ、俺と柳の関係が前に進んだような気がする。
腹を割って話せるようになるには時間がかかるが
いつかは、一緒にテニスができるようになればええなと思う。
『毛利先輩、紅葉にも花言葉があるの知ってますか?』
帰り道、上機嫌な唯ちゃんが俺を見上げる。
「木やのに花言葉があるん?」
『そうなんです。
紅葉狩りに行く話になって調べてみたんですけど…』
そう言うと、俺の手を取って紅葉の葉を一枚渡される。
見上げる仕草と、手に触れられたことに
いちいち反応してまう。
『花言葉は《大切な思い出》と《美しい変化》だそうです。
柳が毛利先輩のことを許せないという過去も
大切な思い出に、美しく変化していくと思います。
毛利先輩なら、大丈夫です』
この子の、こういう優しさがホンマに好き。
一言一言が、何かの魔法みたいに
じんわりと身体に染み渡っていく感じがしやる。
「ほなら…今日こうやって皆で出掛けたんも…
唯ちゃんが1日俺の傍におってくれたんも
大切な思い出やね」
『はい!これからたくさん思い出作りましょうね!』
柳に、いつか俺自身を容認してもらえても
彼女に手を出そうものなら
三強全員を敵に回してしまいそうや。
それでも、いつかはあの眩しい笑顔を
独り占めしやると、彼女を見つめて微笑んだのだった。
(あ!不二と手塚!ええとこにおんさった!)
(どうしたんですか?)
(不二、この前の紅葉狩りんとき、写真撮ってたやろ?
それで、その~…)
(あぁ、もしかして花村さんの写真ですか?)
(な、なんでわかったん!?)
(あんなに見つめていたら誰だってわかりますよ)
(うっ…バレてもうてるやんけ…
ほなら、話は早いわ。
ちょっとだけ見せてもらえへん?頼んます!)
(ん?毛利先輩、なぜ花村の写真なんでしょうか?)
(えっ、いや、それはその
大きな声では言われへんというか…)
(なぜです?理由次第ですが
本人の許可なくそのようなことはできない)
(ちょっ、不二助けてくれへん?)
(フフッ…手塚を納得させられたらお見せしますよ)
ほんで、なんで俺はついて来たんやろか。
山道を歩くメンバーを見て
どこか他人事のようにぼんやりと考える。
前を歩くのは、手塚と不二
白石と遠山
そして問題なんが、幸村、真田、柳の立海三強。
あの三人とは一緒に部活をしていた身やけど
当時はまともに練習に行ってへんかったから
正直なところ、むっちゃ気まずい。
帰りたい。
そう思った矢先、後ろからジャージの袖が
くんっと引かれた。
『毛利先輩、大丈夫ですか…?』
声を掛けてくれたのは
同じく立海生でこの合宿にマネージャーとして
参加している唯ちゃん。
俺は密かに彼女に片想いをしていて
今日も彼女に誘われたから、参加したんやった。
「大丈夫なんやけど…俺やっぱ場違いやったかなって」
『そんなことありません!
でも、気まずい思いをさせてしまってすみません。
余計な、お世話でしたかね…』
「ええんよ。もとはといえば俺が悪いんやし
色々気ぃ遣ってくれて、おおきに唯ちゃん」
しゅん、と落ち込む姿も可愛えなあと思うてたら
先頭にいた柳がちらりとこちらを一瞥した。
俺、これは余計に嫌われるんやないやろか。
俺と三強…というより
俺と柳の関係を少しでも良くしようと彼女なりに考えて
きっかけ作りの一貫で、彼女は俺を誘ってくれたのだ。
年下とのわだかまりのために、年下が気を遣ってくれて
ホンマに情けない話やんけ。
『あの、もうこの際
柳たちのはことはお気になさらず
純粋に紅葉狩り、楽しみませんか?』
「あいつらのとこ、行かんでええん?」
『はい。今日は先輩の傍にいます!』
うは、むっちゃ嬉しい。
いつもなら、柳たちの傍にいる唯ちゃんが
俺の隣にいて、一緒に色づく紅葉を見て、笑い掛けてくれる。
あんまり芸術とかはわからへんのやけど
真っ直ぐに伸びた黒髪と、白い肌
そして紅く染まる紅葉との色合いが
一枚の絵画のように思えた。
赤やオレンジに染まる落ち葉を持ってはしゃぐ姿は
いつもの練習中にはなかなか見られへん。
ええなあ、こういうん。
あとでカメラを持って来ている不二に頼んで
唯ちゃんの写真を撮ってもらおうか。
「あ!金ちゃんアカン!」
ほっこりした気分でいた矢先、唐突に白石の声が響いて
唯ちゃんの身体が、ぐらりと傾いた。
「危ないっ!」
山道の斜面に転がってしまいそうになった唯ちゃんを
なんとかギリギリのところで掴んで引き寄せる。
「わー!姉ちゃん、堪忍!!」
前を見てへんかった遠山が
思い切り唯ちゃんにぶつかってもうて
危うく彼女が怪我をするところだった。
「金ちゃん、ちゃんと周り見なアカン言うたやろ!
唯ちゃん、ホンマにごめんな」
『ううん、金ちゃんもちょっとはしゃいだだけでしょ?
そんなに怒らないで。
それに毛利先輩が助けてくれたから』
自分が怪我をしそうになったんに
真っ先に遠山の身を案じるところが優しい彼女らしい。
何度も頭を下げる白石に
ええんよ、と答えていたら
騒ぎを聞いた立海三強がやって来た。
「花村、何を騒いでいる」
「真田くん達、俺が説明するわ」
白石の説明を聞いた真田と幸村は
先輩ありがとうございます、と頭を下げてきた。
律儀にお礼を言われてくすぐったい気持ちになっていたら
二人の後ろにいた柳とバチっと目が合う。
柳は一瞬眉間に皺を寄せたかと思うと
ふいっと顔を背けて、そのまま引き返してしもた。
あそこまで露骨に避けられるとけっこうダメージくる。
唯ちゃんを助けたからといって
このわだかまりがなくなるとは思ってはいなかったけど
一生、わかりあえないんやろか。
柳の背中をただ見ていたら、俺の横を
唯ちゃんが駆けて行った。
『柳、私毛利先輩がいなかったら
きっと、あそこまで落ちていたと思うの』
「………」
『この斜面を、この高さから落ちていったら
どれだけ怪我をするか、柳ならわかるよね?』
「………」
『私が怪我をしたら、ぶつかった金ちゃんも責任を感じるし
先輩である白石くんも
一緒に紅葉狩りをしていた他の皆にも
ましてや、コーチ達にも迷惑を掛けることになる』
「………」
『……ねえ、“過去”だけじゃなくて、“今”にも目を向けてよ』
きっぱりと言い放つ唯ちゃんは凛としていて
引き込まれるような強い姿勢と瞳に
その場にいた全員が釘付けになった。
柳は、唯ちゃんに、すまない、と一言呟き
下を向いたまま俺の前へとやって来た。
「…毛利先輩
花村を助けて頂いて…ありがとうございます」
「えっ!?い、いや!ええんよ!そないに改まらんでも…」
「……ただ、俺の中ではまだあなたのことを
容認できてはいません。
それだけは、覚えておいて下さい」
柳はそれだけ言うと、またすたすたと歩いて行ってしまった。
満足げな顔をした唯ちゃんは
俺に向かってVサインしている。
彼女のおかげで
少しだけ、俺と柳の関係が前に進んだような気がする。
腹を割って話せるようになるには時間がかかるが
いつかは、一緒にテニスができるようになればええなと思う。
『毛利先輩、紅葉にも花言葉があるの知ってますか?』
帰り道、上機嫌な唯ちゃんが俺を見上げる。
「木やのに花言葉があるん?」
『そうなんです。
紅葉狩りに行く話になって調べてみたんですけど…』
そう言うと、俺の手を取って紅葉の葉を一枚渡される。
見上げる仕草と、手に触れられたことに
いちいち反応してまう。
『花言葉は《大切な思い出》と《美しい変化》だそうです。
柳が毛利先輩のことを許せないという過去も
大切な思い出に、美しく変化していくと思います。
毛利先輩なら、大丈夫です』
この子の、こういう優しさがホンマに好き。
一言一言が、何かの魔法みたいに
じんわりと身体に染み渡っていく感じがしやる。
「ほなら…今日こうやって皆で出掛けたんも…
唯ちゃんが1日俺の傍におってくれたんも
大切な思い出やね」
『はい!これからたくさん思い出作りましょうね!』
柳に、いつか俺自身を容認してもらえても
彼女に手を出そうものなら
三強全員を敵に回してしまいそうや。
それでも、いつかはあの眩しい笑顔を
独り占めしやると、彼女を見つめて微笑んだのだった。
(あ!不二と手塚!ええとこにおんさった!)
(どうしたんですか?)
(不二、この前の紅葉狩りんとき、写真撮ってたやろ?
それで、その~…)
(あぁ、もしかして花村さんの写真ですか?)
(な、なんでわかったん!?)
(あんなに見つめていたら誰だってわかりますよ)
(うっ…バレてもうてるやんけ…
ほなら、話は早いわ。
ちょっとだけ見せてもらえへん?頼んます!)
(ん?毛利先輩、なぜ花村の写真なんでしょうか?)
(えっ、いや、それはその
大きな声では言われへんというか…)
(なぜです?理由次第ですが
本人の許可なくそのようなことはできない)
(ちょっ、不二助けてくれへん?)
(フフッ…手塚を納得させられたらお見せしますよ)